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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-8 I need more……
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Spirited away 『神隠し』-3

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 「あ~~……ツマンネ」


 エリア1・ハウンド本部。

 読んでいた雑誌を放り投げ、ソファーの上に寝そべって怠惰を貪る拳二の姿があった。


 「ははは……済まない。ファングが少し遅れててね。それとゴライアスにも今連絡取ってるところだ」


 「……マクスさん、今日の軍との会議は夕方からだろ? なんだってこんな朝早くに呼び出されてんだ、()()()()


 拳二は気怠そうに身体を起こしながら言った。するとその言葉に呼応するように、渋みのある低い声が響く。


 ノートPCを操作しているマクスの横に、煙草を咥えたマイルズがいた。


 「そう怒るなよ、小僧。俺たちと違って仕事熱心な奴ばかりなんだ」


 「俺はもう25だ、小僧じゃねぇ! そんで一緒にすんな、オッサン! つーかこの呼び出しも仕事の内だろうが!」


 「フハハハ! すまんなァ。つい、な?」


 「ったく、いつまでもガキ扱いしやがって」


 拳二とマイルズが他愛の無い言い争いを繰り広げる中、割って入る者が現れた。扉が開き、黒い鎧の人型が姿を見せる。ランク3・アームズだった。


 「……」


 「……ちっ」


 さっきまでの緩みきった空気が変わる。拳二はアームズが現れた途端、目に見えて機嫌を悪くしていた。またアームズもアームズで何の挨拶も無しに室内に入り、部屋の隅で置物のように立ったまま静止した。


 「ハハハ……全く、この小僧は。黒いのも、久しぶりだ」


 「……」


 マイルズの挨拶にアームズは応えず、完全無視のまま直立不動を崩さない。そんなアームズの態度にマイルズは――


 「……もしかして、お爺ちゃん嫌われてる?」


 落ち込んでいた。

 近くに座るマクスも、これには苦笑せざるを得ない。


 「い、いやあ……まだ『オジサン』で通る歳だと思いますよ?」


 「おいおい、否定すんのはそこかよ……」


 マイルズはガクリと肩を落とし、煙草を深く吸い込む。

 拳二とアームズの確執で場の空気は悪くなったが、マイルズのお陰でそこまで険悪な感じにはなっていない。もしかすると、それを最初から狙っていたのかもしれない。マクスはマイルズの自然な気遣いを見抜き、ひとりでに微笑む。


 そんな時、再び入口の扉が開いた。



 「――遅れました。申し訳ありません」



 全身を覆うロングコートに身を包んだ男が謝罪をしながら入ってきた。ハットに黒いサングラス、そして口元を覆い隠すマフラー。傍から見たら完全な不審者だが、喰らう者(イーター)と戦う者の間では名の通った男だった。


 その男の名は『ファング・マクヘイル』。

 ハウンド所属、ランク2に位置するトップランカーの1人だった。















 雪深い村の中、ジン・刀也・サラの3人は村人への聞き込みなどで情報収集を行っていた。

 村と言っても中々規模が大きい。豊かな大森林が近くにあるせいか、様々な資源の確保が容易なのだろう。転々としてきた集落に比べ、随分と発展している。


 一行は村人たちへの聞き込みを終え、宿屋の部屋を借りた。ベッドが2つしか備え付けられていない狭い部屋ではあったが、目的は宿泊ではなく、腰を落ち着けての情報整理にあった。


 「ふう……とりあえず一息ですね」


 サラがベッドに腰をかけながらノートPCを取り出す。


 「色々と嗅ぎ回った結果……やはり繋がるのは『大森林』か」


 刀也が窓の外を覗き込みながら言った。窓の外には噂の大森林が広がっていた。


 「はい。まずは得た情報を整理してみましょう。


 まずは目撃証言です。ランク6の方と思われる『よそ者』が、ここの宿を利用していたそうです。銃を携帯しており、同じくよそ者の小柄の老人と2人組で行動していたようですが……」


 「銃器を携帯していたのがサイモン、小柄な老人は同行していた代理人(エージェント)と見て間違い無いだろう。このタイミングで2人組のよそ者……決定的だ」


 「刀也さんの言う通り、私もそう思います。その2人組を失踪中の2人と仮定して、話を進めてしまっても大丈夫でしょう。次に判明したのはこの2人の目的ですが……」


 「近くに潜伏できそうな場所、或いはここ最近怪我をした奴を見なかったか。そう聞き込んで回っていたそうですね。その結果、どちらの問いもあの大森林へと繋がった……ですよね、サラさん」


