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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
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14:荒廃した十年後

二人に案内されて永海山を下り、街を歩いていく

しかしそこはやはり私たちが住んでいた永海とは大違いだ

一言で言うならば「治安が悪い」

見渡す限りだと、ゴミはいたるところに落ちていて住居は廃れ、誰も住んでいる気配がない

人が住んでいるような家だって、斜めになっていたり壊れているものが多すぎる

一体この十年で何があったのだろうか・・・


「驚いてるの?」

「ま、まあ・・・そりゃあ、こんな感じだったら。十年前とは大違いですし」

「まあね。十年間の間で色々なことがあったんだよ」

「しかし十年でこんなに治安が悪くなるものなのですか・・・?」

「・・・きっかけは議員の汚職だったかな。永海市の重役だった奴らの大半が裏組織に繋がっていることが明らかになり、市長はその責任を糾弾され、辞職まで追いつめられた」


鹿野上さんは十年の間であったことを歩きながら話してくれる


「それからは早かった。永海市は裏組織が介入し、あっという間に無法地帯になった」

「挙句の果てに隣接する町からは断絶の壁を作られ、永海市は完全隔離されてしまった。一応、物資は届くけど・・・自給自足がいい。盗まれるリスクもあるけどね」


汚職事件、裏組織、断絶の壁・・・完全隔離だなんて、頭が追い付かない

十年の間で色々ありすぎなんじゃないかな

普通、そんなことあり得ないでしょ・・・


「抵抗した者は皆殺された。例を挙げるとすると、相良幸雪。お前もその抵抗した中の一人だよ」

「死んだことより結局明治に帰れていない方が驚きなんだが・・・」

「後はええっと・・・新橋冬樹もだったかな。だから、十年後には新橋神社は既に廃神社だし、ちんちくりんも行方知れずなんだよ」

「お兄ちゃんが死んだ上で私も行方不明とか生きている可能性低すぎない?」

「ああ。これでも探してはいるんだが・・・情報は全然集まっていない。だが・・・」

「あの、僕は・・・」

「あんたは目で見た方が早くないかな・・・ほら、着いたよ」


二人に案内された先は、早瀬教会

そこは少しだけ古びていたけれど、ほとんど十年前と変わらない状態で立っていた


「裏組織も冬夜兄さんと冬月家は敵に回したくなかったみたいでね。冬月家の保有する土地とこの教会だけは裏組織の介入が禁止されているんだ」

「へ、へえ・・・」

「ここは安全地帯と思ってくれたらいい。他にも人はいるけどな」


二人は教会の敷地の中に入ろうとする

が、門の前に立っていた人からそれを向けられる


「・・・一応、ですからね」

「・・・合言葉は」


私たちは銃口を向けられ、三人揃って二人の影に隠れる


「ビビり」

「う、うるさいです!」


「合言葉なんてものはない」

「・・・確かに。おかえりなさい、神父様」

「ただいま。異常はなかったか?」

「ありませんが・・・その子達は?」

「俺の知り合いなんだ。十年前からの客人だと言ったらどうする?」

「・・・冗談ではないみたいですね。信じますよ」

「助かる。三人の事は全員に伝達をしてくれるか?不法侵入者ではないと伝えてほしい」

「了解です」


そう言って、銃を持った男性は近くにいた男性に話しかけて冬夜君の言葉を伝える

伝えられた男性は別のところへ、銃を持っていた男性は再び門の警備に戻っていく


「離れに蛍の工房がある。そちらで話そう」


教会の敷地を歩いていく

いたるところに仮設テントみたいなものが設置されている


「・・・飲み水を作れるようにはしたんだけど、風呂は十分に用意できなくてね。俺たち自身も多少臭いと思う」

「・・・二人が匂うとしても、正直周囲の煤のような匂いの影響で全くわからないのだが」


幸雪君の言う通り、この場所は煤のような何かが燃えた匂いがする


「煤・・・か。今日何人死んだっけ?」

「今朝の確認時点では三十人。それをまとめて燃やしているから・・・相当匂うんじゃないかな」

「・・・燃やすって」

「死体を、ですか?」

「ああ。十分な設備を使用させるように掛け合ってはいるんだが。なかなか首を縦に振ってくれないからな・・・敷地内で、燃やすしかないんだ」

「一応、俺の発明品で火力は底上げしてるけど、限界は存在するわけなんだよね」


まさか、十年後はまともに火葬すらできないなんて・・・

とんでもない時代になったものだと、心の底から思ってしまう


「だからと言って土葬をしたり、死体を放置するわけにもいかない。伝染病で死人を増やすわけにはいかないからな」


最もなことを前に、私たちは無言のまま教会の敷地を歩いていく

辿り着いたのは、教会の離れにある小さな家みたいなの

プレハブと言ったかな。それが立っていた


「ここが俺の工房」

「工房・・・鹿野上さんって今一体何を・・・」

「俺は今、ここで工作してるんだ。冬夜兄さんと、あの「ヴェアリアル」と戦うためにね」


不敵な笑みを浮かべて、彼はプレハブの鍵を開けて私たちを中へと招いてくれた

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