Dog fight-2
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「いえ要件というか……そうだ、まだお礼を言っていませんでしたね。救援に来てくれてありがとうございました」
ジンはアームズになんとなく話しかけてみたものの、こんなに早く返答が来るとは思っておらず、思いついたように救援への礼を言った。
「……私はただ任務を遂行しただけ。礼などいらない」
「そ、そうですか……でも、一応同じ組織の後輩ですから、言っておきたくて」
「……」
大方予想通りの返答。無感情で会話を断ち切ってしまうようなアームズの言葉に、ジンは苦笑するのみ。
しかしランク3と話の出来るせっかくの機会、無駄にしてしまうには惜しい気がしたので、とりあえず思いつくだけ質問をぶつけてみることに決めた。
「その、皆には『兵器』って呼ばれているって聞きましたけど、本名は何と言うんですか?」
「『アームズ』の名称で私と判別できるなら、それで十分名前として機能している。他の名称は必要無い」
「そ、そうですか。なら別の質問……アームズさんの歳はいくつくらいですか?」
「年齢など任務遂行においては不要な情報」
「……いつからアームズさんはハウンドに?」
「その情報も不要。任務遂行において役には立たない」
「ハウンドに入るまでは何をされてたんですか? 両手の銃を見る限り、扱いには慣れていそうだ。元々は正規軍にでもいたんですか?」
「回答の必要性を感じない。敵を倒すのに前の所属は不要な情報。私は装備の性能をスペック通りに扱うことができるので、心配は要らない」
「好きな食べ物は!?」
「……」
そんな2人のやり取り(?)を遠目に見ながら、サラとミシェルは笑っていた。
「あはは……ジン君、なんかちょっとムキになってるような」
「ええ……あのアームズって人も、少しは答えてあげればいいのに」
ミシェルは依然横になりながら、何の答えも帰ってこないジンに同情を抱く。
ジンの質問の内容は徐々に迷走していっており、普通の人でもわざわざ答えないような他愛ない質問になっていた。
「でもサラの言う通り、年下らしい所もあるのね」
「そうでしょう? ジン君も普段はとても冷静で、頭の回転も早くて10代には見えないんですけど、刀也さんと違ってたまーに少年みたいになる時があるんです」
サラはジンと2人きりで夜中に船の甲板で、星空を眺めながら話したことを思い出す。
星空を見上げたジンの横顔は、キラキラと輝いていた。瞳に映る星の反射だけではなく、表情そのものが輝いていた……まるで憧れを目の当たりにした少年のように。
エリア3での戦いで、ジンは自らの異能に恐れながらも必死に戦っていた。
全てを失ってしまった彼の想いを聞いた。人間でいたいという叫びを、復讐がしたいという感情を。
普通の人間では精神を病んでしまってもおかしくない過去を背負ったジンが、ふとした時に見せる年相応の人間らしい姿。
改めて今アームズにムキになっている姿を見てサラは思った。
戦い続ける日々を重ねても、その姿を失ってほしくないと。私が支えてあげたいと。
(あれ……でもこれじゃまるで……)
サラは自分の想いに少しだけ嘘をつきながら、早まる鼓動を落ち着かせる。
(ないないっ、きっとこの想いは同情みたいなものだ。これはジン君への侮辱になる、思い上がるなサラ。今は私に出来ることを精一杯やるだけよ)
「――サラ、もしかして具合でも悪い?」
そんなサラの顔を見て、ミシェルが心配の声を上げる。
ここでサラは初めて自分の顔が熱くなっていることに気付いた。きっと、顔色は真っ赤になっている。
「え……いやその、私乗り物に弱くて……少し酔ってしまったかもしれません」
サラは思い出したように乗り物酔いという体で誤魔化す。
行きは酷い酔いに悩まされていたが、今はそれを全く感じないほどに動揺している。