 「うん、その通りです。この村の周辺も含めて、地形的には起伏の少ない平地ですが……潜伏できそうな場所ならあります。村のすぐ北にある大森林です。

 極寒の環境に適応した針葉樹が主体となる広大な森林ですが、なんでも大怪我をした人が、そこへ向かっていくのを目撃した村人がいたようですね。その話を聞いて2人はそのまま大森林へ入り、その後2人の姿は見ていない……と。


 あの森林、行方不明になる人が地元民にも結構多いらしく、有名みたいですね。刀也さんの言った通り、『神隠し』とか言われてるみたいです」


 サラは得た情報を簡潔にPC上でまとめていく。

 短時間の聞き込みだけで揃えた情報だったが、既に十分足取りを掴めた。正規軍の占領圏外というほどの北方、よそ者は相当に珍しいのだろう。通信電波の状況も悪く、範囲ギリギリといったところだ。


 情報を整理出来た所で刀也が窓から目を離し、真剣な表情で言った。


 「決まりだな。大森林、そして神隠しとやらを調べるしかあるまい」


 「そうですね……十中八九、あの森林で何かが起きたのでしょう。すぐにでも向かいますか?」


 サラの言う通り、ここまで足取りを追えているなら行動は早い方がいい。ランク6も代理人(エージェント)も死んだと決まった訳ではない。


 しかしここで刀也があることを提案する。当然と言えば当然の、至極効率的なことを。


 「ああ……すぐにでも大森林へ出発する。


 ――しかし、大森林へ向かうのは俺とジンだけだ」
















 深い森の中。積雪に隠れた木の根に足を引っかけないよう、ジンと刀也は注意深く歩く。親切な宿屋の主人に描いてもらった地図を頼りにしながら、2人は森の中のある場所へ向かっていた。


 「……なあ刀也、よかったのか? 調査っていうならサラさんもいた方が……」


 ジンは地図を広げながら歩く刀也の後ろにつき、周りを見渡しながら言った。この場にサラの姿が無い理由……それはひとえに、刀也の指示によるものだった。


 「今回ばかりは連れて行けん。足取りが掴めたとはいえ、行方不明には変わりない。サイモンほどの数字持ち(ランカー)がそんな状況に陥る……この森に『何か』があるのは間違い無い」


 「それはそうだけど……いや、全部刀也の言う通りか。俺たちも()()()()辿()()懸念は捨てきれない。だったらバックアップは必要だ」


 今回の仕事は、簡単に言ってしまえば人探しだ。森の中に残された痕跡を頼りに、歩き回る羽目になるだろう。そういった観点から見れば、確かにサラがいれば力強い。その手の調査においては目を見張るものがあるからだ。

 しかし刀也の言った通り、この調査には余りにも危険な余地がある。ランク6という実力者が追っていたのは、比較的戦闘力の低いスパイダーという個体。……にも関わらず、失踪は起きた。『神隠し』と呼ばれる謎の失踪、危険な匂いしかしない。


 「それで……これから訪ねるのが、この森に住む猟師さんだっけ? 村人が深い所まで入らないように監視してるっていう」


 「ああ。宿屋の主人に、まずはこの人を訪ねることを勧められてな。『番人』と慕われている、気の良い老人のようだ」


 宿屋の主人が言うに、猟師はこの辺りでは最も大森林に詳しい人物なのだという。しかしその猟師でも神隠しの謎を解明することは叶わず、村から森の浅い地点に移り住むことで、森の監視をしてくれているらしい。


 「この森の情報を集めるに、これ以上の人はいない。宿屋のおじさんには感謝だね」


 「全くだな。描いてくれたこの地図も、正確で分かりやすい。

 ……む、見えたな。あの小屋だ」


 木々の隙間に明かりが点いた小屋が見える。森林の景観によく溶け込んだ、ログハウスともいうべき木造の小屋だ。明かりが点いているということは、番人は室内に居るのだろう。


 刀也が扉をノックすると、大柄だが優しそうな面持ちの老人が出てきてくれた。



 「――いらっしゃい。見かけない顔だが……もしかして、迷子か?」


 

 『番人』というにはいささか年寄りだ、とジンは思った。白髪に長い白鬚を蓄えた、推定7、80代の老人。番人というよりは、ご隠居様と言った方がしっくりくくるような……そんな老人だった。


サラ「まさか置いていかれるなんて……ショックだけど、仕方ないかぁ。こっちもこっちで引き続きの情報収集と連絡役、キッチリやらないとね」

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