5やっと自覚した気持ち
とても短めです。
卒業時に合わせた騎士団入団試験に合格した。
所属は、第1団だった。
やはり、というか。想定内だ。貴族家出身で、女性騎士となれば、1団で要人警護が多いからだ。
カイウスと一緒の騎士団。
未来は明るいと思っていた。
でも。それは間違いだった。
仕事は楽しい。訓練は厳しいけれど。
でも。
でも、1番辛かったのは、カイウスが騎士団の詰め所を出て仕事をするたびに、令嬢に囲まれ、笑顔で会話をしている事。
カイウスを先輩というだけでなく1人の男性として見ていた。令嬢に囲まれる彼を見て、そう、やっと意識した。
カイウスは両親からも見合いを勧められているようで、時折、女性と付き合っていた。
そして、今度、婚約するらしいと聞いた。
わかっていた。
可愛い令嬢になんかなれない。
だから。だから騎士になったんじゃないか。
私の居場所を見つける為。私らしくいられる場所を見つける為。
キリキリと痛む胸。
どうしてだろう。
私らしくと思っていたのに。
出会った時は。まだ私は子供で。
彼は優しいお兄さんで。
いつ。
いつ、この心は恋をしていたのだろう。
私の手は令嬢らしくない、硬く節ばった手。
母親譲りの金髪も、訓練で日に当たり、どんなに手入れをしてもパサついて。
皮膚も乾燥して。
日焼けして、少しシミも出来て。
馬鹿みたい。
私。
何やってるんだろう。
もう、絶対に戻れない。やり直せない。
彼の横で守られるような、可愛らしい令嬢になんてなれない。
違う。違う。
彼と結婚したくて騎士を目指したんじゃない。
間違えるな、私。
騎士として、横に並び立つんだろう?
凛として、カッコイイ女になるんだろう?
そう思うのに、涙が出てくるのはどうしてだろう。
今日だけだ。明日からは、もう泣かない。