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Came back

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 「……ん……」


 そこそこ長い時間を眠って過ごしたようだ。手足の傷の痛みが消えている。

 ジンが周りを見渡すと、既に日が落ちていて窓から見える空は暗くなっていた。

 

 「あ……タイミングがいいですねジン君、そろそろ……到着しますよ……」


 ジンの目覚めに気付いたサラが声をかけてくる。しかしその声には元気が無く、なにやら顔色が悪いように見えるが……。


 「……もしかしてサラさん、乗り物酔いが……」


 「あはは……気が抜けた途端に押し寄せて来ちゃって……でも今は多少落ち着いてるから……大丈夫ですよ」


 確かにサラの言う通り、行きの時の状態よりは良さそうだ。慣れもあるのだろうか。

 そんな会話をしていると、ふとベッドに横たわるミシェルが心配の声をかけてきた。


 「ジン君、傷の方は大丈夫なんですか……?」


 「ああ……大丈夫ですよ。ほら」


 ジンはミシェルに見えるよう、立ち上がって腕を屈伸させて見せた。

 完全に傷は塞がっており、付着していた血も既に固まっていた。


 「本当だ……でもその治癒力は……」


 「話すと長くなるんですけど……俺は喰らう者(イーター)の力を宿してるんです。だからあの焔も、この異常な治癒力も、全部そこからきたものです」


 「喰らう者(イーター)の力を宿した人……聞いたことも無いけど、こうして目の前にいる以上は信じるしかないわね……」


 ミシェルは戦闘中もずっと疑問に思っていた。

 ランク23の人が使うあの焔は一体何なのか、何故それを自在に操っているのかを。


 その疑問はたった今解けたが、そうなると今度は力を宿した経緯を聞きたくなるのが人の性というもの。

 ミシェルはジンに――


 ジンに、尋ねることは出来なかった。

 話すジンの表情が、余りにも辛そうだったからだ。


 例えその力が喰らう者(イーター)のものでも、彼は決して人間の敵にはならない。

 あの時身を挺して守ってくれたジンの背中を思い出し、ミシェルはそう確信していた。


 (……そうね、根掘り葉掘り聞かなくたって、私は彼を信じられる)


 空輸艇は徐々に高度を落とし、着陸態勢を整えていく。

 エリア1の街並みは宵闇の中にあっても燦然と輝き、ジンたちを迎え入れる。







 「――良く戻ってくれた。休ませてあげたいのは山々だが、その前に報告も兼ねて本部に来てくれるかい?」


 着陸早々出迎えてくれたのはマクスだった。

 エリア1を離れて数日しか経っていないのに、その声を随分久々だと感じる。


 空輸機が着陸したのは、行きにも利用した都市区画の第1層。

 バーテクス正規軍の総本山とも言える最上層だ。

 エリア5の前線基地など比較にならない、正に人類最後の砦と呼ぶに相応しい設備の規模を誇り、第1層は丸々正規軍が独占している。

 辺りを良く見渡すと、ステルス戦闘機や戦闘用ヘリコプターといったほとんどお目にかかれない貴重なものが多数存在しており、その戦力の高さを垣間見ることは容易だった。


 サラに続いてジン、そして再起動したアームズが空輸機から降りてくる。

 なお重傷のミシェルはすぐさま第2層にある病院へ搬送され、とりあえずは一安心といったところだ。

 サラは少しだけ顔色が悪いが、会話には影響しない程度には回復しており、出迎えに来たマクスに返事をした。


 「勿論です。色々と判明したことがありまして……詳しくは――」



 「――おっと、それは困るな……ハウンドの諸君」



 しかしここで何者かがサラとマクスの会話に割って入る。

 サラの着ているものとは一風違った、いかにも高級なスーツに身を包んだ男性が、革靴の踵を鳴らし、マクスに向かって言葉を放ちながら歩いてきた。

 背後には白衣を着た研究者らしい者たちと、いかにも技術者といった作業着の男たちを引き連れている。


 「悪いがランク3については先に我が社に来てもらう。色々と採らねばならんデータがあるからな」


 「……分かりました、()()。異論はありません」

 

 「フン、では回収する。各員、すぐに始めろ」


 マクスはスーツの男相手に丁寧な言葉遣いで話し、要求をすんなりと受け入れる。

 スーツの男による号令で、アームズはすぐに囲まれた。どうやらアームドアーマーに用があるらしく、計測器のような端末を次々に接続していく。

 ふとジンの目に留まったのは、技術者が着ていた作業着の肩に付いているロゴマーク。


 (あの人たちは……もしかして……)


 スーツの男たち一行は全ての機器を接続し終え、アームズを連れて移動しようとした……が。

 

 「――ランク23。……いや、ジン」


 アームズが立ち止まり、不意にジンの名前を呼んだ。


 「え……な、何でしょう!?」


 「アームズ、でいい。私に敬語は使わなくていい……それと……



 ――食べ物に好き嫌いは、あまり無い」


 「……あ……」


 アームズはそう言い残してスーツの男たちと去っていった。






 「えーと……ジン君、あれは一体……??」


 ジンとサラが余りの予想外に固まっている中、マクスが沈黙を破ってジンに尋ねた。

 頭に?を浮かべていたのはマクスだけではない。もう行ってしまったがスーツの男の一行もアームズの発言には全員が驚き、目を見開いていた。


 しかしジンとサラはその発言の意味を理解し、互いに顔を合わせながら少しだけ笑った。


 アームズの突然の発言。

 それはジンがしていた他愛もない質問の内の1つ。その答えだった。


 それが証明するのは、揺るがない1つの真実。

 ランク3・アームズは、決して機械ではないということだ。


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