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針指す時の終末日  作者: 鳥路
夏樹編序章「明治からの客人と時間旅行」
1/83

1:1999回目、始まりの前の一つの終わり

繰り返し

繰り返し、また繰り返し

何度繰り返せばいいのやら・・・わからない


「・・・もう、疲れちゃった」


指先一つ動かせないほど疲れた

私はあの子にもう一度会いたかっただけなのに

私はあの子の笑顔をもう一度見たかっただけなのに

どうして、こうなったのだろう


泣き虫なあの子が泣く姿を思い出すだけで、胸が痛くなる

私はあの子を苦しめたいわけじゃない

何度も、何度も・・・あの子と生きる未来を求めて繰り返した

四肢を失っても、目をつぶされても・・・繰り返しを続けた

その結論が「私がいなければ、あの子は笑って生きられる」だなんて


「・・・それがわかっただけでも、繰り返しの価値はあったわね」


ゆっくりと私の身体が溶けていく

元々、限界を超えた時間旅行をしていたのだ

これはその代償だ

消えるのも・・・仕方が


『真冬』


脳裏に浮かんだのは、あの子ではなく「彼」だった

代償でボロボロになった私を拾って、生かしてくれた彼

あの子によく似た彼は、今も待ってくれているだろうか

こんな私でも幸せにしてみせるといってくれた

ずっと待っていると・・・言ってくれていたけれど


「・・・ああ、そうか、私たち。帰れないのね」


それに気がつかない訳がなかったはずなのに、きっとその事実から目をそらしていたのだろう

気がついたときにはもう、体が半分以上消えていた

帰れないことを理解し、目を閉じる

私のことなんて忘れて、幸せに生きてほしいと願うことしかできない

今の私には・・・それぐらいしかできないのだ

私は今までの記憶のすべてを失い、「時渡り」ができないようになるだろう


悔しい

悔しいけど、ここまでだ

ゆっくりと私は私ではなくなっていく


「ごめんなさい・・・戻れなくて」


後悔ばかり抱えたまま意識が欠けていく

終わりを悟った私は、目を閉じる

そして「私」だった私は、どこかへ消えてしまった


同時にカウントも動く

確認してみると「1999」から「2000」へとなっていた

また一つ、世界が変わる音がした

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