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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-7 Fierce battle
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Messiah-3

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 ジンが射撃を躊躇った僅かな時間。それが獣の攻撃を許す一瞬となってしまった。


 「アアアアアアアアアアアッッ!!!」


 無垢な少女は態度を一変させ、敵意を剥き出しにしてジンを威嚇する。とても人間の声とは思えない威嚇のための金切り声が響き、少女の口は顎が外れてしまっているのでは、と思うほどに開いて尖った歯を覗かせた。

 よく見ると両瞳は真紅、少女どころか人間でないことは明らかだった。


 「こいつはっ……!?」


 少女はジンに飛びかかりその身を喰らおうとする。その小さな体からは想像できないほどのパワーに虚を突かれ、押し倒されてしまうが何とか少女の首を掴み喰いつかれるのを止めることが出来た。


 「アアアアア!! アアアアアアア!!!」


 ビチャビチャと唾液が飛び散り、ジンに噛みつこうと少女の牙が迫る。それなりに体格の良いジンの腕力をこの少女は上回っており、このままでは危険な状態であった。


 「くそっ……仕方ない!!」


 ジンはべノムの力を解放し、両瞳を真紅に染める。冷静に対処すれば、焔を使うほどの相手では無い……! 少女を力任せに投げ飛ばし、そのまま素早く立ち上がって散弾銃を再び構える。

 壁に叩き付けられた少女は痛がるような声を上げながらジンに向き直ろうとしている。その動きはやはり人間には程遠く、まるで四足歩行生物の動きだった。


 今目の前にいるのは少女の姿をした、人間ではない何か。ならば躊躇うな、やらなければこちらが喰われるだけだ!


 ジンは瞬時に迷いを捨て去り、少女の頭を正確に撃ち抜く。

 僅か数mの至近距離に加え、頭部の強度も大したものでは無かったのだろう。散弾は少女の頭部を一撃で粉砕し、()()()ごとその場で飛散した。


 「……」


 頬に着いた返り血を拭いながら、ジンは少女の死体を持ち上げる。下顎から上の部分を欠損した無残な姿だが、それでも調べなければならない。


 (こいつはまるで、カテゴリーCの喰らう者(イーター)のようだった。理性の無い人を喰らうだけの怪物……瞳の色から喰らう者(イーター)に関係があるのは間違いないはずだ。でも何故こんな姿で?)


 喰らう者(イーター)の場合本来であれば人間体がある、ということはカテゴリーBに相当し、理性もその時点で獲得するとされているはず。しかしこいつにそれは当てはまらない。


 ジンは来た道をそのまま戻り、サラたちの下へ戻った。とにかく今は施設の調査が先だ。生存者の捜索も重要だが、この施設が何であるかも突き詰める必要がある。何か掴めていることがあれば良いのだが……。













 「――あ、ジン君さっきの銃声は……ってそれは……」


 「……多分喰らう者(イーター)です。襲われて、反撃で殺しました」


 サラたちのいる部屋に戻ってきたジンは、ひとまずその腕に抱いた死体を優しく降ろした。頭の大部分を吹き飛ばしておいて何を今更、と自分でも思っていたが、それでもジンは子供の形をしたものを乱雑に扱いたくはなかった。

 サラとアレックスはただ茫然と死体を見ている。無理もない、喰らう者(イーター)とはいえこんなにも無残な子供の形をした死体を目にすれば、驚愕するのは当然のことだ。


 「……サラさん、何か判明したことはありますか? この施設のこと」


 「……うん、セキリュティが強くて分からないことも多いけど、幾つか分かったこともありました。やはりこの施設はマイルズさんの受けた依頼通り、喰らう者(イーター)の生物的研究所みたいです。そしてこの研究所を管理・運営しているのは『エボルヴ』という組織です」


 『エボルヴ』……聞き覚えの無い組織名だったが、その名を聞いた途端アレックスの表情が変わったのを見逃さなかった。


 「何か知っているのか、アレックス」


 「え……ええ、知っているというか、その組織はかなり有名ですよ。なんたって全ての医療機関を管理しているバーテクス正規軍傘下の組織ですから」


 「正規軍傘下……!? いやでも、生物的研究だとしたら、正式な医療関連の組織が担当していてもおかしくはない……けど……」


 ジンは振り返って自分の連れてきた死体の腕に注視する。細く小さい手首には、被検体ナンバーとして数字の書かれたタグが巻かれている。血に塗れて数字は読み取れないが……。


 同じ種類のタグが、今も水槽内に浮かぶ子供の腕にも巻かれていた。


 ジンは死体のタグを取り外し、付着した血を拭って数字を見る。


 (やっぱり……)


 水槽内の子供のタグと見比べながら、あることに気付く。推測通りで間違いないだろう。ジンはそのままタグをサラに手渡した。


 「ジン君、これは……」


 「推測ですが、少なくともアレはここで何らかの研究対象だったのだと思います。恐らくこの壊れた水槽の中に入ってたのが……恐らく」


 サラは手渡されたタグの数字を見る。書かれていた数字は19980724。水槽内で今も浮かぶ子供に巻かれたタグの数字と連番になっていた。


 「俺が持ってきたあの死体、アレは子供の姿をしたカテゴリーCの喰らう者(イーター)そのものでした。何故そんなものがここにあるのか……正規軍傘下の医療組織が持つこの研究所に」


 「それは……分かりません。けどこの数字、もしかして――」


 サラは何か思い立ったようにこの部屋にあった端末を操作し始める。


 「被検体ナンバーが必要なページがあったんです。16桁の。もしかしたら……」


 サラが入力した数字は1998072319980724。端末はその数字を認証し、この部屋で行われている研究の概要を表示した。


 「『project(プロジェクト) reversi(リバーシ)』……? 一体これは……とにかく、データの閲覧を――」


 サラがそう言って研究の詳細を表示しようとキーを押そうとした瞬間。ジンは背後から強烈な、しかし覚えのある殺気を感じた。凄まじい速度で迫ってきている……!



 「――サラさんッ!!!」



 ジンはサラを抱きしめてそのまま押し倒した。突然のことにサラは訳が分からず、驚きと照れの入り交じった表情を見せるが、それは本当に一瞬のことだった。

 見覚えのある小柄な男が脚部を鋭い刀剣状に変化させて、さっきまでサラのいた空間に蹴りを繰り出していたのだ。変化した男の脚部は端末に深く突き刺さっていた。


 「――喰らう者(イーター)!? くそっ!!」


 アレックスは慌てて銃を構え、ありったけの連射を行う。しかし男は目にも留まらぬ身軽さを見せ、壁や天井を蹴って三次元的な回避で大きく距離を取った。


 (あの動き、あいつは……!!)


 ジンはすぐに起き上がって散弾銃を構える。間違い無い、あの男は――


 「お前、レイザー……」


 「久しぶりだね。ボクのコト覚えててくれて嬉しいよ、赤目の人間(クソヤロウ)


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