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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
29/83

3:テーブル上のルール

部屋から出ると、幸雪君と雪季君が階段前で待っているのが見える

二人も私の姿が見えたのだろう

私は二人の元に駆け、合流した


「お待たせ」

「いえ。僕らも先ほど来たばかりなので」

「案内では四階だったよな。早速行こう」

「あ、あのさ」


先程の紙の件を聞こうと思い声をかける


「二人のところの案内はどんなのだった?」

「どんなのって・・・船内の見取り図と、星月が言っていた時間旅行のルールが書いてある紙だったぞ」

「・・・手書きで二枚以上?」

「いいえ。手書きではありませんでした。幸雪さんもですよね?」


幸雪君と雪季君は不思議そうな表情を浮かべている

やっぱり、私だけみたいだ


「・・・私の部屋にあった時間旅行のルールの紙・・・二枚あったんだ」

「・・・詳しい話は食後に聞く。この件はまだ俺たち以外の誰にも言うな」


幸雪君からそう言われ、私は無言で頷く


「・・・食後はどうしますか?」

「夏樹さん。部屋に入れてもらってもいいか?」

「構わないよ」


もしかしたら、私の部屋だけ二人と異なる点があるかもしれない


「決まりだな」

「先にご飯にしましょう。どんなご飯なんでしょうね・・・?」


話をまとめて、何事もなかったかのように振舞う

階段を上がり、四階へと向かう

見取り図では、左側が食堂だ

そこの扉を開けて中に入る


「探偵さん」

「正二か」

「はい。兄さんが来るまで僕がここの担当です。席に案内しますので、どうぞ」


食堂にいたのは正二さんだった

私たちは彼から用意されている席へと案内される

食堂内には四人席が四つある


「探偵さんはこちらのようです」


どうやら、幸雪君だけ別席のようだ


「俺だけ離れ離れ・・・?」

「すみません・・・決められた席のようでして・・・お二人はこちらです」


続いて、私たちの席に正二さんは案内してくれる

その先には・・・


「んぐ?」

「夜ノ森さんだ」


先に食事を摂っていた夜ノ森さんが座っていた

ハムスターのように頬を膨らませる姿に笑いが零れそうになる・・・が、雪季君の表情はなんというか引いていた


「なんでそんなみっともない食べ方するんです・・・?」

「むぐ?」

「あの、正二さん。この席・・・どういう基準で決めたのでしょう?」

「さあ・・・悠翔君が決めたので何とも」


星月さんか

あのメモといい・・・何か知ってそうな気がするが、理由を聞きに行きたくないな


「ええっと、一応・・・これがこの食堂内での席の一覧となります!」


正二さんが差し出してくれた紙には、食堂内の見取り図と名前が書かれている


一番のテーブルがここのようで、そこには夜ノ森さん、私、雪季君、四季宮さんの名前が書かれている

二番のテーブルには、一葉さんの名前以外書かれていない

三番のテーブルには、幸雪君と冬夜君の名前が書かれている

四番のテーブルは名前の一文字だけ書かれていると言う点から、正二さん、筧さん、朝比奈さん、星月さんのテーブルだと思われる


これも後でメモに取っておこうかな


「ありがとうございます、正二さん」

「いえいえ。あ、食事を持ってくるので今しばらくお待ちください!」


メモを返した後、正二さんは食堂奥にある厨房へと入っていった

私と雪季君は自分の名前が書かれた席に座る

・・・よりによって夜ノ森さんの隣か

座りながら食事はどんなものなのかと思い、テーブルの上を見る

そこには和食御膳が広がっていた


「・・・美味しそう」

「箸しか使えない俺の為に筧が用意してくれた。他は一葉みたいな食事らしいぞ」


夜ノ森さんが指さした先には一葉さんが座って食事をしている

背筋を伸ばし、綺麗に食べる姿はとても綺麗で、目を奪われた


「・・・ナイフとフォークが並んでる」

「まさかのフルコースですか・・・テーブルマナーはあまり好きではないんですよね」


好きじゃないってことは、一応テーブルマナーわかるんだ・・・

私はテーブルマナーとかそういうのに触れたことがない人生を歩んでいるため、どうしたらいいか考える

・・・私もお箸オンリーの和食御膳食べたい


「正式な場ではありませんし、気を抜いて頂きましょう」

「・・・ソウダネ」


雪季君のフォロー?を受けて、正二さんが来るのを待つ


「お待たせしました!」


最初に出されたのは前菜らしきもの。二人分だ

なんだろう、この四角いの・・・お肉の炒め物かな・・・

しかしどうやらフルコースだけは避けられないらしい


「それじゃあ、頑張りましょうか」

「・・・はい」

「・・・がんば、新橋さん」


隣で夜ノ森さんは悠々とお箸を使って食事を摂る

私も頑張ろうと思って、適当なスプーンを取ろうとする


「夏樹さん。カトラリーは外側から使ってください。後先大変なことになります」

「かと・・・え?」

「スプーン、フォーク、ナイフのことです。一番端に小さめのフォークとナイフがありますよね」

「これかな?」


外側に置いてあったフォークとナイフを手に取ると、雪季君は小さく頷く


「はい。それが前菜用です。食べ方はともかく、カトラリーの順番だけは守った方がいいと思います」

「わかった。ありがとう、雪季君」

「いえいえ」

「それとなんだけど、この上にあるのは?」


ついでに聞いておこうと思い、なぜかカトラリー類で一つだけ離れておいてあるスプーンを指さす


「これはデザート用のスプーンです。最後に出てくると思いますよ」

「なるほど」

「さて、そろそろいただきましょうか」

「そうだね」


両手を合わせて、「いただきます」と言い食事を始める

前菜、スープ、魚・・・途中のシャーベットはデザートにしては・・・早くない?


「ねえ、雪季君」

「ソルベは口直しのシャーベットですよ。メインはこれからです」


聞こうとしたことを先に答えてくれる

口直しだから量が少ないのかな


それから、お肉

メインディッシュというのだろう。凄く美味しそうだ

雪季君の姿を真似つつ、お肉にナイフを添えていく

魚とお肉が同時に食卓へ出るなんて初めてだ

いつもはどちらか一つだけだし、なんだか贅沢をしている気分になってくる


お肉の後はサラダ

最初に食べたかったな・・・とか思いつつ、口に入れる

凄くシャキシャキしているキャベツだ

まるで取れたてのような・・・

しかし何というか、順番が決まっているのは非常に面倒くさい

好きな順番で、好きなタイミングで食べたいと内心思う


「・・・食う順番が決まってるのは大変だな」

「そうだね・・・」


御膳を食べ終わった夜ノ森さんは私に同情の目を向けてくる

口に出した記憶はない。もしや、夜ノ森さんは心を読んだのか・・・?


「夏樹さん、手が止まっていますよ?どうされたんですか?」

「・・・何でもないよ」


初日の食事は、少しだけ学びつつ美味しく頂けたと感じた

しかしやはり堅苦しい

順番無視して食べたい

もう一生、フルコースは遠慮したいなと感じつつ、私はデザートが来るのを待った

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