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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-4 Deadly Rose
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Deadly rose

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 「な……レイザー!?」


 アリゲイターは慌てて飛来するレイザーの体を受け止めた。

 レイザーの体には上半身を中心に無数の弾痕と刀傷があり、出血もおびただしい。

 そして何よりも意識が無く、異形の解除も中途半端な状態だった。


 この状態が指し示すことはたった1つ。

 レイザーは敗北したということだ。


 (そんな馬鹿な……あの片目の赤い坊や1人にやられたというの?)


 これには流石にロゼも動揺を隠せない。

 思わず刀也と拳二の方から視線を逸らし、レイザーの状態を見ていた。


 2人への警戒の薄れた明確な攻撃のチャンス……しかしその瞬間に攻撃は行われなかった。

 何故なら刀也と拳二も驚愕していたからだ。

 

 場の空気が凍り付き、誰もが動き出せない中もう1つの人影が飛来した。

 独特な赤黒の色彩が入り乱れる焔を纏ったそれは、刀也と拳二の少し後ろに大きな衝撃を伴って着地した。


 「何とか合流出来たな、刀也。それに拳二さんも」


 「ジン……お前は……」


 思わず刀也は驚嘆の声を上げてしまう。

 ジンの体に纏いつく焔を目にしたのは今を含めて3回目だが、今回は見てきた中でも最も焔の勢いが強く、より強力な殺気を放っていた。

 それでいて表情は無に近く、淡々としていたので何かが異質だと感じてしまった。


 (俺とやった時よりも焔が濃い……なるほど、喰らう者(イーター)相手だとここまで()()()って訳か)


 拳二も声こそ上げなかったが、少なからず動揺していた。

 それほどに今のジンの焔と殺気は凄まじく、そこに迷いはまるで感じられない。


 「1体はもう戦闘不能……このまま一気に殲滅しよう」


 そう言ってジンはブレードを構えた。


 「そうだなぁ、3対2なら確実に狩れるだろうよ」


 「……ああ、確かにそうだな。好機を逃す手は無い」


 刀也と拳二も少し遅れてそれぞれ得物を構える。


 敵は既に戦闘不能のレイザーと、満身創痍の状態にあるアリゲイター。

 ロゼという女は変異体になっていないが、赤目の制御が出来ていないことから、他の2体と同じカテゴリーBの個体であるのは間違い無い。

 であれば変異体になったとしても、ジンが合流した今となっては完全にこちら側が上回っている……3人はそう確信していた。


 しかしどんな事柄にも例外は存在する。

 ジンの存在そのものが人間として例外であるように、喰らう者(イーター)側にもまた例外と呼べるものはあるのだ。


 ――否、喰らう者(イーター)にとっては例外ですらないかもしれない。

 何故なら喰らう者(イーター)に設定されているカテゴリー、それは人間が一方的に定めている基準でしかないのだから。






 ロゼは1つの決断を下し、小声でアリゲイターに言った。


 「――アリゲイター、ここは私に任せて行きなさい」


 「なに……? ロゼそれは……」


 アリゲイターは思わず聞き返してしまう。

 深く考えずとも、その言葉の真意はすぐに理解できるものだったからだ。


 「もう一度言うわ。アリゲイター、レイザーを連れて『組織』まで戻りなさい。これは命令でもあり……私の願いでもあるわ」


 「だが……それでは確実にロゼは」


 「そうね。そうだけど……あなたがいてもこの戦力差は覆せないわ。もう邪魔にしかならないことは分かってるでしょう?」


 「それは、そうだが……」


 自分以上の実力者が2人に加えて、レイザーを倒した正体不明のもう1人。

 死にかけで意識の無いレイザーと満身創痍のアリゲイター、そしてロゼ。

 明らかな数的不利な上に、向こうの実力者に拮抗できるのはロゼしかいない。


 アリゲイターはロゼの言う通り、理解していた。

 もうこの状況は敗北にしか転がっていかないことを。


 「だから頼んだわよ。私と違ってレイザーはきっと『成体』になれる。その時まで、あなたが支えてあげなさい」


 穏やかな笑みを浮かべながらロゼは言う。


 「……分かった……任せてくれ、レイザーは必ず連れて帰る」


 アリゲイターは己の力不足を噛みしめるように牙を食いしばり、レイザーを抱えて背を向け駆け出した。


 (それでいいわ。あなたも『成体』になれる可能性は十分にある。だから今は、逃げてもいいのよ)


 自分を置き去りにする仲間の敗走。

 ロゼは遠ざかる背中を羨望の眼差しで見送った。


 




 「逃げた……!? チッ、俺が追いかける、刀也とジンは女の相手を――」


 「行かせないわ、3人まとめて私と踊りましょう?」


 咄嗟に走り出した拳二を足止めするように、地面から大量のツタが突き出る。

 その攻撃は的確で、拳二を後退させた。


 「てめえ……随分と味な真似してくれんじゃねえか」


 拳二はバルバロスを構えてロゼの方に向き直る。

 

 「落ち着け拳二、撤退ならそれで構わん。残ったこの女を殺してそれで終わりだ」


 刀也が拳二に追跡の制止を促す。

 この場は情報入手のためにも生存者の保護が最優先、刀也らしい冷静な判断であった。


 「しかし貴様、仲間の為の足止めを買って出るとは喰らう者(イーター)の癖に見上げた奴だな」


 「あら、嬉しいことを言ってくれるのね。喰らう者(イーター)のことは、まるで感情の無い獣のように思っていたのかしら?」


 「……思っているさ。貴様らは本能のままに人間を喰らう化物……無論お前もそうだろう」


 刀也はそう言って強い憎しみの念を露わにする。


 「『本能』……そうね、確かにその通りかもしれないけど、何事も決め付けてはいけないものよ?」


 「何を……」


 「人間という生き物は本当に視点の狭い生き物よね。喰らう者(イーター)のこともそうだけど、何よりこの状況も()()()()()()()()()


 ロゼがそう言った瞬間、大量のツタが体から突き出した。

 異形への変身……その大きさはアリゲイターをも遥かに上回り、その場を絶望に染め上げていく。


 「さぁ……私のダンスを披露しましょうか?」

 

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