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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-4 Deadly Rose
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Deadly rose-2

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 ――カテゴリーBの喰らう者(イーター)

 人間たちがそう呼称しているそれは、私たちが『成体』になる過程における中途半端な段階のことを指している。

 人間を喰らい続けて少しづつ私たちは進化していく。

 その果てに完全なる人間体と、圧倒的な力を持つ変異体を持ち合わせた成体……人間たちで言うところのカテゴリーAになることができる。


 しかし、私たちにも素質や才能の概念は存在する。

 ほんの数人を喰らうことで成体になれる個体がいれば、何百人を喰らい続けてようやく成体になれる個体もいるのだ。

 もっとも、それらは成体になれるだけまだ十分に優れた個体だ。

 

 ある時から行動を共にするようになったレイザーとアリゲイター。

 現に彼らは私が喰らってきた人間の半分にも満たない数で、私と同じ進化の段階まで上がってきている。

 特にレイザー……彼の成長速度は凄まじい。

 人化を果たしてから数日しか経過しておらず、食事に関しては死体はまずいという理由で選り好みしている始末。

 それでも彼の成長速度は早く、私など比較にすらならなかった。

 アリゲイターにも程度の違いはあれど、同じことが言える。


 そんな彼らが私に同行するようになって、若者の進化を助けてやりたいと思うと同時に、どうしようもない嫉妬の念を抱くようになった。


 どうして彼らにはあって、私には無かったのか。

 彼らよりも私の方が強いのに。

 彼らよりも私の方が賢いのに。

 彼らよりも私の方が食べているのに。

 彼らよりも私の方が……私の方が……。


 ――私の名前はロゼ。

 人化してもう50年以上人間を喰らい続けている私には、もう進化の余地は無い……そう誰かに言われているが如く、長い間姿形を変えられずにいた。






 

 


 「おいおい……コイツは……!?」


 「ここまで大きな個体は、流石に初めてだな……」


 刀也と拳二は目の前の異形に後ずさりながら驚愕の声を漏らす。

 ジンも2人同様に後ずさり、驚愕のあまり声が出せなかった。


 遂に姿を現したロゼの変異体。妖艶な女性の姿は跡形も無く、べノムによって生み出された植物が怪物の体を徐々に形作っていく。

 強靭なツタと凶悪な棘、そして所々に咲き誇る真っ赤な薔薇の花。

 アリゲイターよりも遥かに巨大になったロゼを前に、3人はただその異形の姿を見上げることしか出来なかった。


 「さぁ……抗って見せなさい……!!」


 響き渡るロゼの声。

 あの巨体のどこから聞こえた声だったのか、3人共判断できる猶予は無かった。


 叩き付けられたのはロゼの体から生えている巨大なツタ。

 建物を震わせるほどの重量とスイングスピードを伴った一撃は、簡単に大地を抉り取る。

 3人はそれぞれ大きく跳躍して回避したが、分断されてしまった。


 「ち……ならば断ち斬る!!」


 刀也は解放し光り輝く刀を振るい、ツタの切断を試みる。

 対象が大きくなった上に人間体の時のように鞭として扱っている訳では無い。

 巨体故に動きは鈍く、大振りの攻撃を当てるのも難しくないと判断した。


 (動作の隙は大きいが、より強い斬撃を叩き込む……!!)


 白い閃光が走る。

 一度刀を鞘に納め、狙いを澄まして放った神速の居合い斬り。

 ロゼはその攻撃速度に反応できず、直撃を受ける。


 「む……!?」


 斬撃の直後、刀也に襲い来る巨大な茨。

 刀也は刀でツタの軌道を逸らしながらなんとかやり過ごす。


 ツタには刀傷こそ付いていたものの、切断には至らなかった。

 

 (厄介だな……巨大になって硬度は増しているという訳だ)


 棘がいくつか体を掠めており、切り傷が刻まれていく。


 「刀也、下がれ!!」


 「! 承知……!!」


 唐突に拳二が刀也の前に飛び込んだ。

 拳二の狙いは、刀傷を付けた刀也の目の前にあるツタだった。

 刀也も瞬時にそれを理解し、素早く後方へ一歩後退する。


 (切れ込みが入ってりゃ、折れるだろ……!)


 拳二が渾身の蹴りを叩き込む。

 解放されたバルバロスから放たれる青い光が軌跡を描いた。

 すると切れ込みの部分が衝撃に耐え切れず、そこから大きな音を立てて折れた。


 「っしゃあ! 刀也、この調子でへし折っていくぞ!」


 「俺が奴の茨に刀傷を付ける……片っ端から折っていけ!」


 1人では無理でも協力すればダメージを与えられる。

 攻略の糸口を見つけ、同じ方法で攻撃していく指針を立てたその時。


 「折られるとは思っていなかったけど……ふふ、それじゃ私は殺せないわよ?」


 ロゼの体から迸り、地面に伝っていくオーラ。

 仲間を逃がした時と同じように、べノムを流し込んでいく。


 その直後、地面から突き出たのは、本体に生えているものと同様のツタ。

 人間体のときに突き出したものよりも当然ながら遥かに大きい。

 ツタは2人を囲むように突き出し、逃げ道を失った。

 矮小な人の身を嘲笑うかのように蠢くそれらは、今にも一斉に襲い掛かってきてしまいそうだ。


 「この形態でもそれが使えんのかよ……!!」


 「まずいな……こう囲まれては避けられんぞ!」


 刀也が斬り込み、拳二が折る……ツタ1本に対して2回の攻撃が必要な以上、数本同時に対処することは難しく、ましてや満足に動き回れるスペースを奪われてはこの方法は使えない。

 ツタの破壊が間に合わず、ただ潰されてしまうだろう。

 刀也と拳二は背中を合わせ、状況打破の方法を模索するが……そんな猶予を与えるロゼではない。


 「まぁ……善戦した方じゃないかしら、あなたたち。でもこれで終わりね、2人まとめて潰れなさい。残った赤目の坊やは後でゆっくり……」


 「――燃えろ」


 ロゼの言葉をジンが遮った。

 ブレードに焔を纏わせ、刀也と拳二を囲っているツタを斬りつける。


 ジンの異能力である特徴的な赤黒い焔。

 斬撃に伴う爆炎がツタを破砕し、包囲に容易く穴を開けた。

 

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