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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
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18:工作員と三人の道端会議

「畜生新橋。お前のせいで怒られ損だ」

「すいません・・・」

「全く、十年後はこいつみたいな裏組織の工作員と出くわす可能性もあるから危険なんだ。今後は一人で外出するな馬鹿」

「は、はい・・・」


冬夜君のお説教は終わり、私と岸間さんには立つ権利が与えられる

スカートと靴下についた砂ぼこりを払いながら、岸間さんの様子を見ていた


「どうした?」

「・・・私、どうして岸間さんに狙われているんですか?」


裏組織の工作員である彼に狙われる十年後の私の疑問を解消しておきたい

岸間さんに問うと、一度冬夜君の方を見る


「話していいのか?」

「構わない。十年後の知識は必要だろうからな」

「・・・神父様は、新橋が十年前から来たって信じているのか?」

「ああ。俺には信じられる」

「そうかよ。じゃあ、話すけど・・・神父様は十年後の新橋の動向は知っている訳?」


岸間さんの問いに冬夜君は首を振る


「じゃあ、ここから話すことになるな」


岸間さんは腰にひっかけていたポーチから小さなメモ用紙を取り出す


「神父様は「不死薬アンサクス」ってワード、知っているよな?」

「ああ。お前らの頭が作った、不老不死の秘薬と謳われる出所不明の薬だよな?」

「それを十年後の新橋夏樹が狙っている」

「・・・なんで?」


不老不死の秘薬を私が、狙っている?

理由が全くわからない

が、冬夜君には心当たりがあるようで少し俯いていた


「・・・目的は理解した。しかし、夏樹を追う理由は?」

「あいつは色々とやらかしすぎているんだよ。俺たちから「排除指定」をされるほどにな」

「・・・よっぽどだな」

「排除指定って・・・」

「幹部を一人殺したって言うのがでかいだろうな。俺たち組織全員に顔も情報もすべて渡されて報復の為に追われている」

「・・・」


十年後の自分がやっていることが理解できなくて、何も言えなくなる


「・・・とりあえず、前提としてはこんな感じ。俺は新橋夏樹を追ってここに来た。で、遭遇したのは十年前の新橋夏樹だったってところだ」


岸間さんの話を聞き終えた冬夜君は無言で考え込んでいた

私も何も言えない

そんな沈黙を破ったのは幸雪君だった


「あのさ、岸間さん、だっけ?」

「ああ。お前は?」

「相良幸雪。二つ聞きたいことがあるんだ」

「おうよ」

「一つは、組織の情報を俺たちに渡していいのか?」

「その理由は神父様。俺たち組織は、神父様を敵に回したくない。だから神父様の聞きたいことには答える。嘘偽りなくな」


鹿野上さんもそう言っていた

組織は神父と冬月家は敵に回したくない・・・と

だから、冬夜君の前では協力的なのだろうか


「なるほど。もう一つは・・・十年前の夏樹さんと会うまでの動向だ」

「俺の、動向?」

「ああ。岸間さんは十年後の夏樹さんを追ってここに来たのだろう?」

「そうだな」

「それまでの間に、何か気になることは起きなかったか?」

「そうだな・・・まず、走り方の下手な子供がこの道を走っていた。黒髪で、制服・・・ありゃ、聖華の中等部だろう」


その言葉に、私と幸雪君は瞬時に反応する

走り方が下手な子供・・・このタイミングなら、その子供は一人だけだ


「それを、十年後の新橋が見つけて何かをするように子供に言っていたな」


会話までは聞こえなかったけど、と付け加えて岸間さんはその時の様子を思い出してくれていた

しかし悩む素振りが全くない


「後は、その帽子。それが十年後の新橋の頭から落ちた。それから少年を抱きかかえて十年後の新橋は路地に入っていく様子だった」


それを聞いた私たちは瞬時に路地を見る

ここに着いた時に路地に入れば・・・追いつけた可能性があるのか


「で、俺は新橋によく似た十年前の新橋を見つけた。記憶力には自信はあるが、もしかしたらと思って・・・こいつに話を聞くことにしたんだ」


岸間さんが私と出会うまでの経緯はこれで終わりだ

後は私を背後から脅して、十年前の新橋夏樹っていうにわかには信じられないような話を一応、信じてもらい休戦を結んだ

その直後に、冬夜君と幸雪君が合流して、今に至る・・・と言った感じだ


「なるほど。じゃあ、岸間さんたち「組織」も十年後の夏樹さんが不死薬アンサクスを狙う理由はわからないんだな」

「ああ。俺たち側でも少し考えているんだ。あいつが、薬を狙う理由」

「私の両親はここでは二十六年前に、お兄ちゃんもここ数年の内に亡くなっているから、身内に使うって言うのは・・・ないよね?」

「本人というのはあり得るのか?」

「十年後の私が何を考えているかわからないけど、少なくとも十年前の私は真っ当に天寿を全うしたいかな・・・」

「現時点で大きな病気とかは?」

「ないかな」


思い当たるものも何もない

どうして、私は・・・・


「なあ、俺から一つ聞かせてもらえるか?」

「なんでしょうか、岸間さん」

「一つ気になることがあるんだよ。十年前の新橋の他に、時間旅行をしたって奴はいるのか?」

「いますよ。ここに居る幸雪君とか」

「じゃあ、十年後の新橋が連れて行った子供も・・・時間旅行者か?」

「・・・だと、思います」


まだ、雪季君だと確定したわけではないからとりあえず仮定で進める

すると岸間さんがゆっくりと口を開く


「・・・じゃあ、もしその子供が時間旅行者だとして、その子供の名前「相良雪季」って言わねえ?」


なぜ、岸間さんがその名前を・・・?

雪季君は、八年前に亡くなっているんじゃ・・・


「だと思う。十年前の雪季も時間旅行をしているから」

「・・・じゃあ、俺の思った通りだな」

「思った、通り?」

「ああ。じゃあ、今から俺の知る情報と仮定の話を交えた予想を・・・聞いてもらえるか?」

岸間さんは困ったように頭をかいて、予想を話してくれた

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