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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-7 Fierce battle
76/135

Messiah

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 とある地点の山道に人影が4つ。気温の低さゆえに積雪が残る険しい道を歩いていた。


 「――ねぇ、まだ着かないの?」


 「もう少しだ、喚くなレイザー」


 「だってさ……歩きっぱなしで流石に疲れたよ。アリゲイターは平気なの?」


 「仕方あるまい。今の俺たちはレイヴンの部下だ、文句など言えん」


 厚着をしたレイザーとアリゲイターの会話。気怠そうに文句を垂れ流すレイザーをアリゲイターが注意する、同行するようになってからはお馴染の光景だ。

 レイヴンはそんな彼らの前を歩きながらにこやかに話す。


 「ははは、こんな寒い所を歩かせてしまって済まない。僕としても何らかの移動手段が使いたかったところだけど……天候も路面もこの辺は最悪でね、仕方なく徒歩ってわけさ」


 レイヴン1人なら自前の飛行能力で移動可能だったが、今回からは連れがいる。となれば移動は飛行機か車になるのだが、この辺りの天候は安定しない上に極寒。人間も飛行機では入ってこないらしい。そして車の使用できない理由は単純で、路面の状態が大災厄以前の荒れ果てたままであり、なおかつ凍結著しいためだ。


 「ああいや……実際仕方ないよな、ボクも文句言い過ぎた。ゴメン、レイヴン」


 「ほう……」


 「へぇ……」


 「な、何だよ2人して目を丸くしちゃって。アリゲイター?」


 「いや、お前が素直に謝ったことが意外だったものでな」


 アリゲイターが知る限り、レイザーはプライドの高い性格だ。ロゼと行動している時でさえ今のような殊勝な態度は珍しいものだったので、つい感心してしまったのだった。


 「……レイヴンには恩があるから。部下にしてくれただけじゃなく、腕まで治してくれて」


 レイザーはそう言いながら拳を掲げて握ったり開いたりを繰り返した。痛々しい縫い痕が残っているが、もう動きに支障は無いようだ。


 「ははは……そうか、ならその分働いて返してくれよ。レイザー、それにアリゲイターもね」


 「ああ、無論だ。恩が返せるように尽力を誓う」


 「ボクも頑張るけど……なぁレイザー、聞いていいかな? どうして今回()()()も同行してるのさ」


 レイザーが露骨に不機嫌な態度をとって指さしたのは、金髪が印象的な青年……レイザーの腕を斬り落とした張本人であるバスターであった。


 「――不満かレイザー。俺はレイヴンに頼まれて同行しているのだがな」


 バスターはレイザーとは対照的に、一悶着あったとは思えない無表情で対応する。その表情にレイザーはますます不機嫌さを強めていく。


 「だからレイヴンに聞いたんだ! お前になんか誰が聞くもんか」


 「あまり熱くなるなレイザー。今はこの男も仲間にあたるのだからな。……しかしそれは俺としても疑問に思っていた。何故バスターが同行する?」


 アリゲイターは今にもバスターに噛みつきそうなレイザーをなだめつつ、レイヴンに尋ねる。レイザーほどの抵抗は無いにしろ、同行の理由が分からなかったのだ。


 「そうだな……今回の仕事はエリア2にある研究所の調査だって事は言ったね?」


 「ああ、何でもプロフェッサーからの依頼だと……」


 「そうそう。手違いがあって研究中だった個体を暴走させちゃったらしくてさぁ、研究所が丸々壊滅しちゃったらしいんだよね。その尻拭いが今回の僕らの仕事さ」


 「……証拠隠滅、ということか。確かにプロフェッサーの立場上、必要な事ではあると思うが……」


 「で、ここからが問題なのさ。調査に猟犬共が派遣されてるらしいんだよね」


 「――!!」


 猟犬……ハウンドと呼ばれる人間の精鋭たちが集う組織の名称。レイザーもアリゲイターも、そしてレイヴンも煮え湯を飲まされたことのある憎き敵だ。これには不機嫌だったレイザーも一瞬で目の色を変えた。


 「プロフェッサーからの情報によると『ランク4』が来るらしい。遭遇せずに済むのが一番だけど、同時に高ランクを始末するチャンスでもある。だから『メサイア』である彼に同行を頼んだって訳さ。思う所はあるだろうが、どうか穏便に頼むよレイザー」


 レイザーは振り返り最後尾を歩くバスターを睨み付ける。実際レイヴンの言っていることは何も間違ってはいないし文句も無い。ロゼを失ったあの戦いからいくらか強くなっているとはいえ、ランク23に完膚なきまでに負けているのだ。


