Explosion edge
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射撃テストの後片付けのためマイルズたちは工房外へ残り、ジンたちは一足早くスカーレットの工房に戻った。スカーレットの淹れてくれた泥のように濃いコーヒーと共に、散らかった工房内の資材に腰をかけ本題を話す。
ジンがネイスミス工房を訪ねてきた理由、それは右手に構えるための近接武器の新調にある。初めは自作のブレードとアサルトライフルを意味も無く両手に持っていただけだったが、気付けばそのスタイルがすっかり馴染んでしまっている。右手のブレードで防御を含む近接戦闘を、そして左手の散弾銃で中距離までの間合いをカバーしつつ、その高威力で仕留める。それが今のジンの戦い方だ。
敵の組織・スティールの存在が判明した今、現れるであろう更なる強敵との戦いに備えて装備を整えるのはとても大切な事だった。
「――へえ、バーミリオンのブレードを2回もぶっ壊してんのか」
ジンはスカーレットに経緯を話し、自らの焔に耐えうる武器の作成を改めて頼んだ。隣のサラがコーヒーのあまりの濃さに涙目でせき込んでいるのには敢えて触れない。
「はい……2回目の破損状況から省みるに、外的な衝撃からではなく恐らくは俺の焔が原因だと……」
「それで拳二の奴に勧められてVウェポンを作ってるウチにブレードの作成を依頼しに来たワケか……うん、そりゃ正解だな」
「……ってことは、お願いできますか?」
「ああ。その仕事、ネイスミスの名に懸けて確かに請けた。お前の焔とやらは結構面白そうだし、アタシにも得られることがありそうだ」
「――! ありがとうございます!」
技術者ならではの好奇心故か、スカーレットは意外にも二つ返事で仕事を頼まれてくれた。べノムの力を宿し、異能力を発現させるVウェポンを作っているのだ、彼女がジンの焔に関心を持つのは必然と言える。
「ごほごほ……よ、よかったですねジン君」
サラもここまですんなりと話が進んだのは意外だったのだろう。せき込んでいたせいか、鼻から少しだけコーヒーが垂れている……が、敢えて触れない。
ここでジンはスカーレットから突然見覚えのある物を受け取る。
「これは……バーミリオン社製のブレード? しかもこの型は……」
それはかつてジンが振るっていた自作のブレードの素体となった、旧式の緋色合金製のブレードだった。ガンツの下で働いていた時はこの手の型落ちばかり整備をしていたので、握り慣れた懐かしいグリップの感覚に少しだけ感慨を覚える。
「ああ、まずはそのべノムの力を見せて貰わなきゃだからな。またで悪いが、外で試そうか。ついてきな」
スカーレットに連れられ辿り着いたのは、工房の近くの廃墟の中にある開けた広場だった。中央には大きな鉄塊が鎮座している。
「ここはさっきの射撃テスト場と同じで、武器のテストに使ってる場所だ。お前のその力、あの鉄塊にぶつけてもらう」
いつの間にか場にはマイルズたちが合流しており、全員の視線がジンに刺さる。喰らう者同様の異能力、それを人間側についている者が行使するのだから見ておきたい、というのは当然の心理だろう。ジンがマイルズの狙撃を見たかったのと同じように。
「……分かりました」
ジンはブレードを強く握り直し、目を閉じて神経を集中させる。己の心臓に宿るべノムの力。それを感じながらあの焔へと変換していく。
(ほう……中々いい迫力だ。やはり23の数字はあてにならんなァ)
マイルズは煙草をふかしながら微笑み、ジンの姿を観察していた。赤黒い焔がジンの身体から噴出し、纏わり付いていく。ジンは目を開き、真紅の瞳で一瞥する。
「あれが……ランク23の焔か……!」
「本当に……まるで喰らう者だな……」
マイルズの部下が騒めいているが、スカーレットとマイルズは早く力を見せてみろと言わんばかりの表情をしていた。そんな2人の姿勢に感謝し、また応えるべくブレードに焔を集中させる。
「おおおおおおおッ!!」
ジンは鉄塊にブレードを全力で斬りつけた。斬撃と同時に爆炎を発生させるジンならではの攻撃は並みの金属などいくら質量があろうと簡単に粉砕する……そのはずだった。
「……これは……」
爆発に伴う煙が晴れていき、姿を現したのは未だ形の残る鉄塊だった。確かに斬撃部分は大きく欠損してはいるが、大部分が形を残している以上破壊したとは言えない。
「言ってなかったな、その鉄塊はウチで鋳造した緋色合金の塊さ。一撃で壊せる代物じゃない」
「なるほど、となるとさっきの射撃の的も……」
前々から思ったことがあった。緋色合金の製造法を知っているのはバーミリオン社のみであり、またそれを独占することで莫大な利益を得て巨大企業となった。というのが通説だ。その製法を何故彼女が、ネイスミスが知っている? 拳二の持っていたバルバロスに刀也の持つ刀。そしてジンの持つ散弾銃には全て緋色合金が使われており、てっきり最初は合金素材だけバーミリオン社に提供されていると思っていたが……。
(……とにかく今は集中だ。一撃で壊せないのなら――)
抱いた疑問はひとまず心の片隅に追いやり、ジンは更にブレードに強い焔を纏わせる。
今出来る最大出力での連撃。幸い鉄塊は動くことは無いし、反撃もしてくることは無い。一切の防御意識を捨て、攻撃のみに特化すれば……!
――地を揺るがす程の爆炎が連続して発生する。
「っくぅ……!」
サラは目の前の爆炎に思わず身構えてしまう。マイルズの部下たちも同様に爆風に身構え何とか耐えている。
(へぇ……! 思ったよりやるな、ちょっと予想外だこれは)
スカーレットは自らの予想を超えたジンの攻撃に少なからず驚愕し、同時に嬉しそうな笑顔を見せた。マイルズはその表情を横目にジンの振るうブレードの刀身に注視する。
(頑張ってはいるが……もう刃が持たんな)
ジンの無我夢中の連撃により、鉄塊は確実に削られていく。このまま続ければいける、ジンがそう思った時の事だった。
「――あ……」
マイルズの予想通り、ブレードの刀身が砕け散ったのだ。しかしジンの表情には驚きの色は無く、ただ残念そうな表情があるのみ。
「……見てのとおり、この有様です。普通の武器ではとても……」
これでブレードを壊したのは3回目。最初の刀也に壊された分は焔を使っていないので数えていないが、流石にそれだけ壊せば驚きも薄れるというもの。
「んー……なるほどね……」
スカーレットはしばらく考え込んだ後、衝撃的な事実をジンに告げる。
「――ハッキリ言おう。お前の焔に耐えるような武器は、作れない」




