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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-4 Deadly Rose
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Isolation-3

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 「どうしたのかしら? あなたの力、そんなものではないでしょう?」


 「ち……」


 ロゼは棘の生えたツタを扱い、刀也と剣戟を繰り広げていた。

 そのツタは刀也の刀を以ってしても切断できない硬度、それでいて鞭のようにしなる特殊な性質をもっており、変則的な軌道も相まって苦戦を強いられていた。


 (やはりこの女、かなりやる……鞭使いとは厄介だな)


 刀也はどうにも攻めあぐねていた。

 鞭使いなど戦闘経験が無く、迂闊に踏み込むことが出来ずに防戦一方となっていたのだ。


 「来ないのなら、このまま押し切らせてもらうわ」


 ロゼはそう言って攻撃の勢いを増していく。

 一打一打の威力は弱いが、予測困難かつ多角的な連続攻撃の前では足が止まるのは必然。

 あのツタに生えている棘……いくら威力が弱くとも、直撃は危険だと刀也は警戒していた。


 「――致し方無し。『神薙』を解放させてもらう」


 刀也の持つ刀が眩いほどの白い光を帯びた。

 その斬撃の威力は大幅に上昇し、鞭を斬り払うことでロゼの体を後方に弾いた。


 「……やっと出たわね」


 ロゼは笑顔を浮かべながら言った。

 その表情はまるで刀の解放を待っていたかのようにも見えた。


 (集落を突破した時にも思ったが……あのツタ、やはり断ち切れんか)


 刀也は内心で驚愕していた。

 Vウェポンの解放による武器性能の向上……刀也の持つ神薙はVウェポンとしては相当に旧式であり、拳二の持つバルバロスのような変形機構を持たない。

 しかしそれ故に強化される内容は単純至極、武器の切れ味と威力の向上のみに特化している。

 

 そして今、ロゼの持つツタはその斬撃を完全に防いだ。


 (まだ俺は()()に及ばないという事か……しかし得物の差は無いということは、技量で上回れば問題ないという事だ)


 神薙を解放したことにより奴のツタを弾けるのなら、少なくとも互角以上には持ち込める。

 鞭のような攻撃方法とその軌道にも慣れてき始めた頃合いだ。

 そう判断した刀也は攻めに転じることを決め、素早く前に踏み込んだ。






 「――っとぉ!! 危ねぇな!」


 アリゲイターの大口による噛み付きが襲い来る。

 それを紙一重で躱した拳二は、カウンターの打撃を相手の側頭部に叩き込み、バックステップで距離を取った。


 「本当にお前は素早いな……レイザーにも劣らない速さだ」


 打撃に怯みながらも、アリゲイターはゆっくりと拳二に向き直りながら言った。

 既にバルバロスは解放済み……どうやら大振りの一撃でないと、大したダメージは与えられないようだ。


 「ハッ……お前こそ大したタフネスだな。並みの喰らう者(イーター)なら今のでぶっ倒れるもんだが」


 「生憎耐久力には自信があってな。ゆっくり追い詰めて喰わせて貰うとしよう」


 巨大な体躯に圧倒的な膂力。深緑色の強靭な鱗。そして最も厄介なのがあの鰐の如し大顎だ。

 恐らく一度噛みつかれたら最期、人間の力では振りほどくことは出来ないだろう。


 「――なら話は早え。お前が死ぬまで叩き込むだけだ」


 拳二がそう言った瞬間、脚部に装備しているバルバロスが腕部同様に青い光を放出した。


 「オラァ!!」


 電光石火の飛び蹴り。

 その速さにアリゲイターはまるで反応できず、何の防御も出来ず蹴りは腹部に直撃した。

 アリゲイターは吹き飛び、地面を転がりながらもなんとか体勢を立て直す。


 「グッ……この威力は……」


 アリゲイターは腹部を抑えながら、苦悶の表情を浮かべ呟いた。

 よく見ると血が口から流れている。

 不意を突いた突然の飛び蹴りは、どうやら流石に効いたらしい。


 「今のを受けても立ち上がるのは驚いたが……関係無ぇ、このまま削り殺してやるよ!!」


 拳二はそう言ってすぐさま追撃をするべく距離を詰める。

 





 (少しまずいかもしれないわね……)


 ロゼは刀也の鋭い剣戟をやり過ごしながら、隣のアリゲイターの様子を窺っていた。


 あちら側の戦況はどうやら劣勢。

 相手の数字持ち(ランカー)とは明確に実力差が見て取れる。

 持ち前のタフネスで何とか喰らい付いてはいるが、あのままでは敗北するだろう。


 対してこちら側の戦況は完全に膠着している。

 こちらの剣士もかなりの実力で、見た所あちらの格闘家とほぼ同等の実力があるだろう。

 何よりもあの剣が光りだしてから斬撃の威力が高まり、剣士自身も積極的に攻めてくるようになって非常に厄介だ。

 このレベルの相手には、人間体のままで戦うには決定打が足りない。


 (とすれば、レイザー次第かしら……あちらの戦況が分かればいいのだけれど……)


 ジリ貧で劣勢なこの状況、打開するにはもう1人の仲間であるレイザーが必要だった。

 時間を稼いで合流を待ち、数的有利をとって一気に制圧する。

 それが一番の得策と判断し、ロゼは得物を手放し両手を地面に付けた。


 「……!! 拳二下がれ!!!」


 刀也は危険な何かを直感し、拳二に怒号にも似た声で叫んだ。


 その刹那、大量のツタが地面から勢いよく突き出てきた。


 「おおおおお!? なんだこりゃ!!?」


 そのツタはアリゲイター側にも突き出ており、拳二も慌てて後退した。

 強引なロゼの攻撃によって両者共に距離が離れ、睨み合いになる。


 「アリゲイター、大丈夫かしら?」


 「……正直助かった、ロゼ。あのままでは恐らく負けていただろう」


 無傷のロゼとは対照的に、アリゲイターはボロボロになっていた。

 そんなアリゲイターの様子を見たロゼは、小声で言った。


 「レイザーの合流を待つわ。それまでは私の後衛に徹しなさい」


 「了解した……済まない、俺の力不足だ」


 「ふふ……別に良いのよ、あなたはまだ()()()()()()


 申し訳なさそうに謝罪する大きな体。

 少しだけそのギャップに笑いながら、ロゼはアリゲイターの前に立った。


 ――ロゼの考えの中には、レイザーの敗北は微塵も入っていなかった。

 何故なら集落で初めてこの一行と対峙した時、脅威になりそうな者は今対峙しているこの2人だけだと思っていたからだ。

 黒いスーツを着ていた女は明らかに戦闘員ではなかったし、近くにいた青年も気になる点はあったが大した殺気は感じなかった。

 持っていた銃器は強力で、レイザーに傷を与えたのは確かだが、1対1で本気になったレイザーを上回るとは到底思えなかった。

 戦闘経験は浅く、今の実力はアリゲイターにすら届かない。それでもだ。



 何故なら、レイザーは()()()()()可能性があるのだから。



 しかしそう考えていたロゼを嘲笑うかのように、現実は予測が出来ないもの。

 重い銃声と共に司令部の窓が砕け散り、何かが猛烈な勢いで飛んでくる。


 その何かとは、人間体に戻りつつ、血に塗れ気を失っているレイザーの体だった。


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