Isolation-2
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建物内に反響し、響き渡る重い銃声。
ジンはレイザーとの間合いを調整しつつ、左手の散弾銃を放つ。
「直撃さえしなければ、そんな銃怖くないね!!」
レイザーはまるで重力に逆らっているが如く、縦横無尽に跳ね回る。
壁や天井を鋭く変化させた脚部で捉え、機敏な方向転換と加速を繰り返しているようだ。
人間の動きとはかけ離れた変則的な回避……いくら散弾とはいえ、硬質化した手足を掠めることしか出来ない。
遂にジンは追いつかれ、レイザーの大鎌のような腕の一振りに晒される。
軌道をしっかりと見切り、ブレードでガードする。
「くっ!!」
かなりの膂力。
ジンは体ごと大きく後方へ弾かれ、再びレイザーとの距離が遠くなった。
――否。
ジンはガードの瞬間に合わせて、自ら後方へ跳躍しているのであった。
(ちっ……ボクとの接近戦はやりたくないってことか)
レイザーは変貌したその姿であっても明らかなほどに苛立っていた。
初撃以降、ジンは接近戦を避けるように立ち回っている。
得物のリーチ差が大きく、ジンの持つブレードでは爆炎を発生させる斬撃を以ってしても、分が悪いと判断したのだ。
初撃の爆炎はまるで無視されるかのように防がれ、それどころかジンの視界を奪ってしまう。
レイザーの刃物のように変化した手足……相当な硬度を誇るようで、ブレードどころか散弾銃ですら弾いている。
(奴の上半身はまだ人間体の名残がある……そこに撃ち込めれば……!)
ジンは狙い目を定めるために敢えて中距離戦を維持し、防御と回避に徹底していた。
――しかし、観察はもう十分。
ここからは攻めに入る……そう言わんばかりの殺気を放ち、レイザーを睨み付ける。
(目が変わった。なら来るか……切り刻んでやる)
左手に持った散弾銃は、骨董品のようなレバーアクション式。
しかし片手でそれぞれブレードと銃を扱うジンにとっては、それが有利に働いた。
散弾銃を片手のみで器用に回転させる。
レバーアクション式ならではの、片手で素早く次弾装填が出来る一種の技。
遠心力を用いてレバーを作動させて次弾を装填する、回転装填を行い、同時にレイザーへ突進した。
この技は誰に教わった訳では無く、銃器の構造を正確に掴んでいたジンが咄嗟に行ったものであった。
結果として技は成功……次弾はしっかり装填された。
ブレードと大鎌が再び衝突する。
しかし今回ジンはブレードに焔を纏わせておらず、爆炎が噴き出すことはなかった。
金属の衝突音が繰り返し何度も響く。
レイザーの腕は長く、明らかにリーチに差があった。
ブレードを突き立てるにしても散弾銃を撃ち込むにしても、奴の嵐のような斬撃を掻い潜って間合いを詰めなければ、決定打にはなり得ない。
(やはり普通に打ち合っていては、こちらの間合いが一歩遠い……仕掛けてみるか)
ジンはここで敢えてブレードに微量の焔を纏わせる。
レイザーの繰り出してくる斬撃の1つにタイミングを合わせ、ブレードを思い切り衝突させた。
「ちっ……」
起きたのはほんの小さな爆発。
しかしその爆発はジンの振るったブレードの衝撃を底上げし、レイザーの腕を弾き返した。
レイザーは少しだけ体勢を崩す。その少しをジンは見逃さない。
(ここだ……!)
