2騎士になりたい
あのパーティーから1ヶ月。
ずっと考えていた私が決断したのは、女性騎士になりたいという事。
でも、母は普通にお嫁に行って欲しいみたいで、私と歳が近く、釣り合いの取れる男の人の名前を覚えるように言われる。
正直、興味無い。
自分の気持ちが良くわかっていなかったが、普通の令嬢は無理だっていう気持ちは日増しに強くなった。
パーティーの時に見た、ラデン家の女性騎士がとても格好良く思えた。
図書室で騎士について調べる。
そして悩む。
結構、狭い門だ。背丈があるからと言って、なれるものではない。
でも、なりたい。
とうとう、ある日の夕食時に、女性騎士になりたいと家族の前で宣言した。
結果は最悪だった。
母が怒り出し、姉達が馬鹿なんじゃないの?という目で私を見る。
ダメなのか。
私は、その時、精神的にとても子供で、どうしてダメなの?何故反対するの?と母に詰め寄った。
「騎士になったら、人を切ることもあるのよ。あなたはその覚悟があって?」
苦しげに言う母。
母の言葉に強いショックを受ける。そうか。そう言う事もある。わかっていても、実感は無かった。母の反対は、私の為を思っての事だ。
ボロボロと涙が落ちる。
じゃあ。私はどうしたらいいのだろう。
普通の令嬢なんてなれない。
私は。
私は…?
その時、黙って聞いていた父が、急に私に声をかけた。
「マルル。それでもやりたいかい?」
泣きながら父を見て頷く。
背筋を伸ばして、顔を見て。
言わなきゃ。
「お父様。騎士になりたい。」
「マルルが考えている10倍は大変なんだよ。」
「それでも、やりたい。」
「ラデン直系では、武の家系だから、女の子も訓練を受ける。だが、訓練開始は5歳前後で、その子の素質を見極める。正直、訓練を開始するには、遅いんだ。」
騎士である父の言葉は重い。
「遅いの?もう、なれないの?追いつけないの?」
尋ねながら、また、涙が溢れる。
「どうやら、大分、本気のようだよ。どうだろう?素質を見極めるまで訓練をするのは?素質が無ければ、そこで諦める。素質があれば続けるという事にしないか?」
父が母に言う。
「そんな…。そんな大変な思いを、私はさせたく無いわ。」
「でも、この子の人生だからね。親が決められる事なんて少ないんだよ。大変かどうかは、本人が感じる事だし、そこで挫折しても、本人の糧になるだろう。」
「もう、貴方はお決めになったのね?」
「いいじゃないか。可愛い末っ子の願いなんだよ。」
そう言って、優しく母に笑う父。
「わかりましたわ。では、マルル。約束できる?お父様が騎士に向いてないと判断された時は、騎士の道は諦めて、令嬢として頑張る事を。」
「約束する。」
そう言った私を、母が仕方ない子ねぇ、みたいな目で見る。
「女の子なんだから、顔に怪我しちゃ駄目なのよ。」
「顔だけじゃ無いわよ。体もよ。」
2人の姉達が口々に言う。
みんな心配してくれてるんだ。
また、ボロボロ涙が出てくる。
「そんなに泣き虫でどうするの?頑張るんでしょ?」
長姉の言葉に、
「うん。」
と、泣き笑いで返事をした。
カイウスが溺愛系ではないし、マルルは自立した女性を努力して目指す感じです。
この話を書き始めたのは、思いつきでもあったのですが。ボンヤリとした設定を確固な物にしておきたくて。
当初、仮の題名は、互いの背を預けられる者に、でした。
互いに背中を預けられる程の信頼と愛がメインテーマです。
幼少期から書き始めたので、ちょっと甘くはないですね。
誰しも、初めから完璧ではない。
だから、マルルの努力が、報われる結果を書きたいなぁと思ってます。




