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Dog fight-3

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 加速していく空輸機の中で、ジンはべノムの力を解放する。

 強いGの中でも動けるようになれば良いので、焔を纏わず右瞳だけを真紅に染めた状態を維持する。

 窓の外を眺め、敵を視認した。


 「あいつは……!?」


 空輸機の少し後方を追従するように、黒い翼を持った個体が飛行していた。

 明らかに人間とは違う猛禽類のような風貌を持ちつつ、それでも形は人間に翼が生えているようなシルエットをしていたその個体。

 その飛行速度は空輸機を上回っており、余裕すら感じさせる。このままではすぐに追いつかれる。


 『この機体はもう加速限界です……! どうすれば……』


 機内放送で再びパイロットの声が響いた。

 戦闘機ならともかく、空輸機の速度で空中戦はは難しい。旋回性能や機体のサイズ、武装といった観点から見てもこの機体は、明らかに戦闘の出来る機体では無かった。


 しかしここでアームズが即座にパイロットに命令を下した。


 「――後部のハッチを開けて。迎撃する」


 『! 了解、頼みます……!!』


 後部の大きなハッチが開き、強い気流が流れ込んでくる。

 ジンもアームズに続き、散弾銃に単発(スラッグ)弾を装填して後方へ移動する。


 「サラさん、ミシェルさんを頼みます……!!」


 「分かって……ます……!!」


 サラはミシェルの体を押さえつつ、自分も固定されたミシェルのベッドにしがみつくことで、何とか気流に呑まれまいと耐える。

 ジンとアームズはそのまま開いたハッチに向かい、黒い翼を持つ個体の迎撃に向かう。


 ――が、敵は予想以上の実力者だったようだ。

 凄まじい速度で飛来した個体は、あろうことか機内に乗り込んできたのだ。

 唐突に目の前に現れた敵の姿に、ジンは動揺を隠せない。


 「まさか、ハッチが開くのを……!?」


 「――ふう、付かず離れずで追いかけ続けた甲斐があったみたいだね」


 ふわりと音も立てずに機内へ着地した喰らう者(イーター)は、黒い翼をはためかせながら言った。

 どうやらわざと空輸機に追従し、迎撃のためにハッチが開くのを待っていたらしい。

 驚くべきはこの空輸機の特性をよく理解した立ち回り。まともな武装を積んでいない以上、空中戦になれば搭乗している人間がハッチを開いて直接迎撃しなければならない。

 恐らくは常習犯なのだろう。あまりにも手際が良い。


 しかしジンには、それ以上に驚愕していることがあった。

 正に鳥人間とでもいうべきその外見は、ある疑念をジンに抱かせたのだ。


 (戦闘時に変異体になったとしても、人間に近い姿を留める……まさか、カテゴリーAの個体なのか!?)


 レイザーともアリゲイターとも異なるのは体の大きさ。

 猛禽類のような風貌ながら、シルエットは完全に人間そのものであり、マクスの言っていた条件にあてはまる。

 そして何より、放っている殺気が別次元だった。

 レイザーやアリゲイターの比ではなく、あのロゼすら上回りそうな殺気に、ジンは恐怖すら感じた。


 「初めまして、僕の名前は『レイヴン』。早速だけど――」


 強い殺気は無自覚で出ているものなのだろうか、喰らう者(イーター)は柔らかな声色で名乗った。

 しかしレイヴンが後に続けようとした言葉は途切れる。


 それはレイヴン、と名乗った瞬間のことだった。

 アームズは問答無用に推進装置を用いて爆発的に加速し、そのまま突進を食らわせたのだ。

 流石に虚を突かれたのか、レイヴンは突進を直撃で受け、共に空輸機から転落したのだった。


 「な……!? アームズさん!!」


 これに虚を突かれたのはジンも同じで、空輸機から身を乗り出すようにして叫んだ。

 しかしその心配は無用だった。

 アームズとレイヴンは組み合いながら落下していったが、やがて互いの体を弾き合って距離を離し、持ち前の飛行能力で自在に空を駆ける。




 無機的な黒い機械と、有機的な黒い鳥。

 同じような色合いながら、対照的な風貌。

 爆発音にも似た音を伴う機械的な飛行と、しなやかな翼による華麗な飛翔。

 奇しくも正反対な2羽による、音速の空中戦が幕を開けた。




 レイヴンは黒い翼から高速で羽を発射する。

 まるで機関銃のような連射速度は驚異的で、発射音がジンまで届いていることからも威力の高さが窺える。

 対してアームズは瞬間的な加速と急減速、そして激しい方向転換を繰り返し回避していく。

 その動きは生物の領域を逸脱しており、ジンの動体視力でも目が回りそうになる。


 「凄い……あれがランク3……」


 空中を自在に飛び回る苛烈な空中戦。

 そこにジンが入り込む余地は無く、ただ戦いを眺めることしか出来なかった。

 

 (いや……出来ることはきっとある筈だ。今はただ戦況を見守って、備えないと)


 その華麗な空中戦は、まるでカラスが2羽戯れ合っているようにも見えた。


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