New weapon-3
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一行は廃墟群を抜け、寂れた港町にやってきた。ジンとサラが最初にマイルズたちウォーウルフ隊に出会った酒場に入る。というかこの町には店らしい店がそこしか無かった。
スカーレットは一直線に酒場に入ると、室内で店主が床掃除をしていた。
「ん? おぉ……坊主にお嬢さん、無事スカーレットには会えたみたいだな。少し前にマイルズたちが寄っていったが、エリア1には一緒に戻らなかったんだな」
「ええ、まあ。その節はどうもお世話になりました。すいません、お掃除中に来てしまって」
再会の挨拶を交わすジンを横目にスカーレットは乱雑に席につく。ついでに半笑いで店主に悪態をついた。
「昼が近いってのに相変わらず寂れてんなぁオジサン、掃除なんかいらないんじゃないの? とりあえず飯を食いに来た、適当に4人分頼むよ」
「スカーレット……本当にお前は口が悪いな。そんなんだから男が出来ねえんだ。『レッド』の奴が今のお前の姿を見たら、さぞ悲しむだろうな」
「う、うっさいな! アタシに釣り合う男がいないだけだよ! というか親父の話はやめろよ!」
「なんだ、お友達と一緒だからって強がるなよ。いつも通り『お父さん』でいいだろ?」
「~~っ!! もう! いいから早くしてよ! 一応こっちは客なんだぞ!!」
「ふははは! 分かった分かった、少し待ってろ」
……まるで刀也と拳二のような会話。互いに悪態をつきながらもまるでそれが普段の会話のようなやり取りだ。もっとも、対等というよりはスカーレットが店主に一方的に転がされている気はしたが。長い付き合いと深い親交を窺わせる。
顔を赤くしながらもスカーレットはこちらに席につくよう促す。
「ったく、昔からアタシを馬鹿にしやがって……ホラ、席に座れよ2人共。ここのオジサン、あんなんだけど中々美味い飯を作るから、期待して待ってていいぜ」
「あ、実は一度ここの店には来ていまして。私とジン君はご馳走になったことがあります」
「へえ、そうなんだ? 美味しかったでしょ、この酒場は酒より飯なんだよ」
席につきながらサラが言った。
思い返してもアレはかなり美味しかった。あの時は確か猪を使った肉料理が中心だったが……とにかく、またここの料理が味わえるとは幸運なことだ。
そんな事を考えながらジンも続いて席につく。すると既に席についていた刀也が真剣な表情でスカーレットに尋ねた。
「――ところで、さっき店主の言っていた『レッド』という名前。貴女は父親と言っていたが……この刀を創り出した『先代』に間違い無いな?」
突然に核心を突いてきた。ネイスミスにまつわる事情、それは刀也としても自らの得物の起源に関わる話だ。強い興味があるのだろう。
スカーレットはおもむろに煙草を取り出し、火を着けながら語り始めた。
「ああ、その通りさ。『レッドグレイブ・ネイスミス』……アタシの父親で、お前の刀やマイルズの旦那の狙撃銃。それにジン、お前のその散弾銃を手掛けたのも親父さ。5年前に逝っちまったけどな」
「あ……気付いていたんですね。マクスさんに譲り受けた物なんですけど」
「M1887改。モデルは大災厄前でも骨董品扱いのクソ古い銃で、そんなのを摸して緋色合金で造る奴なんざ世界中探しても親父しかいない。工房にも似たような骨董品もどきがいくつか残ってる。多分趣味だったんだろうな。
……それにその銃はアタシも良く知ってんだ。何度か整備をしてたし、前の使用者とも会ったことあるぜ。死んじまったって聞いたけどな、その銃もまた使ってくれる奴がいて幸せだろうさ」
ジンは散弾銃を取り出してまじまじと見つめる。この銃も先代レッドグレイブの作品であり、一般的に知られている緋色合金は5年前に生み出された、という認識の外側にある代物のようだ。
「先代のレッドグレイブさんが亡くなったのが5年前……5年前というと、バーミリオン社の設立・躍進と無関係とは思えませんが……一体、何があったんです?」
「……」
父親を亡くしたその年に、何があったのか。ジンはそんな事を無礼を承知で聞いた。スカーレットとは出会ってまだ数日ではあったが、ここはどうしても聞いておきたかったのだ。
するとスカーレットは咥えていた煙草を深呼吸するように吸い尽くし、新たにもう一本取り出して言った。
「……ま、話すって言ったしね。それにアタシに二言は無い。そもそも親父の頃からのお客はみんな知ってることだ、隠すような事じゃない。
ちょいと長くなるが、話してやるよ。ネイスミス工房と親父、そしてあの糞兄貴……バーミリオン社の事もね」
さて何から話すべきか……とりあえず最初はやっぱり親父の事かな。工房の創設者で、初代ネイスミスを名乗った『レッドグレイブ・ネイスミス』。
アタシとあの糞兄貴の実の父親で、母親は早くに失ったけど親父は男手一つでアタシたちを育ててくれた。お陰で物心つく前から工房の仕事を手伝ってて、兄貴と一緒に色んな技術を叩き込まれた。製鉄から銃や弾丸、刀剣の製造技術、機械工学なんかもね。とにかくアタシと兄貴にとっては父親で、先生で、師匠だったワケ。
そりゃもう親父の仕事は忙しくて、こんな辺境にある小さな工房なのに、凄い仕事量だったなぁ。え、何故そんな仕事があったかって?
そんなのは決まってる。親父がある発明を完成させてて、とにかくすごい武器を作ってたからだ。
――そのある発明ってのが『緋色合金』の開発さ。
喰らう者との戦いを大きく変えたあの金属は、親父が生み出したものだったんだ。




