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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-7 Fierce battle
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Samurai edge-2

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 サラは工房の入口に立ちながら、ジンと刀也の姿を見守っていた。

 模擬戦が終わった後、稽古と称した剣戟が始まって早2時間。寒さに震えながらも目が離せなかった。


 (稽古かぁ……私には凄すぎて実戦にしか見えないけど……)


 さっきまでの模擬戦と変わらない激戦。鬼気迫るほどの集中。殺気すら感じられるような……そんな剣戟が繰り広げられていた。


 「違う、その場合の足運びは――」


 「こ、こう?」


 「よし……悪くは無い。俺の刀の軌道をよく見て、読める攻撃は最小限の動きで躱せ。それが迅速なカウンターを可能にする」


 殺気立った雰囲気に反して、2人は意外なほどに真面目に稽古をしているようだ。そこにあるのは純粋なる戦闘そのものであり、サラには理解しきれない部分があった。

 

 (ジン君も刀也さんも、動きを教える稽古であんなに本気でやらなくてもいいのに……)


 刃を持たない模造刀の衝突。鈍く重い金属音が響き渡る。


 「刀を当てる角度は、常に垂直を意識しろ。それから――」


 












 「――ほうほう。閃いちゃったな」


 いつの間にかサラの背後に現れ、目を輝かせながらスカーレットが言った。なにやら2人の剣戟をみて思い付いたことがあるらしいが……。


 「スカーレットさん……閃いたって、何をです?」


 「ん? ああ、ジンの武器の事だよ。機能や性能を発揮するための仕組みは固まったんだが、デザインに悩んでてね。でもあの2人を見て、ピンと来たよ……へっくし!! おー寒い。アンタも風邪ひかない内に中に入んなよー」


 「あはは……はい。ありがとうございます」


 そう言ってくしゃみをしながらスカーレットは工房へ戻っていった。作業中に出てきたのだろう、確かにタンクトップでこの外気温は寒過ぎる。


 (もう少し、見ていようかな……)


 冷えに冷え切った指先を白い吐息で温めながら、ジンの姿を目で追いかける。


 「はぁ……はぁ……もう一回!」


 刀也に何度も吹き飛ばされて、その度に何度も立ち上がるジンの姿。何度も……本当に何度も見てきた。強い敵を目の前にした時も、大怪我をした時も。


 喰らう者(イーター)と戦っている訳ではないからだろうか。その表情は、とても楽しそうに見えた。















 ――更に時は流れ、遂に両者の激突は終わった。

 刀也のスパルタ稽古は空が茜色になるまで続けられた。


 「はぁ……流石にしんどいなぁ」


 「フフ……稽古というには詰め込み過ぎだったが、まあ及第点だろう。そろそろ夕飯にしよう」


 ボロボロになったジンに比べて刀也は無傷だ。疲弊の具合も対照的で、ジンは目に見えるほどの疲労を浮かべているが、刀也の方は満足そうな笑みを浮かべており、疲労の色もまるで見えない。

 2人は並んで歩きながら工房に戻る。入口にいたサラが労いの言葉をかけてくれる。


 「お疲れさまでした。でも刀也さん、ちょっと厳し過ぎやしませんか?」


 「なに、大したことはないはずだ。今のジンならな」


 「いや! 大したことだったよ! 

 まあでも……ありがとう刀也。お陰で掴めたこともあった気がするよ。明日も付き合ってくれるよな?」


 刀也がにこやかに『大したことはない』、なんて言うので思わずジンは声を荒げた。


 「無論、武器の準備が整うまでは付き合おう。さてスカーレットの様子は……」


 こうして3人は工房に入る。すると和やかに談話していた空気が一変する。

 ――いや、()()()()()


 赤熱した鉄を打ち魂を込める、汗まみれのスカーレットの姿があった。集中するあまりこちらに気付いていないようだ。


 (……凄い……)


 ジンは思わず言葉を失い、スカーレットから視線を外せない。鍛造の心得はある。しかし目の前で行われているそれは、今まで見てきたものとは明らかに違った。


 (親方に先輩……凄腕の作業は見てきたつもりだったけど、この人は違う。疑ってたわけじゃないけど……ネイスミスの名前、本物だ)


 すると刀也が急に踵を返し、工房から出ようとする。


 「邪魔するのも良くないな、日が落ちる前に港町へ戻ろう。どの道宿を取らねばならんだろう」


 「え……待って下さい刀也さん、スカーレットさんも一緒に――」


 「――諦めろ。その女はそうなったら絶対に動かん」


 その口ぶりからすると、恐らく刀也は剣聖から神薙を受け継いだ時から、スカーレットとの付き合いがあるのだろう。もしかするとそれ以前から顔見知りだった可能性もある。剣聖と先代ネイスミスのやり取りに同行していたのであれば、だが。


 (偉大な師を持つ者同士、通じるところがあるのかもしれないな)


 ジンはそんな事を推察しながら刀也の後に続く。

 ビリビリと肌で感じるほどの集中力。邪魔をするのも良くない、という点に関しては、全くの同意見だった。


 「置いていくぞ、アールミラー」


 「ま、待って下さい~!」


 結局3人はスカーレットを残して港町へ向かった。あの勢いだと明日には出発できるかもしれない、と話しながら、酒場の料理を楽しみに雪道を進んだ。


 














 ――真夜中。

 ジンは1人外に出ていた。港町とネイスミス工房を繋ぐ、廃墟群の残る道に模造刀を持って佇む。


 「フゥーーーーッ……」


 深く息をつき、焔を纏う。


 「――はあッ!」


 目の前の何も無い空間に刀を振るう。今日の稽古を頭の中で何度も反芻し、動きを再現する。


 (もし明日出発になったとしたら、もう稽古は付けて貰えないだろう……今後は多分機会も無い。少しでもモノにしておかないと……)


 夜空に浮かぶ月明りだけがその場を照らし、その下でジンは鍛錬に励む。刀也だけではなく、直近に戦ったレイザーやアリゲイターの動きも想定しながら刀を振るう。掌にはマメが潰れて血が滲んでいたが、それでも振るい続ける。


 (――最初に負けたのは、拳二さん。ロゼとの戦いでは刀也と拳二さんの足を引っ張った。レイヴンとの戦いではアームズに救われた。レイザーとアリゲイターには追い込まれたし、バスターとかいう奴には訳も分からないまま倒された。そして刀也にも模擬戦で負けたばかり。それも圧倒的な差を見せつけられて。俺は……負けてばかりだ)


 ふとジンは思い返した。忘れることなど出来ない、刀也に言われた事を。


 『感情を忘れるな。その気持ちこそが人間だ』


 心の中に渦巻くはドス黒い復讐心。捨て去ることなど出来はしない。


 『呑まれずに向き合って、答えを出すのはそれからでいいと思っただけだ』


 刀也の過去の欠片を知った。尊敬していた師を喰らう者(イーター)に奪われた、己と似た境遇にあることを知った。


 (答え……か)


 この復讐を終えた先。その果てに、俺は何を望み、何を願う?




 「……そうか、そうだよな。考えてみれば、こんなにも簡単なことだったんだ。


 俺は――」


 

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