21話 動物たちのこと
動物たちのこと
「わっふ!わふ!」
「ぎゃう!」
もふもふ。
もこもこ。
「んぎゅううううう・・・!か~わ~い~い~!!」
「かわええのう・・・」
「はわぁ・・・かわいい」
「cute・・・very cute!」
・・・先輩夫婦と斑鳩母娘が、何度目かもうわからない感想を言う。
先輩はもうデレデレだし、巴さんもとろけそうな顔をしている。
璃子ちゃんはとても幸せそうだ・・・斑鳩さんも思わず日本語を忘れている。
彼らの視線の先にいるのは、サクラと・・・レッサーパンダのレオンくん(恐らく)だ。
山中さんがケージから出して以降、みんなメロメロである。
2匹はオフィスの床の上で、くんずほぐれずの状態でもこもこわふわふしている。
お互いにじゃれ合って楽しそうである。
どうやら気が合ったようだ。
よかったよかった。
「かわいい・・・かわいいですね!田中野さん!!」
神崎さんも普段はあまり見せないような満面の笑みだ。
うん、かわいい・・・確かにかわいい。
かわいいサクラとかわいいレッサーパンダが組み合わさっているのだ。
もはや無敵と言ってもいいかもしれん。
かくいう俺も、先程から頬が緩みっぱなした。
「サクラちゃん・・・可愛がられているようですね、毛並みや表情でわかります」
ゆっくりと風呂に入っていただいていた山中さんが、俺の側に来て言う。
ああ、血色が良くなっているな。
少しは元気になってくれたみたいだ。
無理を言って1番風呂に入ってもらってよかった。
新たちと会う前に体調を崩されたら大変だからな。
「新が言ってくれましたよ、それ。サクラが懐いているから俺はいい人らしいです」
「あら、あの子ったら・・・」
椅子に腰かけながら、山中さんはふわりと笑った。
・・・笑うと志保ちゃんによく似ているな。
やっぱり親子なんだなあ。
「あの、レオンを連れてきた理由なんですが・・・あの子、璃子ちゃんが寝るまで待ってもらってもいいでしょうか?」
あ、やっぱりレオンくんなんだあのレッサーパンダ。
パークの大スターじゃないか。
「いつでもいいですよ?話しにくいなら、詩谷に行ってからでも・・・なんなら話さなくてもいいですけど」
「いえ・・・誰かに聞いてほしいんです、私は」
暗い表情で、ぽつりと呟く山中さん。
・・・なんとなーく俺も察しているが、あまり楽しい話にはならなさそうだ。
璃子ちゃんには聞かせられないって時点でそうなんだろうけどさ。
でも誰かに話したいと。
うん、よくわかるよその気持ち。
「そうですか、なら夜にでも」
「はい・・・」
そこでふと思い出した。
「あの、レオンくんってレッサーパンダですよね?竹取ってきましょうか?」
いつだったか見た映像で、竹の葉っぱやら本体やらをモリモリ食べていた。
幸い近くの山には竹林が確認できる。
この季節なら潤沢に手に入るだろう。
「あ、とりあえずは大丈夫です。レッサーパンダは本来肉食性の動物なので」
・・・え?
・・・そうなの?
驚愕の事実だ。
神崎さんもびっくりした顔をしている。
「てっきり草食だとばっかり・・・」
「他の動物が食べない物を食べるようにして、生存競争に生き残ったんでしょうね。パンダもそうなんですよ?」
・・・なんということだ。
パンダもそうなの?マジで?
