20:鹿野上蛍の伝言
「伝言の内容はこうだった」
幸雪君が頼まれた鹿野上さんからの伝言は・・・やはりまずはお説教から
『ちんちくりんの癖にいい度胸してるよね、無断で出ていくとかさ!』
『襲われたって知らないよ!裏組織なんかと話が通じるわけがないからね!薬で頭おかしくなってないことを祈っててやるから!』
お説教というか、小言だが彼の言うことは正論だった
『まあ、本題だけどさ。冬夜兄さんは十年後の新橋が生きてる事知らないんだよね。ずっと追ってたけど情報一つ与えられなかったからね』
『あの手紙で初めて生きているって気が付いたみたいなんだよ。けど、冬夜兄さんはあんたが生きているっていう決定的な証拠は握っていない』
『・・・俺は知ってたよ。ヴェアリアルの幹部を一人殺して追われている立場にある事も全部知っていた。知っていたうえで冬夜兄さんに黙っていたんだ』
『俺の知っている限りの情報は渡す。相良幸雪に調査資料を預けているから、冬夜兄さんの目が離れたところで見てみてよ』
『後、俺はあんたが不死薬アンサクスを狙う理由もなんとなく理解できる』
『冬夜兄さんも聞けば予想着くと思うよ』
『なんせ、今のあんたは「俺たちと一緒」の立場だから』
『ついでに、俺が調べた不死薬アンサクスの資料も同封しておく』
『まあ、上手くやりなよ。わからないことがあれば相良幸雪にでも聞いて脳みそ整理しておきなよ』
『それじゃあね。健闘は仕方ないから祈ってやる』
『未来の自分を、必ず止めて見せろよ。新橋夏樹』
「・・・という感じだ」
割と伝言が多かったことに驚いた
同時に、鹿野上さんが色々と心配してくれているのが伝わってくる
今度会ったらちゃんとお礼を言いたい
「これが、鹿野上から預かってきた資料だ」
そして、幸雪君は大きめの手帳を私に手渡す
軽くめくってみると、写真もついてわかりやすく情報がまとめられているようだ
冬夜君がいないところで見た方がいいんだよね
見つからないようにしておこう
そう思いつつ、私はそれを鞄の中に仕舞う
「何か力になれることがあったらいつでも言ってくれ」
「もちろん。頼りにさせてね、幸雪君」
「もちろんだ。その代わり」
「その代わり・・・?」
「もう二度と、一人だけで突っ切るなよ。まずは誰かに頼れ」
「・・・わかった」
今回は相手が岸間さんだったからよかったが、もし別の人物ならば殺されていたかそれよりひどい目
に遭っていたかもしれない
未来はわかりやすく危険だ
「慎重に動いていこう」
「了解」
だからこそ、まとまって動いた方が安全かもしれない
私たちの話が終わると同時に、冬夜君と岸間さんの話も終わったようだ
「待たせたか?」
「いいや、そこまで」
「とりあえず、話すべき情報はまとまった」
「じゃあ、話の続きをしましょうか」
岸間さんの合図で、私たちは再び「仮説の話」に戻っていく
「俺の仮定において、必要なのは相良雪季が死ぬまでの情報なんだ。だから、今からそれを知る人物に八年前までの相良雪季の事を話してもらう」
岸間さんの目線の先には冬夜君
今から、雪季君の未来の話を聞くことになるのか
彼が死ぬまでの・・・私たちが生きている時間から二年先までの彼が生きた時間を
「神父様、こいつらが知らない相良雪季を頼みます」
「・・・そうだな。まず、時間旅行を終えたあたりから話そうか」
冬夜君はゆっくりと息を吸う
そして、彼は
彼自身が体験した時間旅行の話を、始めてくれた




