4訓練と再会
3年になった。
騎士科では、選択講義の中に、騎士団実技がある。
全ての者が選択する科目だ。
そこで、実際の騎士団員と手合わせしてもらうのだが。久しぶりにカイウスに会った。
「マルルー。久しぶりじゃないか。お前、やっぱ、デカくなったなぁ。」
キラキラした笑顔で、言われる。彼は、ラデンの名に恥じぬ活躍で、騎士団に入っても、とても人気があった。
実力も申し分無く。
「お久しぶりでございます。」
ぎこちなく、礼をする。
元々、家格差もある。年も上。騎士としても先輩。
いきなり、直接声をかけられて驚く。
「騎士科に入ったっては聞いてたんだ。でも、全然、家のパーティーに来なかったろう?姉さん達には会ったけど。どうしてんのかなって思ってたんだよ。」
まさか。覚えてもらってたなんて、思ってもいなかった。
「後から手合わせしような。」
にこやかに笑って、手を振って教官の所に行ってしまった。
急に、私の周りがザワザワとなる。
「マルル。カイウス様とお知り合いだったの?」
ルルーが尋ねる。
「ええ。でも、お話したのは1度だけよ。私、父がラデンの出なの。」
「ええー。全然知らなかった。」
ちょっと膨れっ面のルルー。
そうだ。カイウスはとても人気だ。
「皆には話してないもの。私は子爵家だし、もう縁遠いの。正直、会ったの5年前よ?覚えてくださってるなんて思ってなかったわ。」
皆が、話しながらも、私とルルーの話しに聞き耳を立てているのがわかる。
家の力なんて無い。皆が憧れる人から声をかけてもらえたのに、嬉しさよりも、戸惑いの方が大きい。
数分で集合がかかり、訓練が開始された。
1対1でカイウスに挑んでいく。殆どの者が
一太刀も入れる事なく、吹っ飛ばされていく。
強い。
圧倒的な力。
吹っ飛ばしながら、「踏み込みが甘い!」とか、「剣を持つ手に余計な力を入れすぎ!」とか、1人1人に言葉をかけている。
凄い。
もちろん、ラデンの男だ。私の父と同じように、身長は190を越している。
がっしりとした体躯。ラデン特有の炎を纏う赤い髪。
2合打ち合った者はたったの2人。
私の番はもうすぐ。
せめて、2合、打ち合いたい。
父と手合わせする時は、どうしてた?
ラデンの男のクセは??
「次!」
考える間もなく順番が来る。
父との手合わせだとしたら、踏み込みは、こうか?
身体が無意識に動く。
カンッ!
打ち合った木剣の音が響く。
次が来る!
慌てて身を翻し、間を取る。
ブンと木剣が空を切る音。
「避けたか。」
楽しそうなカイウスの声。
踏み込んで、斬りかかる。
ガッという音と共に、力で飛ばされる。
「まだまだだな。体格差があるんだから、正攻法で踏み込んでどうするんだ。力で押し負けるなんて明白だろうが。もっと早く動いて四肢を狙え。」
男子より力の弱い私がカイウスの剣を一振りかわした事は、周囲に驚きを持って見られた。
その授業後から、皆が積極的に剣技の練習に誘ってくれるようになった。
やはり、どことなく、女性という事で遠慮していたらしい。
カイウスが遠慮無しに私に木剣を振るい、それを私が避けた事で、訓練相手として認められた感じだった。
そうして、訓練に明け暮れ、あっという間に1年が過ぎて行く。
日本ではないのに、一太刀入れたいとか、日本的な表現が先に思い浮かんで、異世界物って難しい。
おおげさ、という表現も大袈裟と、書きますよね。袈裟とか完全に仏教ですし。
日本語って、仏教用語から来てる所が多くて、明らかな表現は避けるようにしてるんですが、難しいなと思います。