「レッサーパンダが普段よく寝ているのは、消化を促進させるためでもあるんです。動物園でも、野菜や果物などを補助食として与えることもあります」
山中さんは、足元に置いてあった袋を持ち上げる。
俺が車から下ろすのを手伝ったやつだ。
「当面は・・・これでしのげるでしょう。ドッグフードみたいなものです、成分としては」
ほう・・・そうなのかあ。
勉強になるなあ。
今日一日で大分賢くなった気がする。
「じゃあ、ドッグフードも食べられるんですか?」
「はい、これはレッサーパンダ用のペレットですけど・・・犬用でも問題ありません」
よかった。
竹しか食わないなんて言われたら餌の確保がえらいことになるとこだった。
今は普通に生えてるからいいけど、冷蔵保存ができないからこの先詰みそうだもんな。
ドッグフードなら人間の食い物とダブらないし、大丈夫そうだ。
「きゅるる!」
何度聞いても不思議な声を上げつつ、レオンくんがとふとふ歩いてきた。
うわあ・・・歩いてるだけでかわいい。
サクラといい勝負だ。
「あらあら、遊んでもらえてよかったわね・・・それじゃあご飯にしましょうか」
「ぎゃう!」
山中さんの持つ袋を、キラキラした目で見上げるレオンくん。
ガサガサって音がしたから寄ってきたのかな。
「わふ!」
・・・お前もかサクラ。
駄目だぞそれは。
レオンくん用なんだからな。
「ほいほい・・・あ、飯の前に久しぶりに散歩行くか?」
「わう!おぉん!わうわう!!」
散歩というワードに反応してサクラが興奮する。
やめなされ俺に登るのはやめなされ・・・
「ぎゃう」
レオンくんが俺を見て一声。
「よう、レオンくん。これからよろしくな」
「きゅるぅ」
俺が差し出した手に、ぐりりと頭を押し付けてくる。
・・・思ったよりゴワゴワしとるな?
まあこれはこれで・・・
それにしても懐っこいなあ。
かわいい。
「もがふ!」
・・・何故俺の手首を食べるのだサクラよ。
焼餅かな?
かわいい奴よ・・・
「あ、おじさんお散歩行くの?私も行っていーい?」
璃子ちゃんが聞いてきた。
ここらにはゾンビもいないしいいだろう。
「ああ、いいよ。いいよな、サクラ」
「ひゃん!きゃん!」
サクラからもOKが出た。
璃子ちゃんが行くなら、俺もしっかり武器を用意しとこう。
兜割と・・・拳銃でいいな。
ちなみに、ヤクザから回収した拳銃は詩谷に行くときに一緒に持っていくことにした。
自衛隊に渡して廃棄してもらうためだ。
点検した神崎さん曰く、
「正規の拳銃ではなく、密造されたものですね・・・驚くほど造りが雑なので、射撃するだけで暴発の危険性があります」
とのことである。
撃たなくてよかった・・・コワイ。
万が一にも発射できないように、神崎さんが分解して銃弾とは別に保管してある。
さて、準備して出発しようか。
「おじさん、もう梅雨なのになかなか雨降らないねー」
「そうだなあ、今年は特に遅いなあ・・・異常気象かな?」
田んぼのあぜ道を歩く。
サクラのリードは璃子ちゃんが持っている。
サクラもすっかり慣れたもので、璃子ちゃんのペースに合わせてとふとふ歩いている。
歩く度にもふもふ揺れる尻尾がかわいい。
「レオンくんと会えるなんて思わなかったなー、やっぱりかわいいね」
「ああ、あんなに近くで見るのは初めてだったけどかわいいよなあ」
「わぉん!わふ!」
「心配しなくても世界ランキング1位はサクラだぞ~」
振り返って抗議するように鳴くサクラにそう返すと、尻尾がプロペラのように大回転した。
かわいい。
「ひゃん!」
「サクラちゃん、時々全部理解してそうだよね・・・」
確かに、そうかもしれん。
うちの子は天才だからな!
