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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
36/83

10:相談役

大きく息を吐く

多分、この三つでいい

頭の中に浮かんだ疑問を抱えて、私は口を開いた


「まず、最初に。雪季君と冬月さんはどんな関係なのかな?」


二人に面識があるということはわかる

しかし、なんとなくどんな関係なのか掴めないのだ

雪季君の家は地主の家だし、冬月家も財閥を動かす大きな家だ

関りがないとは言い切れない関係で、家族同士の交流も少なからずありそう

けれど、それだけじゃない気がする

私は雪季君と三池さんの会話の中に存在したあの単語が引っかかっているのだ


「僕はというより、相良家のお話になりますがお答えします」

「お願いします」

「少し、昔話をしましょう。相良幸司という人間の昔話です」


雪季君はゆっくりと昔話を始めてくれた

僕の曾お爺様・・・相良幸司

便宜上、ここからは幸司さんと呼ばせてもらいます

彼は、田舎の農家であった相良家の末子として生を受けました

家族構成は両親と姉が三人。兄は五人

そのすぐ上の兄が、幸雪さんでした


ある日の前日

幸雪さんが帝都に出たいと父親に言いました

もちろん父は反対し、幸雪さんを殴ったと聞いています


その次の日のことです

相良家は、幸雪さんと幸司さんを除いて全員が殺されました

その遺体を見たのは、近所の人と幸雪さんだけであり、幸司さんは死因を知りません

それから、近所の人も同じように死んでいってしまい・・・

その田舎は呪われた土地となってしまいました。

そうなれば、幸雪さんも幸司さんもその土地から出ていく必要があり・・・

二人は帝都へ出たそうです


それから幸雪さんは幸司さんを養うために、仕事へ出ました

かなり厄介な奉公先に勤めることになってしまったそうです

彼は毎晩遅くまで働いていたそうです

あまりにも疲れて深夜の路上で眠りこけた幸雪さんを拾ったのが冬月桜彦

それが、幸雪さんが冬月書店で働くきっかけになった出来事でした


少し、時間が飛びまして・・・幸雪さんがこの時代に飛ばされた後

もちろんですが、幸司さんは一人で生きることになってしまいました

それを見かねた桜彦さんが幸雪さんの代わりの仕事を宛がってくれたのですが・・・

なかなかに、上手くいかなかったそうです


しかしそんな中、桜彦さんは幸司さんの才能に目を付けました

どう言えばいいのでしょう

幸司さんは、いうなれば「サポート」の才があったようなのです

彼は幸司さんへお店の手伝いから、自分の仕事の補助をするように命じました

商談についてくる、資料をまとめる、そして・・・

今後の取引先を決める会議にまでも参加したと聞いています

それからも桜彦さんは何かと理由を付けて幸司さんに相談を持ち掛けたと言います


「そしてその流れは次の世代にも引き継がれるようになりました」


次第に、その関係は「相談役コンサルタント」と呼ばれるようになりました


「冬月桜彦」と「相良幸司」

冬月銀治ふゆつきぎんじ」と「相良幸路さがらゆきじ

冬月侑香里ふゆつきゆかり」と「相良幸子さがらゆきこ


そして、今代の当主であった「冬月彼方」と今代の相談役である僕「相良雪季」


「僕と彼方さんは普通の友人関係でもありましたが、相談役としての方の立ち位置が大きいのですよ」

「なるほど・・・じゃあ、二人は友達兼相談役だったってことだね」

「はい。長々と話しましたが、一応成り立ちから話しておこうかと思いまして」

「いきなり相談役って言われても驚いたと思うから、むしろ助かったよ」

「それならいいのですが・・・」


しかし、幸司さんにも色々あったんだな

それにまた殺人か

・・・最近、殺人事件に巻き込まれた人とよく会うような


「それじゃあ、次。四季宮さんと面識はあるんだよね?」

「はい。彼方さんとの関係の延長で、時の一族の方々とも面識があります。ただ」

「ただ?」

「行方不明になっている春岡夜はるおかよるさんとは出会ったことはありませんよ。僕が産まれる前から行方不明なので・・・」