(……ジン君を支えるのは、代理人として当然の仕事。そう考えなくちゃ)
ジンは思いつく質問をなりふり構わずにぶつけたが、どれも答えてはもらえなかった。
案が尽きてようやく冷静さを取り戻す。
ああ、好きな食べ物とか、どんな家に住んでるとか、初対面の人相手には普通の人でもそんなに答えないよ……。
「……すいません、意味の無い事ばかり聞いてしまって」
「要件が無いなら私は再び待機状態に移行する。下らない事で余計なパワーを使う余裕は無い」
ジンの文字通り下らない質問に呆れてしまったのだろうか、アームズは突き放すような言葉を言い放つ。
しかし余裕が無いと聞いた途端、閃いたようにジンは再び質問をした。
「あ……すいません、最後に1つだけ。アームズさんは何故俺たちと同行を? 自前の飛行能力で移動した方が、遥かに早そうですが……」
ジンが初めてアームズを見た時、凄まじい速度で飛来してきていた。
正確な速度は流石に分からないが、少なくともこの空輸艇なんかよりはずっと速く、音速に近いのでは? と思ったくらいだ。
それを省みるとアームズの同行には理由がある。もっともその理由には、アームズ自身の言葉からも見当がついていたが。
「それについては確かにランク23の言う通り。同行の理由は私の装備が連戦によってべノムを消耗してしまっているから。エリア1までは飛行を維持することが出来ない」
「なるほど……すいません、それも俺たちの救援に来てもらったせいですね」
ジンは謝罪をしつつ、内心ではやっぱりか、と思っていた。
纏っている黒い鎧は恐らくVウェポン。べノムの力で飛行をしていることから、それは確実だろう。
しかし刀也の刀や拳二のバルバロス、自らの持つ散弾銃に比べ、少しだけ違和感を覚える点があった。
(あの鎧は今まで見てきたものと違って、攻撃的な要素が薄すぎる。鎧の力は恐らくは飛行能力と装甲による防御……なによりネイスミスの刻印が無いし、デザインの意匠も違い過ぎる)
ネイスミスは『武器職人』であり、『個人』だと拳二は言っていた。
加えてアームズはバーミリオン社の最新兵器のテスト要員であるということ。
(装備している武器だけでなく、鎧もバーミリオン社製なのか……? Vウェポン、今まで見たことは無かったけど……)
エリア3でガンツの工房にいた頃は、たくさんの武器を修理してきた。
そのほとんどがバーミリオン社製の武器だったが、あくまで緋色合金製の一般的な代物ばかりだったので、てっきりVウェポンはネイスミス製しか無いものだとばかり思いこんでいた。
「……Vウェポン、ますますよく分からなくなってきたな――」
ジンが溜息交じりに呟いた途端、空輸機が急加速した。
機内には強い振動が発生し、ジンは大きく体勢を崩す。
「な、なんだ!?」
「わわっ......ミシェルさんっ……!!」
サラはすぐさまミシェルの体を押さえる。ベッドは固定してあるが、ミシェルの今の状態では振動に抗えず、ベッドから転落してしまう。
「……待機状態を解除。戦闘モード起動」
轟音を伴う揺れの中にあっても、確かに響く機械音声。
重量による安定性のおかげか、アームズはやはり微動だにしていなかった。
しかしこの突発的な加速は確実に異常事態。装甲の隙間は頭部だけでなく、様々な部位に赤色の光を灯してアームズも警戒態勢に入る。
そんな中パイロットによる機内放送が流れ、明らかに恐慌した声色が事態の緊急性を4人に伝える。
『ハウンドの諸君に緊急連絡! 大変だ、飛行型の喰らう者に追われている!!』
――確かにこの上ないピンチ。
ここは上空……撃墜されれば当然生き残る術は無い。
サラは横になっているミシェルに覆いかぶさるようにして、ベッドからの転落を防いでいた。
その時たまたまサラの腕に柔らかなものが当たっていた。
サラ(くっ……こんな状況で不謹慎だけど……ミシェルさん、見た目より胸が大きい……っ!!)