草をスンスン嗅ぎながらサクラが歩く。
のどかだなあ・・・
青い空に白い雲。
綺麗な山の緑。
一部が盛り上がった田んぼ。
・・・あ、そっかあ・・・あそこに埋めたんだあ・・・死体。
情緒に急ブレーキがかかるのを無視しながら歩く。
「ね、ね、おじさん。他の動物はいた?」
「リュウグウパーク?あー・・・山中さんの所に真っ直ぐ行ったからなあ・・・見てないや」
「ふうん、そっかあ。みんな元気かなあ」
・・・何とかうまく誤魔化せたんじゃないか、今のは。
嘘は言っていないし。
なんとなく察しは付いているが、璃子ちゃんにあまり聞かせたい話ではない。
「今日の晩御飯はなにかなあ」
「あは、おじさんはいっつもそれだー!こーんな美少女と一緒に散歩できてるのにぃ!」
「そうだなあ・・・平時ならお金を払うべき案件だよなあ」
その場合俺は捕まる側だが。
・・・いかん、洒落にならない。
「ちょっとォ!わた、わたしそんなことしてないからねっ!」
両手をぶんぶん振り回して抗議する璃子ちゃん。
リード越しに振動が伝わって、サクラが不思議そうに見ている。
毛皮が振動しててちょっと面白い。
「おじさんのHENTAI!」
「やめてください社会的に死んでしまいます」
「わふん!おん!」
ぽふぽふと璃子ちゃんが俺の胸を叩いてくる。
はははなんだ全然痛くないな。
もっと鍛えた方が痛い!肘はやめなさい肘は。
遊んでいると思って参戦してきたサクラも一緒にじゃらしながら、俺はしみじみ平和を噛み締めた。
ちなみに晩飯はレトルトのビーフシチューであった。
ご飯とも合うが、パンが食いたい。
なんとか自分で作れないものだろうか・・・
今度探索に出るときに探してみようかな、パンの作り方的な本を。
「さて、璃子ちゃんも寝たし・・・ここでいいですか?」
「はい、すみませんわざわざ・・・」
ここは社屋2階、プロジェクターのある会議室だ。
璃子ちゃんはサクラという高性能セラピー機能付き枕を抱えて寝ているので、朝まで目を覚まさないだろう。
斑鳩さんは、万が一の時を考えて璃子ちゃんに付き添ってもらっている。
後で詳細を伝えてあげよう。
俺は会議室の椅子に適当に座る。
・・・なんかリーマン時代を思い出してテンションが下がってきた。
「(凄い顔してますよ、田中野さん)」
「(なんか会議室に来ると思うんです・・・もう二度と働きたくないなあって・・・)」
「(ふふ、トラウマですね)」
小声でおかしそうに笑う神崎さん。
我ながら情けない話である。
でも嫌なものは嫌なのだ。
「あ、山中さん・・・みんな揃ったんで、いつでも始めていただいて結構ですよ」
「はい、ありがとうございます」
先輩たちも席に着いたのでそう告げる。
・・・よかった、巴さんはいつも当然のように先輩の膝に座っているが、さすがに空気を読んだのか今は別々に座っている。
いや、なんか足をもぞもぞさせているな・・・違和感があるらしい。
それだけ日常的に座ってるってことか・・・おしどり夫婦だなあ。
「あれは、少し前のことでした・・・」
そう言って山中さんは重苦しい口を開いた。
リュウグウパークは、元々避難所ではなかった。
ゾンビが発生した頃は開園前の上、平日だったので園内は平和なものだった。
市街地から離れた場所だったのも幸いしたのだろう、しばらくは平和そのものだった。
しかし、すぐに異変は起きた。
スタッフの家族たちからの電話で、なにやら大変な事態が起こったらしいと気付いた。
街の様子を見に行くと言って出て行ったスタッフは、1人以外帰ってこなかった。
そのスタッフによって、ゾンビとしか言えないようなモノが大量に発生していることを知った。
残ったスタッフはとりあえず身を寄せ合って過ごした。
外から簡単に入れないように、バリケードも作った。
そうするうちに電気と水道が止まり、ネットも不通になった。
「でも、そのころはまだよかったんです・・・」
山中さんは続ける。
幸い、備蓄の食料や水は大量にあった。
土産物として販売するお菓子、売店にある雑貨。
人数もそれほどいないのでかなりの長い間籠城できそうだと胸を撫で下ろした。
撫で下ろした所で、あることを思い出した。
動物たちをどうするか、である。
小動物なら備蓄の飼料でまだ問題は先送りできる。
問題は大型の動物・・・ライオンや虎、ゾウやカバ。
備蓄飼料もそう数は多くない。
