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8話 ホームセンター探索のこと

ホームセンター探索のこと




不死鳥のマークで全国的に有名なホームセンター『キョーナン』

俺はその入り口に立っていた。

今のところ周囲に俺以外の生きた人間はいない。


北区でも電気が切れているようで、中は薄暗い。


無理やりヘルメットにガムテープで固定したライトを点けるが、外からではあまり状況がわからない。

余裕があれば明るいライトも頂いておきたいところだ。


自宅周辺で拾った石を思い切り投げ込む。

石は奥まで飛んでいき、結構な音を立てた。

耳をすますと、奥からゾンビの騒ぐ声が聞こえた。


2・・・いや3かな。


それから様々な方向に石を投げた結果、この店内には少なくとも7から8体前後のゾンビが潜んでいると分かった。


・・・結構多いな。

いや、店の規模から考えると少ないのかもしれない。


可能な限り見つからないようにしながら動こう。

石を投げた方向をおおまかに覚え、音をたてないように店内に侵入した。



周囲を確認しながら物色する。

まずは入り口付近の充電器コーナーだ。

ここらには音に対する反応がなかった。


おお、あるある!大容量のモバイルバッテリーやソーラー充電器!

まずはこれからだな。

ベストのポケットに詰め込んでいく。


ついでに隣の電池コーナーから各種乾電池もいただく。

充電式のものは残らず確保だ。

家に充電器があるからね。



反対の通路を見ると大きなポスターが見えた。

不死鳥を中途半端に擬人化したキャラクターが叫んでいる。


『災害用品フェア!』


なんともタイムリーな!


乾パン、水をぶち込めば食えるアルファ米、缶詰、カロリーバーに長期保存パン!

詰め込めるだけリュックに詰め込んでいこう!



ウッキウキで近付くと何かに足を掴まれた。



そこには下半身が欠損した若い店員らしきゾンビ。


「オアアアアアアアアアアアアアアアア!」


「うおっ!?」


ッヤバイ!叫ばれたし叫んでしまった!


店内の暗がりから呼応するように聞こえる奴らの叫び声!

畜生!入り口でこれかよォ!!


「オラぁッ!!!!」


腰から引き抜いた木刀で半身ゾンビの脳天をぶん殴る。

手の力が緩んだ!


もう一回殴るとリュックをかっさらって入り口までダッシュ!!


後ろからダバダバと足音が聞こえる。


そのまま入り口を通過して駐車場に出る。


振り返る。

追いかけてくるゾンビは3体。


俺は足元にリュックを投げ、息を整えながら1体目を待つ。


右肩に木刀を乗せるように構える。


「らッ!!」


飛び込んでくるゾンビを迎え撃つように、足を踏み出しながら振り下ろす。


狙い通り、そいつの額が大きく陥没するほどの打撃を与えた。


1体目が倒れ込む。

2体目が迫る。


振り返ってまた走る。


10メートル程走って、振り向いてまた構える。


「オォッ!!」


タイミングが早かった!


2体目の鼻を砕いた木刀を無理やり反転させ、下段から顎を跳ね上げる。

3体目もすぐそこだ。


「・・・ッのォ!!」


ふらつく2体目を蹴り飛ばす。

3体目を巻き込んで倒れた。


すかさず距離を詰め、倒れたゾンビ2体の頭に振り下ろす。

奴らは直視したくない何かをばら撒いて静かになった。


俺は止めていた息を吐き、回復に努めながら周囲を見渡す。

・・・動くものはなし。



一時はどうなるかと思ったが、このやり方が通用してよかった。



人呼んで『幕末の志士戦法』



とにかく逃げ、追いついてきた奴から1人ずつ処理をしていくってやつだ。

学生時代に大いにハマった漫画から拝借した。


ありがとう人斬りの人。


しかし疲れるなあこれ。



それから俺は入り口に戻り、この戦法を駆使して残りのゾンビを釣り出して処理していった。

疲れたら駐車場の車の屋根に飛び乗って休憩。

ちょっと高い車なら奴らは登ってこれないみたいだ。


ゾンビが頭までゾンビで助かったでござるな。


死ぬほど疲れたけど。



家から持ってきたペットボトル入りの井戸水を飲み、煙草に火をつけ一服。

目の前には駐車場に転がるゾンビたち。


・・・全部で9体もいやがった。

いや、最初の半身野郎みたいなのがまだいる可能性もあるから安心はできないが。

まあ移動能力は低いし、慌てず頭を潰せばいいだけの話である。


ここ何日かですっかりたくましくなった頭で考えつつ、再度侵入する。

・・・まずはライトの確保だな。



懐中電灯コーナーで高性能のヘルメットマウントライトを手に入れたので、早速装着。

おお、明るい。文明の光だ。

これで隅々まで見渡せるぞ!


うわぁ・・・床が散らばった血や人間のパーツですっごいグロい。


よく見えるぅ。

世の中には見えなくてもいいものがあるのだなあ。



保存食や卓上ガスコンロのガスなどの細々したものをリュックに詰め込み、いったん車に戻る。

リュックの中身を荷台に開けて、またホームセンターへ。

何往復か繰り返して食料品をかなり手に入れた。


最後は入り口に置いてある台車を押しながら、店内で今回の探索一番の大物、発電機を探す。

しかしここは驚くほど手つかずだな。

ゾンビがいっぱいいたので見逃されていたのかもしれない。

となると、俺がゾンビを全滅させたことに他の誰かが気付くと危ないな。

次に来た時に無くなることも考えて、今日は軽トラ満載に物資を持って帰ろう。



発電機は軽油で動くものを選んだ。

軽量で音が小さいと値札に書いてあったのが決め手になった。

当たり前だが電気式は論外だ。


無事に確保できたので、その他に役に立ちそうなものを物色する。

軽油を入れるポリ缶、各種電気ケーブル、手ごろな大きさの鉄パイプ。

家の内側から打ち付ける板も欲しいが、早々なくなるもんでもないから後日にする。


園芸コーナーで野菜の種を見つけた。


栄養が偏らないためにも野菜は必要だしな。

電気が死んでいる今、スーパーの野菜は食えないだろうし。

試しに庭にあるおふくろの園芸スペースに植えてみよう。

ダメだったら郊外の畑に行って引っこ抜いてくればいいだけの話だ。


我ながら蛮族みたいな考え方だな。


カー用品コーナーで適当なサイドミラーを見つけたので、これも持っていく。

小さいカーナビがあるじゃないか!軽トラにはないからこれも拝借っと。


おっ釘打ち機売ってる。

でも日本で流通しているものは、銃みたいに使えないように安全対策が何重にもかけてあるらしいし、武器としては使えないな。

今日のところは却下だ。



今回の探索はこんなもんか。

発電機もあったし、保存食その他も大量に手に入った。

足りないものは後日取りにこよう。

ゾンビが長距離移動するかしないかはその時の状況でわかるはずだ。



俺は重くなった台車を押しながら駐車場へ帰還した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「発電機は軽油で動くものを選んだ。軽量で音が小さいと値札に書いてあったのが決め手になった。当たり前だが電気式は論外だ。」 電気式の発電機って、あるんや?
[気になる点] 1人で軽トラに積む事ができるような軽量小型のセル付ディーゼル発電機って存在するのだろうか? [一言] 楽しく読ませてもらっています
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