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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
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21:時間旅行の相違点

これからの俺に起こることなのだが、俺の時間旅行は眠ったまま終了した

時空飛行船に乗ってから、お前が時間を指定したところまでは覚えているのだが

それ以降は全くだ

だから、お前たちが時間旅行に参加している間の記憶は期待しないで欲しい

俺が知っている、時間旅行中の出来事も修から聞いた話だ


「そういえば、四季宮の姿がないな」

「雲隠れだ。あいつは能力で自分の今後の危機を察知し、この町から離れている」

「そうなのか・・・大変だな」


とりあえず、修のことはいいだろう

まずは、修から聞いた時間旅行の話をしよう

しかし今起きている時間旅行は、俺が知っている時間旅行といくつか食い違っている部分がある

修が嘘を伝えるはずはないのだが・・・とりあえず話を進めよう


まず、十年前の修たちもこの時間に・・・荒廃した十年後に降り立った

で、夏樹たち三人と修は別行動だったから動向は知らない

ただ、修が接触したのは十年後の俺だそうだ


「・・・私たちじゃなくて、四季宮さんが十年後の冬夜君と会っていたの?」

「ああ・・・あの手紙も三人が来る記述だったのだが・・・修のお遊びだと思ってあまり信じてはいなかった。表情には出さなかったが、正直驚いた。修が来るかと思いきや、出てきたのは夏樹たち三人だ」