山中さんたちは、毎日話し合った。
このままでは飼料は尽き、動物たちは餓死してしまう。
補給の目途は全くない。
それに、もしも脱走するようなことがあれば大変なことになってしまう。
『処理』に反対する人も賛成する人もいた。
だが、みんな気持ちは落ち込んでいた。
『動物が好きだから』、安らかに眠らせてあげたい人達。
『動物が好きだから』、せめて飼料のあるうちは生かしてあげたい人達。
つまるとこの内情はそのようなものだった。
動物が嫌いだからなんていう人はいなかった。
だからこそ辛い話し合いだった。
・・・う~ん、これは辛いな。
俺は・・・どっちがいいのかわらん。
その立場にならないとなあ・・・
なりたくもないのだが・・・
ちらりと他に目をやれば、先輩はその大きな体を震わせているし、巴さんは先輩のシャツの裾を握ってもう泣いている。
神崎さんも痛ましそうな表情だ。
俺だって酷い顔をしているんだろう。
聞くだけでしんどい話だ。
「そして、外からあの人たちがやってきて・・・」
そんな頃、パークが機能していることを聞きつけて、警察が避難民を多数引き連れてやって来た。
警察の方々は地面に頭を擦り付けるようにして、なんとかここで避難民を受け入れてくれと頼んできた。
パークは広く、備蓄食料もある。
警察が持ち込んだ物資の中には、植物の種もあった。
人数が増えれば食料生産もできるだろう。
園長は、彼らを快く受け入れることにした。
が、それが問題だった。
避難民の一部が生きている動物たちを見て『早く処分しろ』と騒ぎ出した。
動物に食わせるものがあるなら、人間に回せとも。
飼料は人間が食おうと思えば食えるものがあるが、とても食えたものではない。
警察は必死で避難民を諫めたが、過激な避難民は止まらなかった。
スタッフは管理棟で生活していたが、毎日毎日押しかけて来て殺せ殺せと催促。
スタッフの中にはノイローゼになる人も出てきた。
「住まわせてもろうて・・・なんちゅう態度じゃあ・・・わしじゃったら叩き出すのう・・・」
先輩が、堪え切れないように呟くのが聞こえた。
俺もその意見には賛成だな。
公的な避難所じゃないのに、なんでそこまで大きい顔ができるのだろう。
山中さんたちスタッフが答えを出すまで待ってやるくらいのことはできなかったのか。
どうせ・・・こう言ってはなんだが、そう長く生きていられないのだし・・・
「そして・・・3日前のことでした」
その日、山中さんはスタッフの悲鳴で目が覚めた。
ゾンビでも出たのかと慌てて駆けつけてみると。
園長が、自室で首を吊っていた。
園長は朝一番に決まって園内を散歩し、動物たちに声をかけるのを日課としていた。
今日に限って姿が見えなかったので、不審に思ったスタッフの1人が園長室を確認したところ、惨状が明らかになった。
急いで園長を下ろすも、すでに亡くなっていた。
机の上には簡素な遺書ともとれる書置きが置かれていた。
『私は地獄へ行く。あの子たちと同じところには行けない。君たちは悪くない、誰も、悪くない』
それを読んだ飼育員が急にどこかに走り出した。
山中さんたちもそれを追いかけた。
「あの日の光景を、私は一生忘れないでしょう・・・忘れることができません」
山中さんが、ぽろりと涙を流す。
山中さんたちは、呆然と立ちすくむ飼育員に追いついた。
彼はただ涙だけを零し、『それ』を見つめていた。
動物たちが、眠るように死んでいた。
夜の間に、園長が1人で毒餌を食わせていたのだ。
たった1人で。
誰にも相談せず。
その時、以前から文句を言っていた避難民の一団が通りがかった。
『やっと始末したのか、これで安心だ』
そう言って笑ったという。
それを聞くや否や、飼育員が避難民に殴り掛かった。
彼は笑った避難民の首を折って殺すと、そのままどこかへ走り去った。
それから今に至るまで、消息は不明である。
動物たちはいなくなったが、山中さんたちと避難民の間には深い溝ができた。
俺たちが行ったときのあの避難民の態度はそういうわけだったのか・・・
「これが、あの場所で起こったことの全てです・・・」
そう言って、山中さんの話は終わった。
・・・なんという重い話だ。
誰が悪いってわけじゃない・・・わけじゃないが・・・
ううむ、うまく言語化できんなあ。
・・・やっぱり俺、避難所で暮らさなくてよかった!
