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異世界での乾燥対策

 わたし、田神奈央。小学三年生。

 今日、新年を祝っていたら来客があり、わたし達は異世界に来ることになった。

 着替えると時間がかかるので、振り袖のままで――現在、お餅が入った紙袋を持ったお婆ちゃんとおばさまの住んでいる異世界にいる。とは言え、勝手口を開けたら外の筈が部屋の中だったので、今一つピンとこないけど。


「御使い様には、役職に就いたら会えると聞いていました……そうしたら今日、この食糧庫で途方に暮れていた私の前に、本当に現れて賢者様のところに導いて下さったのです」


 おばさまの言葉に、わたしが抱いていたミケがニャアと返事をする。


(御使いさまって、ミケのこと? すごい呼ばれ方……あ、でも、こうして異世界を行き来してるなら確かにすごいか)


 そう納得していると、おばさまがお婆ちゃんとわたし、それからミケに頭を下げた。


「……そのご恩返しとして、魔法使い様達の部屋に案内させて頂きます」



 魔法使いと言うので、漫画や小説で読むような専用の建物にいるのかと思っていた――過去形なのは、噂の魔法使い達の部屋が王宮に用意されていると聞いたからだ。


「魔法使い様達は……三人いらっしゃるのですが、次から次へと思いがけない魔道具や知識を口にされるので……保護の為に、王宮で暮らして頂いているのです」

「まあ、そうなの」


 お婆ちゃんは穏やかに相槌を打っているけど、わたしとしては保護の他に監視の目的もあるんじゃないかなって思う。後から困ってはいるけど、空調とか料理とかは確かに異世界だと画期的だろうし、他の国とかに行かれたら大変だものね。


(お城の中、暖かいし……クーラーって聞いてたけど、暖房機能のあるエアコンだったのかな?)


 そんなことを考えながら歩いていると、最初は使用人らしき人達にチラチラ見られたけど――人気のない一角に来て、とあるドアの前で止まった。そのドアを、おばさまがノックしようとする。


「ちょっと!? せっかくお餅用意してくれたのに、怒鳴るなんてあんまりじゃない!?」

「うるさいなっ! カビらせたら意味ないだろっ!」

「二人とも、落ち着いて……ゴホッ……」


 聞こえてきたのは女二人、男一人の声だった。

 勢いに怯み、気を取り直しておばさまがノックしようとしたけど――その前に、お婆ちゃんがドアの向こうに優しく声をかけた。


「……お部屋、乾燥しているんじゃない? ちょうど梅酢があるから、薄めてうがいをしたら楽になるわよ?」


 その声にピタリ、と部屋の中の言い争いが止まり、しばしの沈黙の後にそっとドアが開く。


「えっ……お婆ちゃんと、座敷童?」


 顔を覗かせ、わたし達を見てそう言ったのは――日本人じゃなく、赤毛をツインテールにした高校生くらいの女の子だった。

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