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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-7 Fierce battle
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Messiah-4

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 「なんでお前がここに……」


 「どうでもいいだろ、わざわざ教えるかよ」


 ジンとレイザーは互いに殺気を漲らせながら睨み合っていた。アレックスが素早くカービン銃のリロードを終え、ジンに並び小声でコミュニケーションを取る。


 「ジンさん、こいつのことを?」


 「ああ、少し前に一度戦ってる」


 先程のレイザーを後退させるように行った正確な射撃に加えて、この突然の状況にも取り乱さず対応している。流石ランク4の部下だけあって、自分以上に若いはずなのに大した練度だ。


 「――よし、俺が前に出る。アレックスは下がっててくれ」


 「いえ、であれば自分も一緒に前で――」


 「いいから。ここは戦闘経験のある俺が叩くのが適任だ。代わりにサラさんの守りは任せる」


 「……了解しました、ご武運を」


 ジンにはある疑念があった。前に戦った時に同行していたアリゲイターという大男の姿が見えなかったのだ。


 (たまたま同行していないだけなのか、それとも以前と同じように潜んでいるのか……目の前の気配の強さもあって感知は難しそうだな。とにかく今は、戦うしかない。じきにマイルズさんたちも合流するはずだ)


 「――ジン君!」


 レイザーに向かって歩を進めようとしたその時、サラが声を上げた。振り返るとそこには心配そうな表情のサラが真っ直ぐとこちらを見ていた。


 「その……気を付けて」


 「……大丈夫、必ず守ります」















 「なんだ、随分大人しく待っててくれたんだな」


 そう言いながらジンはゆっくりとレイザーとの距離を詰める。レイザーはジンの言葉に反応せず、半笑いのまま手足を徐々に変化させていく。

 

 (以前とは少し違うな。俺に拘ってるのは変わらないようだけど……)


 刺すような殺気はそのままだが、激情に任せて襲い掛かってきた時とは違う。以前は単調な攻撃を繰り返してくれたお陰で勝つことが出来たが……。


 

 「――っ!!」


 

 唐突に繰り出されるハイキック。ジンは間一髪で身を屈めて躱しきった。ジンは即座に焔を纏い、最大まで強化した膂力で右手の模造刀を叩き付ける。レイザーもそれを変化させた腕部で受け止め、両者は互いに譲らない鍔迫り合いになった。


 「……ははっ、流石にいい反応だね。今のはボクも自信あったんだけどな」


 「ちっ……しぶとい奴だな、今度こそ殺してやるよ!!」


 ジンは模造刀に焔を纏わせ、強引に鍔迫り合いを解く。袈裟懸けに振るう爆炎を伴う斬撃。得物は刃の無い模造刀だが、強度は段違いに高く、より強い爆炎を起こしても耐えることができる。

 レイザーは爆炎の引き起こす強力な衝撃に弾かれ、大きく後方へ飛ばされた。


 しかし弾き飛ばされたレイザーは無傷。変異させた両腕を交差させて身を守っていた。


 「……ふふ、やっぱりやるなぁ。強くなったつもりだったけど、本気で行くしかなさそうだ」


 (……来るか)


 レイザーの身体が更に変異していく。どうやら完全に変異体になるようだ。しかしジンはその変異に驚きを隠せない。以前の人型とはかけ離れた異形の怪物とは違い、人型を留めたまま硬質化していく。


 (こいつ、以前と姿が違う……!? まさか……)


 両手両足の刃はそのままに、金属で全身を覆ったようなその姿。感じ取れる気配からも間違い無い、レイザーはカテゴリーAの個体に進化を遂げていた。


 「さぁ、行くぞ!!」


 レイザーはそう言ってジンに突進し、連続攻撃を仕掛けてくる。手足の刃を存分に活かす見事な体術だ。ジンはその攻撃速度に対応しきれず、致命傷だけを何とか避けながらその身体に少しずつ斬り傷を増やしていく。


 「くっ……!」


 「ハハッ、どうだボクの力は!! お前に負けてからボクは喰って喰って喰いまくって、遂にここまで上り詰めたんだ! ロゼの仇、ここでとってやるッ!!」


 その感情的な言葉とは裏腹に、レイザーの動きは冴えわたっていた。壁や天井を使って急激な方向転換を繰り返す三次元的な動きには磨きがかかり、激情に流されない本来の戦い方を貫いていたのだ。ジンはひたすらに防御を固めたが、徐々に追い付かなくなってきていた。


 (スピードに差があり過ぎる……! このままでは……!)


 「そらっ、ここだ!!」


 「――なっ!?」


 遂にジンの防御が破られた。凄まじい連撃に模造刀を手から弾かれてしまったのだ。無防備となったその身体に凶刃が迫る。


 「ハアアアッッ!!」


 首をはねるように横薙ぎされた渾身の刃。恐らくレイザーはここで勝負を決めるつもりだろう。必死の思いで後ろに下がり、首を捻りながら紙一重で斬撃を躱す……が、躱しきることは出来なかった。首を浅く斬られ、少しだけ血が飛び散る。


 「躱した……!?」


 ジンはそのまま後退しながら首元を押さえ、傷の深さを確かめる。ほんの少し掠めた程度、出血量からも致命傷にはなっていない。が、レイザーもそれを分かっているのだろう、容赦無い追撃が迫る。


 (速い……けど、この一瞬があれば――!)


 渾身の斬撃から間一髪で生き延びたことにより、連撃に隙間が出来た。この一瞬こそジンにとっては二度と無い起死回生のチャンスであった。

 素早く散弾銃を腰だめに両手を使って構え、大雑把に狙いをつけて射撃する。弾丸は運良くレイザーの脚部に命中、距離の近さもあってか貫けないまでも強い衝撃で体勢を崩すことに成功する。


 「くっ!?」


 崩したと言っても前進の勢いを一瞬だけ抑えた程度のもの。しかし再度訪れた猶予を無駄にはしない。弾かれた模造刀の位置を目視して確認、同時に散弾銃のレバーを起こして次弾を装填する。この時ばかりは右手が空いていたことが功を奏した。両手で散弾銃を保持しているため、普段行うスピンコッキングよりも遥かに素早くリロードが出来るのだ。


 ほとんど連射に近い速度で発射された第二射。今度はレイザーの頭部を正確に捉え、着弾した瞬間大きくのけぞらせる。

 

 ――が、まだだ。

 頭を破壊できずにのけぞったということは、弾丸はやはり脚部同様貫いていない。ジンはすぐに走り出し、模造刀を右手で拾い上げそのまま全力で振り下ろす。ありったけの焔を刀に込め、爆砕を狙う。


 模造刀の高強度が成し得た今までで最大の爆炎。凄まじいその衝撃は、施設全体を震わせるほどだった。


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