自分1人の裁量でやっていける方がよかったなあ!
もし自分がパークにいたら・・・なんて考えるだけで胸が締め付けられる。
「うううう~!む、むーさあぁん・・・」
巴さんは先輩の胸に顔を埋めて泣いている。
どうやら知らなかったようだ。
・・・先輩のことで頭がいっぱいだったんだろうなあ・・・
「やりきれん話じゃぁ・・・」
先輩はその頭を撫でながら、自分も泣きそうになっている。
「・・・辛かったですね、山中さん」
目を赤くした神崎さんが、山中さんに言った。
「いいえ、あの子たちに比べればこれくらい・・・」
そう山中さんが涙を流しながら返した。
・・・あれ?
「あの、山中さん・・・じゃあレオンくんはなんで?」
何で生き残ってるんだ?
園長さんが大型動物しか殺さなかったのか?
「レオンは・・・以前から閉園時間になると脱走する癖がありまして・・・」
なんでも、気に入った人の所へフラフラ遊びに行くことがあったらしい。
どんなに厳重に施錠しても、気が緩んだ隙にスルリと脱走していたそうだ。
あの日は山中さんの部屋に遊びに行っていたとのことだ。
避難民が来るようになって、大型動物の脱走には目を光らせていたがレッサーパンダのような害のない動物はスルーされていた。
山中さんも、こんな時だからこそ笑って迎え入れた。
それが功を奏したのか・・・
「たっ・・・たった1匹だけ、生き、生き残ってぇ・・・」
巴さんはもう顔中涙まみれである。
それでも美人なんだからすげえなあ。
「せめて・・・せめてレオンだけは私が守ってあげたいのです。あのままあそこに残しておけば、何が起こるかわかりませんから・・・」
確かに。
避難民の暴走を警察も止められなかったようだし、あの避難所ヤバいかもな。
俺も助ける気はサラサラないんだけども。
山中さんがこうして無事ならそれでいい。
「のう、山中さん。じゃけど・・・詩谷の避難所であん子を育てられるんかいのう?」
「そ、それは・・・」
先輩の言葉に、山中さんは下を向いた。
ううむ・・・そこなんだよなあ・・・
宮田さんがいるとはいえ、避難民も大勢いるし。
「じゃ、じゃあここで育てましょうよ!ね!田中野さん!わたし、ごはんいりませんからっ!」
巴さんが言うが、そんなこと先輩が許すわけないと思うの。
「いかん!・・・田中野、わしが食わんけぇなんとかならんか?」
ホラ来た。
先輩のハンガーストライキとか恐ろしくて俺が死ぬわ。
「あのねえ、お2人とも・・・俺がそんなセコいことするわけないでしょう?レッサーパンダの1匹や100匹、どんとこいってなもんですよ!でも・・・」
でも、だ。
「山中さんは詩谷に行くんで・・・もしレオンくんに何かあったら・・・」
サクラは犬だからまだわかる。
神崎さんも飼っていた経験があるから、なにかあっても多少は対応できるだろう。
レッサーパンダはなあ・・・ううむ。
何かあっても何もできんし、その度に詩谷まで行くのも現実的ではない。
「・・・秋月の避難所なら、私の権限で何とかできますが・・・」
うーむ、それも一つの手か。
だが、あまり特別扱いをしてもらうわけにも・・・
この龍宮遠征が終わればもう少し楽になるので、俺の家で引き取ってもいいんだけど・・・
「あ」
俺の漏らした声に、全員が一斉にこちらを見る。
コワイよ皆さん。
「いやー、ちょっと心当たりがあるんですけど・・・あまり期待しないでくださいよ?」
どうせ一旦は詩谷に行かなきゃならんのだ。
ダメもとでお願いしてみようかな。
おっちゃんの家に。
 




