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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
39/83

13:時刻通りの対面

朝食を食べ終わった後、一度部屋に戻って荷物を取りに戻った

四季宮さんが食堂にいれば手書きの紙の件を聞きたかったのだが、残念ながら彼は食堂にいなかった

仕方ないので、またの機会を狙おうと思う


正二さんの話だと、未来は既に真冬並みの寒さだそうだ

防寒着を取りに行ってから、一階の出入口へ三人で向かう


「と、いう訳で・・・」

「遂に、ですね」

「・・・この先が、十年後か」


私たちは、昨日この船に乗り込んだ時の出入口の前で息を飲む

この先はもう、私たちがいた永海ではない

十年後の永海だ


「・・・雪季」

「な、なんですか?」

「選択者代表として、ここ開けてくれるか?」

「・・・わかりました」


幸雪君から促されて、雪季君は恐る恐るノブを掴む

ゆっくりとそれを降ろし、扉は音をたてて開いた

そこに広がっていたのは、木々だ


「・・・一応、永海山の山頂ということでいいんですよね?」

「正太郎のいうことを信じるなら、そうなんだろうな」

「・・・ここから見える景色は永海市だよ。ほら、あそこのテレビ塔。十年前と同じだよ」


ここから見える場所にそびえ立つ永海テレビ局を指さす


「十年前と変わりないですね」

「町並みは・・・そうじゃないみたいだが」


幸雪君の言う通り、永海市は十年前と比べて廃れたというか・・・暗くなっている

理由は全くわからないが・・・なんだか嫌な予感がする


「・・・気を付けて探索をしていきましょう」

「ああ。とりあえずまずは山を下りよう。そして・・・話し合い通りでいいんだよな」

「僕は構いませんが・・・」

「私も大丈夫。きっと、協力してくれるはず」


食事を終えた後、私たちは未来を探索するうえで最初に必要な未来の基礎知識をどうするかという問題を出した

幸雪君も雪季君も十年後、必ず今いる場所にいるとは限らない

もちろん、私だってそうだ

しかしこの中で一番同じ場所にいそうなのは私

未来の事を、十年後に至るまでに何があったのか確認するためにまずは「十年後の新橋夏樹」に接触することにしたのだ

最悪、十年後のお兄ちゃんに会えると思うし、協力をしてもらおう


山を下りていく

しかしそこは十年後とは異なりきちんと道が整備されているわけではなかった

山頂から中腹までは普通に山を登ったのだが、それでもこんなに木々が生い茂っており歩きにくいことはなかった


「大丈夫か、雪季」

「な、なんとか・・・ここ、こんなに歩きにくかったですかね?」

「二人は近くにある長い木を使いながら慎重に下りて来て。私は先に中腹に向かうよ」

「夏樹さん!?」

「・・・彼女なら、大丈夫だと思いますよ、幸雪さん」


私は山道を全力で駆けて行く

身体はいつも通り軽い

足場が不安定なところがいくつかあるけれど、それも関係ない

獣のように山道を駆けているだけだ

地面に足を付けているのはほんの一瞬

足を付けたタイミングでさらに加速し、どんどん山道を下りていった


「・・・運動神経いいんだな。槍持った状態であそこまで走れるなんて凄いぞ」

「これが風祷ふうじゅの加護ですか・・・」


二人の声を後ろにどんどん駆け下りる

そして、山頂への入口・・・中腹が見えてきた辺りで人影が見えた


「止まる必要はない。そのまま下れ」

「・・・えぇ」


足を止めそうになるが、その声を聞いて私はそのまま足を止めずに下る

そして中腹に辿り着く

開けた場所で待っていたのは、黒衣の神父

懐中時計を片手に立つ姿

声でなんとなく「だろうな」とは思っていたけど、こう目の当たりにすると十年後に来たんだなと思わされる

なんせ、彼はまだあの飛行船で眠っているのだから


「遅いんだよ。ちんちくりん。何時間待たせる気なんだよ」


隣に立つのは十年後から大分成長した彼だ

しかし口調は十年前のまま

それに懐かしさも覚えるが、同時にまだ生きていることに安堵を覚える


「・・・どういえばいいのかな?」

「いつも通り気軽でいいんじゃないのか?時刻は八時丁度だ」

「じゃあ、こうだね」


話している間に幸雪君と雪季君も山道を下り終え中腹に辿りつく

そして二人もまた、その光景に驚いていた


「おはよう。冬夜君。鹿野上さん」

「おはようちんちくりん。後の二人は初対面だね」

「・・・貴方は?」

「俺は鹿野上蛍。まあ、冬夜兄さんの知り合いとでも思ってくれたらいいよ。まあ、積もる話もあるし、とりあえず移動しよう」

「わかったよ」


神父姿の冬夜君と厚手のジャケットを羽織った鹿野上さん

二人に案内されながら私たちは未来の街へ歩いた

当初の目的からずれてはいるけれど・・・これはこれで、いいのかも?

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