以前、幸司さんも言っていたな・・・

行方不明で、生きているのかわからない

けれど、死んでいる確率の方が高い・・・春岡の息子さんだったよね


「じゃあ、春岡さん以外とは面識があるんだね」

「はい。けど・・・四季宮さんは僕の事を覚えていないと思います」

「どうして?」

「・・・あの方、五年前に記憶喪失になったとかで」


五年前、色々ありすぎじゃないかな・・・


「理由はわかりません。ただ、十六歳の時に何らかの影響ですべての記憶を失ってしまったとかで・・・」

「すべてってどれぐらい?」

「・・・最初は、言葉も話せなかったと聞いています」

「酷い記憶喪失だね・・・だから、雪季君と面識があっても、向こうは何も知らないんだ」

「はい。僕も彼と会うのは五年ぶりなので・・・ある意味初対面の状態かと思います」

「雪季君は四季宮さんの観測の事は知っているのかな?」

「はい」

「それで、思い出せたりとかは?」


私の問いに雪季君は口に手を当てて思考する

言ってもいいのか、言ってはいけないのか・・・悩んでいるのかな


「・・・観測の弱点というものがあるんです」


自分の中で結論が出たようで、雪季君は口を開いてくれる

四季宮さんの観測について話してくれるようだ


「特殊能力でも万能ではないんだ」

「はい。四季宮さんの観測は、実は「無音映画」なんですよ」


無音映画か・・・

昔あった映画、だよね

もし、四季宮さんの観測もそんな風に見えているのならば・・・


「例えば、四季宮さんが今の私たちを「観測」したとして・・・図書室で話していることはわかるけど、その会話の内容はわからないってこと?」

「そうなります」


もしかして、メモを禁止したのはそういう理由なのだろうか

四季宮さんの観測だと、拡大縮小も自由自在・・・とか?


「もしかして、メモを禁止したのは四季宮さんに会話の内容を悟られないため?」

「はい」

「でも、写真を出してるから・・・四季宮さんに冬月さんのことを話したのでは?と思われるんじゃない?」

「会話の内容がわからないのならこっちの物です。昔、親しかったお姉さんの話をしていた。彼方さんの事は何一つ言っていないとか適当なことを言っておけば意外とバレません。今の四季宮さんは小学一年生並みですからね。鵜呑みしてくれますよ」


清々しいまでの笑顔と罵倒が輝いて見える

この子だけは敵に回したくないな・・・


「かつての四季宮さんは読唇してきたので通用しませんでしたが、今なら平気です」


悪いことをしている時の雪季君が凄く生き生きしている

年相応と言えばそうだろう

大人びているけれどやっぱり中学生。普通の子供らしい一面もあるんだなぁ・・・


「四季宮さんの観測の裏をかかなければ、冬夜さんに消されてしまうので・・・」

「消されるって」

「そのままの意味ですよ。殺されます。なので四季宮さんだけは絶対に欺く必要があります」

「四季宮さんの観測で、冬月さんの話をしていることが確認された人は・・・」

「今のところ全員消されました」

「話してよかったの?」

「四季宮さんと冬夜さんに関わる重要な人物ですから、お話しておくべきかと」


机の上に広げていたメモを四つ折りにする


「僕は彼女の相談役です。彼女の願いを叶えられる選択を模索することが役目なのです」

「・・・これが、冬月さんの為になる選択なの?」

「はい。少なくとも彼方さんの願い通りになる選択だと思っています」


手帳とメモを一緒に返してくれる

それをポケットの中に入れて、雪季君の話を聞いた


「僕は彼方さんに心臓のドナーを探してもらっていました。今はそれを・・・寺岡さんという方が継いでいます」

「・・・」

「彼方さんへ恩返しをする機会はここしかありません」


胸に手を当てて、彼は思いを述べてくれる


「三つ目の質問は、彼方さんと冬夜さんの関係ですよね」

「・・・聞きたいこと、わかってるんだ」

「なんとなくわかっていました。僕が知る限りの事を伝えます」


雪季君には最後の質問もすでに予想出来ていたらしい

雪季君はゆっくり息を吐く

そして、最後の問いに対する答えを話し始めた

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