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1出会い

ありきたりな話かもしれない。でも、マルルは一生懸命。不器用な彼女の生き方と、恋。

令嬢の嗜みは得意なのに、男性並みの身長に悩む少女時代から始まります。

1話毎は、普段より文字数が少なめです。

話が進むと少しは甘くなりますが、ビターです。

運命なんて、ありきたりな言葉では表現出来ない。


私はその人と初めて会った時に、私の全てを持って行かれてしまったのだ。


私はマルル。


大して裕福では無い子爵家の3女。


父は武の名門、ラデン公爵家の先代当主の子。今の当主とは従兄弟になる。


父は4男で、子爵家に婿に出た形だ。

父は騎士団に所属している。ラデン家の流れを汲み、優しく厳しい。



私が、その人に会ったのは、10歳の時。ラデン家の春のパーティーに父と参加したからだ。


次期ラデン家当主になるであろう、カイウス・ラデンと長姉は同い年。次女は2つ下。私は5つ下。


お分かりだろう? 私達は、貴族らしく、カイウスとの顔合わせに連れて来られた。

正直言って、私はオマケみたいなものだったが。


私は10歳ながら、2人の姉と同じ母譲りの顔立ちと髪色は手に入れたものの、体格は父譲りだったのだ。


武の名門、ラデン家の血。


身長158センチ、160センチの愛らしい姉達と、10歳の私の背丈は変わらなかった。


もう、あと数年すれば、きっと170センチは届くだろうと父に言われた。


同い年の子と並ぶと頭1つとび出る自分の身長が大嫌いだった。


可愛らしい令嬢達。自分には無いもの。そんなに高身長になったら、お嫁さんに貰ってくれる人なんて、いないんじゃ無いかって思ってた。


女の子らしい事は実は得意だ。裁縫、刺繍、絵、楽器はハープを嗜む。


でも、虚しい。


似合わないって暗に言われている気がする。


だから、こういうパーティーなんて参加したくなかった。


帰りたい。


父と姉達と共に挨拶をした後は、会場の隅っこで料理を食べて庭に出た。


そこで、私は彼に会ったのだ。


そう、彼は今日の主役のカイウス・ラデン。


「ん? どうした?」

庭に出た私に、まるで兄弟に声をかけるように自然に話しかけられる。


「えっ…?」

どうした? って聞かれても。何で、この人がここにいるんだろう。主役でしょ? さっきまで、人に囲まれて話してるのを遠くから見た。


この家の人に帰りたいとか言えないし。

パーティーが苦手なんて、令嬢として言っては駄目だと言われてるし。


困った私に、にこやかに彼は話しかけてきた。

「俺は疲れたから抜け出して来た。お嬢さんも疲れたんだろう? 悪い、人が多すぎて名前覚えてないや。父親同士がイトコだっただろ?」


「マルル・ヤドーです。」

「ああ、そうだった。ヤドー家のお嬢さん。マルルちゃん、姉さん達と比べたら、ラデンの血が濃く出たんだね。俺の妹と似てるよ。身長伸びるね。」


悪気無く言われる言葉に、胸が張り裂けそうになる。


「あ…はい。」


「もっと、背筋伸ばせよ。猫背になったら、婆さんみたいになるぞ。俺の祖母、ラデンの血が強いから175センチぐらいあるけど、いっつも背中に棒でも刺さってるんじゃないか?ってくらいシャンとしてて、カッコイイぜ。」

ポンっと背中を押され、頭を撫でられる。


「はい…。」

何を言えばいいのかわからない。


ただ、自分が嫌だと思っていたもの。欠点だと思っていたものを、他人に肯定されたのは初めてだったのだと、後から気がついた。


「おい、カイウス。戻れ。主役が居なくなってどうする。」

急に、1人の男性が現れた。


驚いた。ああ。この人知ってる。リオン・グラート。とっても頭いいって人気の人だ。姉達がキャーキャー言ってた。


彼は、私を見て言った。

「ヤドー家のお嬢さん、いくら侯爵家のパーティーでも、1人で庭に出るのは不用心だよ。まだ、子供と言ってもね、あらぬ噂が立つ事もあるんだよ。今度からは気をつけなさい。」


「はい。申し訳ありません。」

他人に注意されるなんて初めてだ。しかも、皆んなが憧れるような人に注意された。恥ずかしくって、顔を上げられない。


「リオン、まだ子供だ。」

カイウスが庇ってくれる。

「子供でも、貴族として生まれた以上、抗えないものはある。ここで嫌な思いをしてでも、ちゃんと自分の立場を考えた方がいい。」


そう、言われた言葉が重くのしかかる。


「ありがとうございます。大丈夫です。今度から気をつけます。」

頑張って笑顔を作る。


そうだ。背を伸ばせと言われたのだった。


ぎこちない笑顔だったかもしれない。でも、背中を伸ばして笑顔を作る。


「ああ、その方が良いと思うぜ。」

「ええ。そうですね。」


何故か、2人に褒められた。背を伸ばして、頑張って笑っただけなのに。


「戻るぞ。」

カイウスはリオンに連れられて戻って行った。


ふうっと息を吐く。


自分がちょっと興奮しているのがわかる。



姉達が憧れるような人と話したドキドキと。自信が無くて、情けない自分と。ありったけの勇気を振り絞って背筋を伸ばした笑顔を褒められたこと。


色んな事がグチャグチャに混じり合う。


とりあえず、戻ろう。

確かに、勝手に抜け出したのはいけない。



パーティーに戻ると、相変わらず、カイウスが人に囲まれていた。

横に、その友人のリオン・グラート侯爵令息の姿も見える。


令嬢達が、2人の周りでキャーキャーと騒いでいる。


さっき話した筈の2人はとても遠い人みたいだった。


その後、数人の令嬢、令息と挨拶したが、パーティーはお開きになり、帰路に着いた。

姉達は、カイウスとリオンと話したと、キャーキャー騒いで盛り上がっていた。


父は苦笑していた。




あのパーティーの後、何度も言われた事を思い出して考えていた。


背筋を伸ばせ


自分の立場を考えろ


そして、笑顔。


2人から言われた事は、簡単なようで、難しい。自分の立場って、どういう事だろう。

私が、どうするのか? って事なのかな。

新年明けましておめでとうございます。


読んでいただいてありがとうございました。


今年もマイペースに書きますので、よろしければお付き合いください。よろしくお願いします。


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 回避出来た令嬢は? 後書きにリンク貼れないと気がつきました。
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