8勢い余った結果
白いシーツに血が滲んでいる。
ハッキリ言おう。ヤッた後が痛い。ヒリヒリというか、ジンジンというか。
我慢できない程ではないけど。
体の中だから、鍛えようが無い所なので(当たり前だし、何馬鹿な事言ってるんだって思うけど。)とにかく、地味に痛い。
身体を鍛えているから?腰が立たないとかはないけど。
初めてだから?
これって、慣れるの??
色気って何だろう。自分が覚えている初めて、が、二日酔いの最中だなんてひどい思い出になりそうだ。
ああ。頭痛い。吐かないけど、胃がムカムカする。よく耐えた、私。
事が終わって、しばらくしてからカイウスは「待ってろ」と言って、出て行った。
ここ。どこだろ。
知らない部屋。
大きなベッド。
調度品は高そう。
1人になった部屋で、考える。
待って。私の服。
ベッドサイドの椅子に、昨日着ていたダークブラウンのドレスが目に入る。
そうだった。私、珍しくドレスとか着たんだった。
ああ。どうしよ。途中から、全然記憶無いわ。
髪も解けて結われてない。
最悪。
どうしてこんな事になったのかも、思い出せない。
身体がベタベタしてて、ちょっと気持ち悪いけど。真っ裸とかないな。うん。ドレス、着ようかな。
そう思ってベッドから降りたその時、部屋がノックされた。
慌てて、ベッドにあった掛布を手に取る。
身体に当てるのと同時に、カイウスが戻ってきた。
一緒に来たのは、メイドさん??
「お嬢様はお任せ下さい。カイウス様は一度、ご退出を。」
そう、女性が言うと、カイウスは頷いて、私を見ると、ニッと笑って手を振って出て行った。
状況が、全くわからない。
「ラデン家メイド、サーシャと申します。お嬢様、今から湯あみの準備をさせていただきます。そのままではお身体がお冷えになります。申し訳ございませんが、しばらくベッドでお休みになってお待ちいただけますか?」
ちょっと待って。今、ラデン家って言った?って事は、ここ、副団長実家????
溜め息を押し殺して、
「お願いします。」
と言う。
それ以外、何を言えばいいのよ。
「お嬢様、お気になさらないでくださいませ。私は使用人でございます。すぐにご用意致します。まずは、お待ちの間に、薬湯をご準備しております。お口に合うかわかりませんが、お酒の辛さを和らげますので、よろしければどうぞ。」
そう言って、薬湯をポットからカップに注いで私に手渡すと、隣室へと彼女は去った。私は仕方なくカップを持ったままベッドに戻った。
って事は、この部屋、カイウスの部屋なのかな?
飲み終わる頃、直ぐに彼女は戻り、隣室の浴室に通される。
暖かい湯を浴びて、浴槽に浸かるだけで、ホッとする。
「お身体、痛みませんか?」
そう言われてみると、明らかに情事の跡だとわかる皮下出血が身体中に点在している。
うわ。こんなの見られるなんて、何て恥ずかしいの。
「大丈夫。」
ちょっと頭に血が上った感じはあるけど。お風呂で温まった事にしてほしい。
「マルル様。カイウス様から、この後のお召し物も言付かっております。こちらで準備させて頂いておりますが、宜しいでしょうか?」
「お願いします。」
ああ、もう、なるようになれ。
騎士団生活が長くなると、自分で何でもする事に慣れて、普通の令嬢みたいにお世話してもらう事が減る。
元より、私は子爵家だから、そんなにメイドに湯浴み中まで張り付かれた事は無い。
慣れないなぁ。
そう思いながら、されるがままに洗われる。
控え室に年嵩のメイドがドレスの用意をして待っていた。
いかにも、高そうな生地のブルーのドレス。
イブニングドレスと違って、首元まで覆うデザインで、露出が少ない事にホッとする。
そして、着てから随分サイズが合っている事に驚く。
「こちらのドレスは、リーン様からという事でございます。」
はっ???
意味がわからない。
昨日、連れていかれた服飾店で用意されたという事??
待って先輩。本当、どういう事ですか。
2人がかりで着飾られる。
いやいや。
うん、私、今日、休みだ。職場に迷惑かけないけど。休みの朝に、なんでこんな事になっているんだろう。