ジンはその隙をついて、更に一歩間合いを詰める。
この間合いであれば、レイザーの体にもブレードは十分に届く。
「この間合いなら斬れる!! ……とか思ってるんだろ? ボクを見くびるなよ……!」
レイザーがそう言って繰り出したのは、刃と化した脚部による足払い。
その足払いによって、不意を突かれたジンの両足は切断される……レイザーはそう確信していた。
しかし。
「――ああ、それを待ってた」
ジンはブレードをその場で床に突き立て、杖のようにして跳躍する。
突き立てたブレードによって足払いは防がれ、それに動揺したレイザーは無防備な姿を一瞬だけ晒してしまう。
ジンは空中で散弾銃を構え、狙いを澄ます。
狙うは胸部の中心……散弾である以上、小さな頭部ではなく確実に狙える『心臓』を撃つ。
――再び響く重い射撃音。
近距離での全弾命中、レイザーはあまりの威力に勢いよく吹き飛んだ。
しかしジンは警戒を解かず、再びスピンコッキングで次弾を装填する。
「見くびっているのはお前だ、レイザー。その足払いは一度見ている……俺は後方でただ漠然と戦いを見ていた訳じゃないぞ」
レイザーはゆっくりと立ち上がり、ジンの方へ向き直った。
胸部には多数の弾痕と血が滲んでいたが、致命傷にはなっていないようだ。
(どうやら手足ほどでないにしろ、硬質化しているようだな……最初の腹部への銃撃も、同じように防いだんだろう)
「よくも……このボクに、2回も傷を負わせたな……!」
「このボク、か……お前がプライドの高い奴なのは分かったけど、無意味だよ。ここでお前は殺す」
「オオオオアアアアアアア!!!」
絶叫しながらレイザーはジンに突進してくる。
先程の変則的な動きは無く、膂力に頼り切った猛突進だ。
(完全に頭に血が上ってるな……こうなればこっちに分がある……!)
ジンは冷静な表情をそのままに、ブレードを振るう。
前線基地への突然の奇襲。
ミシェルの話によると、それは何の前触れも無く唐突に起きたらしい。
爬虫類のような見た目の巨大な喰らう者。
手足を刃に変形させながら戦う、小柄な喰らう者。
そして見た目は麗しい女性……しかし薔薇のツタのような棘のある植物を自在に操る異能力を持っており、彼女もまた確実に喰らう者。
その3人が正面から堂々と攻めてきました。
もはやそれは奇襲ではなく蹂躙に近く、ここの戦力では刃も立たなかった。
仕方なく生き残った兵士たちが撤退を決めた時、援軍要請の為に情報室に向かっていた私はは取り残されてしまったんです。
端末による通信で仲間はこう言いました。
『必ず助けに戻ってくる。占領された基地を取り返すまで、どうか隠れ生き延びてくれ』と……。
戦況はあまりにも一方的で、彼らとはとても合流出来そうになく、私はその言葉に何の反論も出来ませんでした。
だから援軍要請を通信した後は、扉に鍵を掛けて、息を殺してここに隠れていました。
見つかったらそこで終わり。
こんな扉、少しの盾にもならないのに……それでも希望は捨てませんでした。
きっと、仲間がきっと戻ってきてくれる……それだけを信じて。
「――なるほど、大体分かりました……本当に、よく生き残ってくれましたね……ありがとう」
サラは心底ミシェルに同情した。
救援依頼を出したのは彼女。
しかし逃げ帰る兵士が『基地を取り戻すまで』と言ってしまったが故に、基地を『占領』されているということになっていたのだ。
しかし実際のところ、行われたのは占領ではなく『蹂躙』……。
彼ら3人は基地に興味を示さず、喰い散らかすだけ喰い散らかした後、脱出した兵士の後を追った。
ミシェルは大粒の涙を流しながらも懸命に話してくれた。
サラはそんなミシェルに礼を言った。
サラは監視映像を見ながら、ジンの心配をした。
映像に映っているのは屋外で戦闘を繰り広げる刀也と拳二。
敵は爬虫類のような大男と、派手な格好をした女性。
カメラの監視の外でジンは戦っている。
サラにはそれが、どうしようもなく不安だった。
(相手は3人でここを落としてしまうような化け物……ジン君、どうか気を付けて……!)