詳細を話していない蛍は夏樹が来ると思っていたが・・・俺はお前たち三人の姿を見るまで修が来るものだと思っていた

俺が知る相違点の一つだ

まあ、その時点で俺が知る時間とは大きく変わっているから、今度は違う点を話していこう


修の話だと、雪季が自分の死を認識するのは自分の墓標を見つけたからなんだ

そして今の時間と同じように雪季は十年後のどこかに行方をくらませた

行き先は修も覚えてないみたいで話してくれなかったが・・・今回は事情が大きく変わる

雪季が死を認識するのは俺から自分の死を聞かされたからだ


「あのさ、早瀬。あの時早瀬は・・・雪季の死因を「わかるだろう?」と言ったよな。まさか・・・雪季の死因は」

「・・・言わなくてもわかるだろう。あいつの死因は病死だ」

「ちなみにドナーは?」

「見つかった。いざ、移植の手術に移ろうってところで雪季の病態が悪化して・・・そのまま・・・」


・・・暗い顔をしないでほしい

もっと早く見つけられればと、俺も思うこともある


話を続けようか

そして、雪季が逃げるところは一緒だな。行方をくらませてはいるが・・・可能性としては十年後の夏樹と一緒にいる確率が高いんだよな、雅文


「そうだな。十年後の新橋らしき女が相良雪季らしき子供を抱きかかえて路地に入ったところは見えていたからな」


修の時間旅行で、雪季と共に逃げていたのも十年後の夏樹だったのかもしれないし、異なる人物かもしれない

現時点では確かめようのないことだけどな

修に連絡もつかないし・・・この三ヶ月で修から話を聞こうとするのは無理だろうな


「他の客人たちはどうなんだ?一葉とか、小影とか・・・」

「二人ともフルネームで頼む」

「一葉拓実さんと夜ノ森小影さんです。岸間さん、何かご存じですか?」


「まずは一葉・・・そいつ、小学校教師か?」

「確か、そうだと言っていた」

「裏組織の記録帳に載っていた。小学校を襲った時に子供を守って死んだって記載があった教師の名前と一緒だな。職業も一緒なら死んでいるよ、そいつ」


「じゃあ、小影は・・・」

「・・・夜ノ森小影には聞き覚えはないな。同姓同名で思い当たるのは夜ノ森商会の初代会長だが・・・年代が異なるしな」

「じゃあ、夜ノ森さんは生きている可能性があるかもってことかな?」


「なあ、夏樹、相良・・・」

「なにかな」

「夜ノ森小影って誰だ?俺が参加していた時間旅行にそんな名前の奴はいなかったぞ」

「・・・甚平姿で、左目が眼帯の夜ノ森小影だよ。覚えてないのか?」

「・・・記憶は曖昧なのは自覚しているが、そんな特徴のある人間がいたら嫌でも覚えてるよ」

「話は逸れるけどさ。冬夜君が参加した時の客人の名前って憶えている?」


ああ。そこも相違点になるのかもな

俺が参加した時の客人と乗務員は・・・九人だ

俺、修、夏樹、相良、雪季、一葉の客人六人

そして、星月、筧、朝比奈の乗務員三人だ


「・・・二人足りない」

「なあ、早瀬。筧はどっちだ。正太郎なのか、それとも正二か!?」

「・・・正二と名乗っていた。正太郎とは誰だ?」

「・・・正太郎と小影が、いなかった」


・・・そこも大きな相違点のようだ

夜ノ森とその、筧正太郎の存在の有無が何を意味しているのか俺にはわかりかねるが

・・・俺の知っている時間旅行と大きく食い違っているな

ついでに言うと、星月、朝比奈・・・ここは正二というべきか

彼ら三人は永海を出ている。元々、生活基盤は首都圏で築いていたみたいだからな


これが、俺が知る時間旅行だ

詳しい内容は聞かされていない

ただ、俺たちはちゃんと十年前に戻ることができている

それが何を意味するのか・・・わかるよな


「・・・雪季君は戻って来たってことだよね」

「ああ。俺にはその理由も心当たりがある」


そして冬夜君はまっすぐと指を指す

その指先には私


「・・・理由?」

「雪季を説得したのはお前らしいんだ、夏樹」


十年前に戻ってからしばらくした後、雪季はこう言った

・・・どうせ二年後に死んでしまうのなら、多少無理して来るべき時間が狂ってもいいんじゃないかと思ってしまいました

同時に、これから先を生きられる夏樹と幸雪さんが羨ましいなと思ったんです

二人の顔を見ていたくなくて、自分の現実を受け入れたくなくて逃げてしまいました

必死で逃げても、逃げても何度も追いかけてくる夏樹は僕にこう言ってくれたんです


運命は変えられる

もし、運命が雪季君の死を絶対のものにしようとするのなら

私が、必ずその運命から守ってみせるよ・・・と


何なんですか彼女。運命と戦って見せるなんて無謀なんですよ

けど、その無謀さに、その優しさに、その諦めの悪さに、勇気づけられたのは確かです

同時に、このまま彼女を放っておくと、いつか取り返しのつかない場所に片足突っ込んでしまいそうだなと思いました


だからこそ、僕はちゃんと生きて彼女を止める役割を果たしたいなと思えたんです

彼女を支え続けたい

その為には、きちんと病気を治さないといけません

そう思わせてくれたのは、彼女です


運命は変えられる・・・本当にそうなれば、いいと思います

だからこそ、それを期待して・・・僕はこの想いを自覚してから、選ぶことはないと決めていた幸福を選びました

夏樹もまた、僕の手を取ってくれました

・・・彼女をこれから先、必ず幸せにしたいという想いが生きる糧になればと思います


ねえ、冬夜さん

僕はこれからこの病気を治すために、海外に行ってしまうんですよ

寂しいと言えば寂しいです。せっかくできたばかりの恋人と離れ離れなんです

けど、この少しの別れが・・・これからを決める戦いなんです


僕は頑張ります

そして、戻ってきて夏樹と再会したら必ずこう言うんですよ

貴方の言う通り、運命は変えられましたって!

必ず戻ってきます

その時を楽しみにしててくださいね、冬夜さん

今度会う時は、もっと元気になっていますから


「・・・と、言うのが、雪季が海外に行く前に俺に話してくれた内容だ。鮮明に覚えているのは、これが俺と雪季の最後の会話になったからという理由が大きい」

「・・・へ?」

「俺が新橋について調べた内容と同じだな。タイミングとしては時間旅行の最中か」


脳みそが追い付かない夏樹の横で相良も放心している


「夏樹はともかく、なんでお前まで放心しているんだ・・・」

「・・・」


ゆでだこみたいに顔を真っ赤にさせて、夏樹はまだ十年後の俺たちが体験した時間旅行の最中の話を受け入れきれてない


「よし、岸間。最後にどんと現実をぶつけてやってくれ」

「おうよ。新橋。お前は俺たちの調べでも間違いなく相良雪季と付き合ってたよ!」

「ひゃー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


夏樹から沸騰させたヤカンのような音がして、一気に倒れこむ

相良がそれに気が付いて、地面につく前に身体を支えてくれる・・・が意識を失っているようだ


「・・・初心だな」

「・・・初心かな」

「・・・初心すぎる」


俺たち三人の呟きはどうせ聞こえていないだろう

でもまあ、情報はこれですべて出そろった

十年後の夏樹が、アンサクスを欲す理由は俺でもわかる

・・・雪季の運命を変えるためだ


「とりあえず、俺の隠れ家にでも行く?」

「岸間を連れて教会には戻れないしな・・・いいだろう。今後のことも話し合おう。雪季の行方も、十年後の夏樹のこともどうにかしないといけない事項だからな」


俺は夏樹を米俵のように抱えて、岸間の先導で奴の隠れ家に向かう

相良は俺の持ち方に何かもの言いたげだったが、数秒黙って見ていたらすぐに目をそらし始めた


「こっちだぞ、神父様」

「はいはい」


岸間の先導は正直うるさい

聞いていた情報だと、こいつはヴェアリアルの狙撃手のはずだが・・・なぜ工作員なんて下っ端らしい自己紹介をしたんだ


「・・・お前、あの組織の幹部クラスだろうが」

「早瀬?」

「何でもない。行くぞ」

「あ、ああ・・・・」

「疲れたならお前もこう―――――――――」

「遠慮しておく」


全部言い終わる前に相良は米俵持ちを拒否する

そりゃそうかと思いながら、俺は岸間の後を相良と共についていった

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