 「……分かったよ。油断できる相手じゃないのは分かってるからね、せいぜい『メサイア』の力、見せて貰うとするよ」


 「うん、それでいい」


 こうして一行は白い山道を進んでいく。最後尾でバスターは1人呟いた。


 「猟犬の数字持ち(ランカー)、か。少しは楽しめるといいんだがな」















 「――うう……まだ着かないんですか?」


 分厚い防寒具を着込んだサラが先を行くマイルズに尋ねた。スカーレットから受け取った(売りつけられた)ジャストサイズのダウンコートは暖かいものの、エリア2に入ってからは更なる極寒が待ち受けており寒さを感じずにはいられなかった。


 「あと少しだサラ。もう10分もかからない地点まで来てるぜ」


 「……了解です。しかしまさか歩きだなんて、流石に予想外だったなあ」


 「そうですね。俺もそれに関しては予想外でしたけど……何というか、この道じゃ仕方ないですよね」


 文句……まではいかないものの、サラの苦言も気持ちは分かる。そう思いジンは言った。積雪はそのまま残り道路は荒れ果てている。これでは車両は通れないだろう。


 「まぁ仕方ないと言えば仕方ないんですけど……あ、そういえばジン君、()()の調子はどうですか?」


 サラが気にしたのはジンが右手に持っている刃物。スカーレットから間に合わせにと託された緋色合金製の模造刀だった。その名の通り本物の刃物では無く、斬れる刃を持たない形だけの代物だが……ジンの目から見ればそれは立派な武器になり得る。


 「あくまで素振りですけど、使用感は悪くないです。何よりこの緋色合金の純度が桁外れで、俺の焔にも耐えられるでしょう。刃が無いので攻撃力は落ちると思いますけど」


 「そうですか……しかし何者なんでしょうね、スカーレットさんって。バーミリオン社の独自技術を何故持っているんでしょうか? まさか元社員とか?」


 「それは分かりませんが……確かに気になりますね。バーミリオン社になんか因縁があるみたいに感じましたけど……」


 ジンとサラがスカーレットについて話していると、いつの間にか先頭にいたはずのマイルズが2人に並び立って話を聞いていた。狙撃手故の事なのだろうか、大柄なのに気配を感じられなかった。ジン自身今は特別警戒していた訳では無いが、先の遭遇の事もあってそれなりに周りは見えているつもりだったのだが……。


 「スカーレットの奴がバーミリオンに因縁があるのは当たり前だぜ、なんたって彼女は……」


 ここでマイルズの言葉が途切れる。不思議に思いサラはマイルズを追及する。


 「彼女は……なんです?」


 「あー……喋っていいのか分からんな。ま、彼女にも事情があるってことさ。

 ――ほれお二人さん、見えてきたぞ。あれが対象の研究所だな」


 「……何だかお茶を濁された気もしますが……今はお仕事に集中しましょうか」


 サラは残念そうに言ったが、既に仕事モードの凛とした表情になっていた。研究所には遠目から見ても分かるほどに破壊された跡があり、所々焼け跡が見られる。煙が上がっていないことから時間は経過しているのだろうが、生存者はいないと決まった訳ではない。


 「さて、調査方針を決めるとするか。今回は頼れるゲストもいる事だし、二手に分かれて効率を重視する。まずは俺とウォーウルフ2、3の班。そしてジン、サラに加えてウォーウルフ4のもう1班でそれぞれ調査を進める。連絡は随時何かあれば、特に危険があれば報告してくれ。

 ウォーウルフ4は見てのとおりまだ餓鬼だが、それ故に体力もあって十分優秀だ。遠慮無くコキ使ってくれて構わないからな、ジン、サラ」


 「よ、よろしくお願いします!」


 少年のような見た目のウォーウルフ4は、緊張しているのか、或いは隊長であるマイルズに優秀と言われたのが嬉しかったのか、声高らかにジンたちに敬礼をしながら言った。


 「ああ、こちらこそよろしく頼む」


 「ふふ、よろしくお願いしますね。えっと……」


 サラが呼び方に言葉を詰まらせる。ジンとしてはコードネームであるウォーウルフ4と呼べば良いと思っていたが、確かに本名を知らないままというのもそれはそれで後味が悪い。


 「ウォーウルフ4、本名は『アレックス・マグレディ』といいます!」


 そう名乗ってアレックスは顔を覆っていたネックウォーマーを下げ、素顔を晒す。背丈や声の印象通り、少年と言える若々しい笑顔がそこにはあった。


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