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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
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17:荒廃した街の二人

あの後、私はすぐに門へ向かった

すると、血だらけの門番さんが周囲の人の手を借りて怪我の治療をしているところに出くわした


話によると、雪季君は門の外に出たそうだ

それと同時に、目くらましをするかのようにカラスの集団が門番さんに襲い掛かったそうだ

普通ならできないような芸当だが・・・

動物と話せる雪季君なら、できることだ


門番さんの近くにいた人に、プレハブにいる鹿野上さんへ伝言を頼んだ

雪季君は門の外に出たこと

私は彼を追い、外に出ること

二つを伝えてほしいと頼むと、その人はすぐに鹿野上さんのところへ行ってくれる


私は門の外を見渡して、カラスが沢山いる場所を覚えて外へと駆けだした

雪季君がカラスを使ってここから出たのなら、カラスが彼の近くにいるのではないかと思ったからだ

教会の階段から見えた、カラスが沢山止まっていた道へと辿り着く

しかし、そこには帽子が一つ落ちているだけだ

ボロボロの帽子だし、十年後の誰かの帽子だろう


「雪季君、どこに行ったんだろう・・・」


周囲を見渡しても、誰一人いない

と、思ったが・・・存在を消すことに長けている人が一人いたようだ

身長ほどの大きさがあるケースを背負った彼は「それ」を背後から私の頭に突きつける


「・・・下手な動きはするな」

「・・・」


こういう時、両手を挙げて抵抗する意思がないように見せたらいいんだよね

しかしこの人、いつから私の後ろに・・・?


「質問に答えろ、お嬢さん。お前の名前は?」

「・・・新橋、夏樹」

「当たりか」


当たりってなんなのかな・・・十年後の私は、この人に何をしたんだろう・・・


「しかし・・・こんな短髪で、チビで、まな板だったかね?」

「失礼な・・・・!成長期はまだまだですよ!」


短髪なのは髪を伸ばしていないだけだし!

チビって言ったって、平均身長は超えてるし!

何よりもまな板ってどこを見て言ったのかな!?


「成長期だあ?二十六の女が、成長云々ほざくか?」

「・・・私、十五歳なんですけど」

「・・・嘘も大概にしとけよ、新橋夏樹」


銃口を頭にぐりぐりされる

・・・り、理不尽だ

二十六・・・つまりは十年後の私がこの人相手に何かしたのは間違いないんだろうけど

一体、私は何をしたんだ


「嘘じゃないです。学生証見せたっていいですよ」

「・・・ほう」


私は鞄の中に入れていた学生証を彼に出す


「・・・十年前の日付にしては綺麗だな」

「十年前のなので」

「このご時世、過去の物なんて全部煤だらけよ。まさか時間旅行をしに来ましたってか?」

「そういったら信じてもらえますか?」

「・・・嘘をついている気配がないな。嘘を真実だと思い込んでいるやばい奴なのか?」

「・・・それが、真実だからです」

「薬でもキメてるのか?」

「失礼な。そんなもの一生ご遠慮しますよ」

「まあ、薬入れてたらこんなまともな受け答えはできないし、何よりもその制服」

「この制服?」


彼は私の制服を指さす

今、私が着ているのは永海高校の冬服だ


「その制服、五年後にデザイン変わったから、現存しているのは新デザインだけだ。旧デザインは全部燃やしたとか聞くし」

「変わるんだ・・・」

「ま、その学校も四年前から機能してないんだけどな」

「は、はあ・・・」

「ちなみに俺はその時期の制服デザインが一番好き」

「どうでもいい・・・」

「まあ、嘘くさいけど信じてやるよ。十年前の新橋夏樹。その制服に感謝しな」


彼は銃を私の頭から話してくれる

なんだか、ここ最近生きるか死ぬか脅されることが多いような・・・


「ありがとうございます」

「まあ、完全に信じたわけじゃねえけど・・・とりあえず休戦だ」


彼は銃を腰のホルダーに直して、私と向き合う

薄茶色の長い髪を一つ結びにした彼は、真紅の瞳で私を眺めていた


「とりあえず、貴方のお名前は?」

「俺は岸間雅文。まあ、とりあえず裏組織所属とだけ言っておくわ」

「裏組織・・・」

「お前何にも知らないのな」

「十年後は初めてなので」

「・・・時間旅行スタンスは崩さないんだな。わかったよ。とりあえず説明してやるから」

「ありがとうございます」

「その代わり、条件がある」

「条件?」


岸間さんは青ざめた表情でそれを指さす

そこには、彼の後ろで苦笑いをしつつ手を振る幸雪君と・・・

銃を構えた冬夜君が立っていた


「神父とは知り合いか?」

「冬夜君?」

「名前呼びなら知り合いだな!今すぐあいつを説得してくれ!殺される!」

「夏樹ぃ・・・お前、もし雪季がすでに敷地外に出ていたら引き返せって言ったよなぁ?」

「あ」


確かに、そういわれていたのだが・・・

で、伝言はしたし・・・


「・・・怒りの原因はお前か」

「・・・いうこと、聞かなかったから」

「・・・そこで正座しろ夏樹。お前もだ」

「俺も巻き沿い!?」


岸間さんを巻き込んで私たちは正座してお説教の道しかないようだ

冬夜君のお小言はいつもより短い十分だったのだが

それでも、かなり絞られた気がした

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