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針指す時の終末日  作者: 鳥路
雪季編「死にたがりと50%の可能性」
28/83

2:涙の滲んだ二枚の紙

二階から階段を上り、三階へと向かう途中

雪季君は少し歩いては首を撫でてを繰り返していた

まるで、自分の首に違和感があるような・・・


「どうしたの、雪季君」

「いえ・・・先程から首が痛くて・・・」

「大丈夫?」

「何となく違和感があるぐらいですから大丈夫です。明日には収まっていると思います」

「痛みが続くようだったらすぐに言うんだよ。湿布、持って来てるからね」


部活でたまに痛めるときがあるので、鞄の中にいつも湿布だけは常備している


「寝る時までに痛みが引かなかったら、お願いしてもいいですか?」

「もちろん。あまり無理しないようにね」

「はい」


残りの階段を上り、三階へとたどり着く


「左側に一号室から三号室、十一号室から十三号室があります」

「中央には四号室から七号室が見えるな」

「じゃあ、右側が八号室から十号室、十四号室から十六号室だね」


部屋に帰ったら見取りも含めてメモに書いておこう


「僕たちは自分の部屋に荷物を置いてきます。」

「ああ。置き終えたら、食事にしよう。終わったらここに集まると言うのでどうだろうか?」

「そうだね。それじゃあ、また後で」

「では、途中まで一緒に行きましょうか」


幸雪君と雪季君と別れ、私は筧さんと共に左側の道へ進む


「・・・先ほどは悠翔が申し訳ありません。後で言って聞かせておくので」

「は、はい・・・」


朝比奈さんの時も思ったが、彼は言って聞くような相手なのだろうか・・・

いや、筧さんのいうことなら聞くのかもしれない。そうだと、信じたい


「しかし、怪我がなくて何よりです」

「ええ」


二号室と十二号室の間に辿り着く


「早瀬様の様子、見ておきますか?」

「・・・いいえ、今は眠っているでしょうし今日のところは辞めておきます」

「そうですか。新橋様もお疲れですし、今日はゆっくり休んでくださいね」

「お気遣いありがとうございます」

「いえ。それでは私はここで」


そこで私たちは行動を別にした

カードキーで二号室の鍵を開ける

扉はスライドドアのようだ。なんだか、近未来的


部屋の中に入ると、そこは暖かい雰囲気の部屋が広がっていた

ホテルみたいな部屋を想像していたが、なぜか簡易キッチンもついている

トイレもお風呂も完備・・・何というか1LDKだこれ

全室これなのかな

この飛行船はアパートくっつけて飛んでいるってイメージでいいのかな

くじ引きで部屋を決めたわけだし・・・部屋の作りはすべて一緒だと思うし・・・・

何というか、凄いなこれ!


まるで、ここで生活する前提で作られているような気さえする部屋を確認し終えた後、机の上にある紙を見つける

そこには時空飛行船の見取り図や、時間旅行のルールが書かれていた

見取り図の方は持ち歩いておこうかな。迷ったら困るし


一階には図書室、二階には先ほどまでいたホール・・・ここ、三階が客室

四階には食堂と倉庫、星月さんの執務室?というのがあるらしい

五階には操縦室と植物園があると書かれている

・・・三ヶ月間、暇にならないぐらい楽しそうだな


時間旅行のルールが書かれた紙には、星月さんが言っていたことが書かれていた他に補足みたいなものが書かれていた

しかし、なんだろう・・・紙には走り書きのように書かれている

入念に準備をしたものとは思えない


「時間旅行における制限」

・未来は変えられない確定したもの

→もし未来を見に行く場合は、自身に迫る運命を受け入れるしかない?

→その未来は本当に、自分が生きている時間軸から繋がる未来なのかは不明


・過去を変えてはいけない

→運命を捻じ曲げてしまえば、それ相応の犠牲が発生する

→一人の命を救った場合、推定百人の命が犠牲になるようだ


・途中で旅を終えてはいけない

→それも運命を変える行為に相当

  遠足の時に言われていた「おうちに帰るまでが遠足です」みたい

  そんな、面白い話ではないけれど


・時間旅行の制限は「九十日間」

 →九十日間の制限は、飛行船のエネルギーチャージ期間でもある

  時間を超えるので、それ相応のエネルギーが必要となる

  現状、短縮は不可。時間回復しか望めない


・時間旅行の制限

 →時間への影響を考慮して、一時間軸に一回が限度と考えられる

  繰り返しは、悠翔に全面的に託す。あの人には辛いことばかり押し付けてしまう


二枚目に続くようだ

私は紙をめくって、続きを呼んだ


・記憶の引継ぎ条件

 →現時点の課題。これを十六人全員が達成しなければ目的は達成できない

  私がいない間は、悠翔にその方法を探してもらう


・「糸」の発動条件

 →全時間軸において、糸の最適合者に糸を委譲している

  糸の覚醒条件は「願いの成就」

  運命の補正がかかるなら、次の時間旅行には魂の片割れが現れるかと思われる


・十六人の回収

 →「終末」の消失に必要なのは、修の観測だと十六人

  一人ぐらい欠けても最悪問題はないが、冬夜と巴衛は欠けてはならない

  巴衛は少しでも接し方を間違えると息をするように死ぬ。精神的な問題?

  冬夜は私が生き残っていた場合、生存する未来はあり得ない

  全員揃って三月十五日を迎えるのは不可能と考えられる

  それならば、私だけが犠牲になるべきだろう

  私以外の犠牲を出さず・・・世界は救われるのだから


「・・・なにこれ」


紙に書かれていたのは、時間旅行のルールだけじゃない

・・・時間旅行の、根本的な目的なのではないだろうか


最後の方の文字は滲んでいる

これを書いた「私」は、泣きながら書いたのかな

それにこの紙には星月さんの名前だけではなく、四季宮さんと朝比奈さん、冬夜君の名前が書いてある

星月さんはあまり話しかけたくないと言うのが正直な気持ちだ

朝比奈さんは忙しいだろうし・・・だからと言っていきなり冬夜君と四季宮さんに相談してしまっていいのだろうか

・・・この紙、没収されたりしないだろうか


「・・・幸雪君と雪季君に相談しよう」


二人にも情報を共有してから、この紙の内容をメモに写して・・・四季宮さんと冬夜君に相談しよう

きっと、それがいい

わからないことばかり書かれている紙をポケットに入れる


それから、カードキーを持っていることを確認してから部屋を出た

三階の階段前で待つ二人に会う為に

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