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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
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8:猫のお言葉

「夏樹さんが魔狼ではないことはわかります」

「一応聞くけど、その根拠は?」

「にゃん」

「・・・「魔狼は、長を除いて絶滅している。長は男しかなれない。だから、女の魔狼は存在しない」とのことです」


「へえ・・・でも、その魔狼の子供かもしれないよ?」

「にゃ」

「はい・・・「人間嫌いのあの男なら、魔狼以外とは交わろうとしない」らしいです」


人間嫌い・・・まあ、自分の一族を人間に殺されていれば、そりゃそうだよね

四月に見に行った展示のことを思い出そうとするが、夜ノ森さんとの出会いとワンリーフの印象が強くて展示の事はあまり思い出せない

後でネットを確認して振り返ってみようかな


「なるほど。とりあえず根拠はわかったよ。で、三池さん。私からはどんな匂いがするの?」

「「夏樹には「風祷ふうじゅ」を施した匂いがする。特殊な香料の香り」らしいです」

「ふうじゅって?」

「にゃー、にゃにゃん。にゃん。にゃごごにゃ、ん?」

「ふむ・・・「魔狼がよく使う加護。あれは変な魔術みたいな祈りの儀式をよくしていたから、加護と言ってもお守りみたいなものではなく、身体能力を確実に強化するもの」」

「「「能力上昇の魔法」みたいな考えでいい。貴方にかけられているのは「風のように駆ける加護」。身に覚えはある?」だそうです」


「・・・確かに、足の速さは自慢できるレベルだよ」

「参考までに聞かせていただきたいのですが・・・」

「五十メートル走は六秒台ジャスト!」

「早いですね・・・」


「にゃーにゃにゃにゃにゃん」

「ええっと「その加護は夏樹自身の身体能力と相乗している。上手く使いこなせれば・・・」」

「使いこなせれば・・・?」


一瞬、雪季君に躊躇うような素振りが見えた

言いにくいことなのだろうか


「にゃん」

「・・・言わなきゃ、ですか?」

「にゃー」

「・・・言わなきゃ、絶交ですか。酷いですね、三池さん」

「にゃぬ」

「・・・これも、あの子が望んでいる未来へ進む布石・・・か。無視するわけにはいきませんね。僕は、相談役ですので」

「にゃん」

「夏樹さん。ごめんなさい。きちんとお伝えしますね」


三池さんとの間に不思議な会話が繰り広げられたが、雪季君はそれで一つの決心がついたようだった

ゆっくりと口を開く


「三池さんは「星月悠翔の動きを見極め、避けるぐらいはできる可能性がある」・・・と言っています」

「本当!?」

「にゃご」

「・・・「本当。ただ、攻撃はダメ」」

「にゃんごごろろろろろ」

「・・・「貴方の武器は相性が悪い。だから、もしやりあうなら避けるだけに留めて」とのことです」

「わかった。約束する」


「・・・「それでいい。私はこの船をしばらく探索するよ」え、三池さん別行動をされるんですか?」

「にゃご」

「・・・「当然。貴方達は貴方達でやるべきことがある」やるべきこと、ですか」

「にゃにゃん」

「・・・「それじゃあ、また夜にでも。今はやることないからネズミ狩りでもしてこの船に貢献してくるわ・・・じゃあまたね」だそうです」


そう言って、三池さんは部屋を飛び出し、どこかへ行ってしまう


「・・・面白いお友達だね」

「ええ。僕が退院してから初めて出会った友達なんです。猫又、なんですけどね」

「やっぱりあの尻尾・・・」

「はい。妖怪なんですよ、三池さん」

「・・・すんなり言うね」

「僕の家、あんなだから古いのを好んだ妖怪がよく現れるんです」

「なんだか、ここ三ヶ月で非日常に足を突っ込んでる気がするよ」


「夏樹さんは神社の子ですが、そういうのは見えたりした経験は?」

「記憶にある中ではないかな」


私の話を聞いて、雪季は納得したように頷く


「・・・夏樹さんにもそういう素質はあるはずです。三池さんが見えたということはそういうことですよ」

「な、なるほど・・・」


全ての妖怪が三池さんみたいに可愛い感じではないだろう

大きな骸骨とか、頭部が異様に長いお爺さんとかと遭遇したらどうしよう

それに、血だらけの幽霊なんて見たくもない

想像しただけで背筋が凍りそうだ

自分も特殊な立場だということに少しの嬉しさを感じるが、不安というか心労が増える気しかしない


「今回は特殊な事例でしたけど、今度はちゃんと、普通の動物とお話している姿を見せたいですね」

「・・・うん」

「未来の探索、能力を使う絶好の機会ですので頑張りますよ!」

「倒れない程度にね」


少し興奮気味の雪季君

元気なのはいいけれど、元気を出しすぎて倒れたりしないか心配だ

今日は目を離さない様にしよう


「はい!あ、そうそう、夏樹さん」

「何かな、雪季君」

「昨日の「手書きの紙」のお話、僕にも聞かせてくれますか?」

「もちろんだよ。四季宮さんに見せようと思っていたから原本もすぐに出せるよ」


昨日の雪季君は薬の効果と疲労で早めに部屋に帰ってしまったので手書きの紙に関しては何も知らない状態だ

雪季君の意見も聞いておきたい


「雪季君にも見てほしい。手書きだし、文字の心当たりとかあればいいんだけど・・・」


そう言って私は四つ折りにして手帳に挟んでいた「手書きの紙」を取り出す

そして雪季君の前に用意した


「え・・・・」


雪季君の表情が変わる


「なぜ、なぜ・・・こんなところに・・・?」

「雪季君、何か心当たりがあるのかな?」

「あります。この字は、間違いなくあの人の物です・・・!」


雪季君は紙を握り締めて告げる

その表情は嬉しそうな表情ではなく

恐怖に染まった、青白い表情だった

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