Bye now-2
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――場の空気が一変し、一気に重苦しいものになる。
黒き鎧を纏った者。いや、あの時は遠くて細かい部分が見えなかったが、この距離なら良く見える。
鎧というよりは機械……精巧なロボットのように思えるほど複雑で、直線的で、攻撃的な外見。
ジンや刀也と同程度のサイズだったが、装甲の厚さや見たことの無い巨大な銃器類の存在もあって存在感は圧倒的。ジンには鎧の者が人間か機械か判断できない。
(この造形……持っている武器も、あの時の飛行能力も。俺の兵器への技術や知識じゃ理解できないし、あれを作るのは無理だ……)
ジンは技術者としての知識を持つが故に、あの鎧に目を奪われてしまう。
――が、どんなものでどんな力を秘めているのか理解できない。
それほどまであの鎧は高い技術の結晶だった。車両や飛行機がまるで玩具に見えてしまうほどに。
「ちっ……何しに来やがった機械野郎。まさか世間話ってわけじゃないよな」
最初に口を開いたのは拳二だった。どうやら知り合いらしい。
しかし拳二の口調は強く、どこか苛立ちや敵意すら感じられる。
しかし拳二の言葉をまるで無視するように、鎧の者はジンの方を向きながら告げる。
一切の感情を感じ取ることが出来ない、機械音声の淡々とした言葉。
「ランク23と代理人、あとそこの怪我人。エリア1に帰還するなら私も同行する」
「え……」
全く予想していなかった唐突な展開。
鎧の者はそれだけ言い残すとすぐに部屋から出ていった。
「クソ、相変わらず生意気ってレベルじゃ無ぇな、あいつは」
拳二が不機嫌丸出しで呟く。
「拳二さん……あの人と知り合いなんですか?」
「ん? ああ……知り合いっつーか……まぁ刀也もあいつのことは知ってるから、詳しくはそいつに聞いてくれ。俺は外で準備をしてくる」
なにやら拳二と鎧の者には確執があるように見える。
さっきの態度からはむしろ拳二が一方的に嫌っているようだったが……。
「刀也も知ってるってことは……」
「お前もお前で相変わらず察しが良い。アールミラーも、あいつのことは覚えておけ。あいつは俺たちと同じ、ハウンドに所属する数字持ちの1人だ」
「やっぱりそうか……」
実のところジンは鎧の者の所属に予想が立っていた。
自分たちの救援に現れ喰らう者であるロゼを圧倒した、恐るべき戦闘力。
最初はバーテクス正規軍の所属かと思ったが、それでは拳二が過剰に反応していたことに説明がつかない。もっと近しい間柄でなくては、ああはならないだろう。
「そうだったんですか……でもあの鎧の下はどんな人なんですか?」
サラが首を傾けながら刀也に問いかけた。
当然その疑問はジンも抱いており、ハウンドの所属でないミシェルも気になっている様子で刀也に視線を向ける。
「……実はな、分からないんだ。あいつの素顔を見た仲間は1人もいない。年齢も性別も名前も……人間か機械かさえも分からない。
しかし分かっていることもある。1つはあいつの武装は全てバーミリオン社の実験兵器で、どうやら運用テストのためにハウンドへ所属していること。
もう1つあいつの高い戦闘力……というよりは殲滅力か、それは多対一において無双の力を発揮する。その性質はハウンドにとっても軍にとっても、非常に高く評価されていてな。ハウンドに所属してたった半年。その期間だけであいつは『ランク3』にまで至った、ということだ。
そのあまりにも人間離れした戦闘スタイルからか、他人からはこう呼ばれているようだ。
――『兵器』と」
「ではな。……といってもまたすぐに会える気もするが。俺たちはとにかく連中の『組織』を追う。各地の代理人と連携し、何か掴んだらすぐ知らせる」
「……ま、今回は苦戦したからな。借りを返す意味でも派手にやってやるぜ」
刀也と拳二は空輸機の後方ハッチでジンとサラに別れの挨拶をしている。
機内奥には固定された簡易ベッドに横たわるミシェルと、置物のように佇んでいる鎧の者……アームズがいた。
「どうか気を付けて下さい、刀也さん、拳二さんも!」
「俺も体勢を立て直したらすぐに戻るよ。拳二さんも、また!」
ジンたちは挨拶を終え、空輸機はエリア1へ戻るために飛び立った。
ミシェルの治療にジンの武器の調達、それに本部のマクスへの詳細な報告も必要だ。
当初の予定していた作戦とは違った形になってしまい、初任務にしてかなりの苦戦を強いられたジンだったが……。
得るものはあった。ロゼという強敵の打倒に加え、敵は『組織』の存在を明るみに出した。
しかし、後悔もあった。敵を打倒したのは結局はランク3の功績であり、ミシェルには取り返しのつかない大怪我を負わせてしまった。
(喰らう者を殺すためには……もっと強くならないと……)
ジンは曲がりなりにも達成した初任務に手応えを覚えつつも、内心では焔を滾らせていた。
己の無力を呪い、更なる力を求める……その思考の根幹にある強い感情。
復讐の赤黒い焔を、心の中に燃やし続けた。




