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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-6 Ms.craftman
68/135

Craftmanship

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 今日は空には厚い雲がかかり、朝だというのに太陽が見えず薄暗い……そんな天気だった。ジンとサラはエリア3行きの輸送船に搭乗し、穏やかな海路を進んでいた。


 「曇っているとはいえ、雨が降らなくてよかったですね。海も穏やかで助かります」


 サラはそう言いながら甲板から海原を眺めていた。船酔いをしている様子は無く、調子も良さそうだ。ジンはそんなサラの様子に安心しながら横に並んで立っている。

 しかしその表情はこの空のように曇っており、海の状態に喜ぶサラとは対照的だった。


 「……」


 「……複雑ですよね。エリア3に戻るのは」


 「……そう、ですね……別に故郷のスラム街に行く訳でもないはずなんですが……」


 ネイスミスの居場所はエリア3の最北端に位置し、ジンの住んでいたスラムとはかなりの距離がある。今回の訪問では寄る機会は無いだろう。


 (……ははっ、立ち寄ったって意味は無いか。あそこにはもう……何も無い)


 無意識の内に帰る、という選択肢を考えていることに気付き、ジンは自らを嫌悪する。


 ――何をしに来たんだ、墓参りが許されるほどまだ俺は何も成しちゃいない。そう自分に言い聞かせ、一層気持ちを引き締める。


 「……とにかく、目的はネイスミス製の武器です。到着次第道案内は頼みます」


 












 到着した港は廃港だと勘違いするほどに寂れている。荷降ろしのためのクレーンも無ければ常駐している人間もいない、正に無人であった。北方に位置するということもあって気温は低く、薄く霧が出ているのもあってますます寂しげな雰囲気だ。


 「ううう……寒いですね。少し歩いたら集落があります。まずはそこまで行きましょう」


 サラが身を縮めながら言い、少し先を歩いていた。ジンもそれに続き、会話で寒さを誤魔化しながら進んでいく。


 「ここはちょうどエリア2との境目ぐらいにあたります。そう言えばジン君はエリア2の事は知っていますか?」


 「いえ……つい昨日オールドライブラリで知ったくらいで……たしか極寒の土地なんですよね?」


 確かに寒い。境目のエリア3側で白い息が出るほどの低い気温、エリア2の中心の寒さを想像するだけでも身が凍りそうな思いになる。


 「ふふ、よく調べていますね。環境の厳しさ故に喰らう者(イーター)も寄り付かず、安全に研究が進められてるみたいですよ」


 「そうですか……でも寒すぎて、あまり行きたいとは思わないですね……ははは」


 「ふふっ、そうですよね……」


 「……」


 ……想定以上に寒い。ジンは冗談を交えながらも会話を試みたが、あまりの寒さに話続けることが出来ず、沈黙を気まずいとすら思う余裕は無かった。


 ふとジンは頬に小さな何かが当たっていることに気付く。


 「あ……これは、もしかして雪か……?」


 「……うそーん……」


 サラは空を見上げながら思わず気の抜けた声を漏らした。曇天から降り注ぐ純白の雪。その勢いは徐々に増しているようだ。



 ――廃墟が点在する道を歩くこと約30分。未だ集落には着かず、気付けば豪雪と言っていいほどの悪天候になっていた。


 「もう結構歩いているはずだけど……サラさん、あとどれくらいですか?」


 「……も、もう少しのはずです……あと、もう少し……」


 ジンから見るにサラの限界は近かった。と言っても周りの廃墟はどれも損壊が激しく、この雪をしのぐことは出来ないだろう。となると取れる選択肢は1つだけ。


 「……サラさん、これ着てもう少し頑張って下さい。」


 ジンは上着を脱ぎ、サラの震える肩にかける。


 「!? で、でもこれじゃジン君が――」


 「大丈夫です。少し考えがあります」


 ジンはそう言ってサラから少し距離を置く。上半身はタンクトップ1枚、普通だったらこの低気温には耐えられるはずもないが、生憎ジンは普通ではない。

 

 両瞳を赤く染め、身体に焔を纏った。

 寒さを全く感じない訳ではないが、短時間なら耐えうるだろう。


 「……よし、何とか大丈夫そうだな。行きましょうサラさん」


 「わ、分かりました! 急ぎましょう!」














 ここは寂れに寂れた街の酒場。店主はカウンター越しに酒をを用意……するのではなく、愛用の猟銃の手入れを行っていた。店内には不愛想な店主の他に数名がおり、いずれもしっかりとした装備を揃えている屈強な男たちだった。

 その中の1人が酒に顔を赤らめ、カウンターに身を預けて陽気に笑いながら言った。手に持ったロックグラスは空になっている。


 「おいマスター、俺たちがいるのに銃の整備たぁどういうことだよ?」


 「うるせぇ。こんな大雪じゃ他に客は来ないし、お前さんたちは放っておいても勝手に飲んでいくだろうが」


 「だはははは、違い無ぇな! おいマスター、ワイルドターキーのロックをくれ」


 「あいよ……ん?」


 店主の読みは外れ、店の扉が開いた。雪と寒気が店内に流れ込み、そこ場にいる全員が店に入ってきた2人組に注目する。


 「おいおい、こんな雪の中よく来たなぁアンタたち――」


 先程まで店主の下にいた男が笑顔で歩み寄り、2人に絡み酒をすると思われたその瞬間――男の目つきが変わった。男が持っていたロックグラスは床に落ち、大きな音を立てて割れた。


 「――隊長、この男は喰らう者(イーター)だ!!」


 男は一瞬で2人から距離を取り、即座に銃を構える。さっきまでの陽気な姿からは連想できない、戦い慣れた戦士の顔だ。男の声を聴いた瞬間、店内にいた数名全員が素早い身のこなしで銃を次々に構えていく。この淀み無い一連の動き、喰らう者(イーター)と聞いてアイコンタクトも無しに即座に陣形を作るチームワーク。この者たちは明らかに同じ部隊の……それも相当の手練れたちであると理解するのは容易なことであった。











 「ちょ、ちょっと待って下さい! これを見て!!」


 サラは店に入った瞬間いきなりいくつもの銃口を向けられ、慌てて自らのドッグタグを掲げる。


 「私たちはハウンドに所属する者です! 戦闘の意思はありません!!」


 寒さで声が震えていたが、必死になってそう訴えた。が、銃口は揺らぐこと無くこちらに向いたまま。これは非常にまずいのでは……? そう思った時だった。奥から50代ほどに見える大柄な男が歩いてきた。


 「――銃を下せお前ら。あのタグは本物だ。さて、まずは話を聞かせて貰おうか、お嬢さん?」


 髭が濃く、咥えた煙草が良く似合った男性。首には同種のドッグタグが下がっていた。


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