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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-4 Deadly Rose
36/135

Isolation

更新しました!良かったら覗いていって下さい!



 「――――みーつけた」


 「!! お前は……確かレイザーとかいったか……」


 司令部内の通路を走るジンの目の前に姿を現したのは、レイザーと呼ばれていた小柄な男。

 狂気的な笑顔を浮かべながら、真っ直ぐに歩いて来る。


 「はは、アリゲイターと呼び合ってただけなのに、覚えてくれたんだ? でもごめんね、外の2人とは合流させないよ。ボクに傷を負わせたんだ、君にはしっかり償ってもらわなきゃね?」


 そう言ってレイザーは自らの腹部に触れた。

 服には大穴が開いており、そこから覗く腹部には傷が無い。

 しかし服の穴の外側は広範囲が赤く滲んでいる。


 (血の跡は服に残ってるけど、体は治癒してるみたいだな。どうやら喰らう者(イーター)は急激な治癒能力をどの個体も備えてるみたいだ)


 ジンはレイザーの腹部の状態を見て、治癒能力は自分だけの異能力ではないことを理解する。


 右手にはブレード、左手には散弾銃、体に纏うはあの赤黒い焔。

 真紅の両瞳でレイザーを睨み付け、完全な戦闘態勢に移行する。


 「――俺はお前ら喰らう者(イーター)に全てを奪われ、代わりにこの力を手に入れた……ならこの力と命はお前らを殺すためだけに使おう。ようやく始まるんだ、俺の復讐が」


 ジンは自らの戦いへの覚悟を示すように呟いた。

 纏う焔は勢いを増していき、その場に殺気が満ちていく。


 ――今は、これでいい。

 歩むべき『道』はまだ分からないけれど、きっとその道に喰らう者(イーター)は邪魔だ。


 「はぁ? なーにゴチャゴチャ言ってんのさ、訳分かんないし……まぁでも、僕と殺し合ってくれるなら、なんでもいいよ」


 レイザーもジンの殺気の昂りに呼応するように、自らの体を変化させる。

 両腕・両足は金属質な光沢を持つ、鎌のような形態になっていく。

 拳二と交戦していた前回に比べ、変化の規模が大きい。

 小柄な体はみるみる大きくなっていき、骨格で造形された蟷螂(かまきり)のような異形の怪物に姿を変えた。

 人の形をかろうじで留めているのは、上半身の胸と頭のみだった。


 (カテゴリーBの喰らう者(イーター)……俺の焔のような異能力ではなく、体そのものを異形に変化させて戦う傾向がある……確かにマクスさんの教えてくれた通りみたいだな)


 「その瞳の色に、よく分からない焔の力……ボクに殺されるまで、せいぜい足掻いてみせろよなああああ!!!」


 レイザーはその巨躯からは信じられないほど速く、ジンに向かって突進してきた。

 速度を維持したまま振るわれる、巨大な鎌と化した腕。


 (速いしきっとこの一撃は重い……でも!!)


 ジンは動じることなく、ブレードに焔を纏わせながら思い返す。


 刀也の一閃の方が鋭かったし、拳二さんのラッシュの方が早かった。

 あの日からまだ数日しか経っていないのに、いくつもの戦いを乗り越えてきた。


 刀也にはバッサリ斬られて、拳二さんには散々殴られて……それにあの日なんか、胸を貫かれて殺されかけた。

 思い返してみれば負けてばっかりだ。

 でもこの苦い経験をなんとか乗り越えて、今ここに立ってる。


 ランク23、ハウンドの一員として。




 臆するな、ランク23。

 目の前にいるのは紛れもないお前の敵だ。

 その数字を手にし、この戦いを邪魔するものはいない。

 ならば、お前はいよいよ勝たなくてはならない。

 敵を殺さなくてはならない。


 ――今が、その時だ。

 飛び立て、青年よ。




 「おおおおおおおお!!!」


 ジンの気合の乗った叫びと共に、焔の刃が振るわれる。

 レイザーの巨大な鎌にも劣らない、強力な一撃。


 2つの刃の衝突と同時に、大きな爆炎が上がった。






 「始まったみたいですね……」


 サラは建物に響く衝撃を感じながら呟いた。


 「とにかく……私たちは事が済むまで監視映像で戦況を把握しながら待機です。良かったらその間に、少し話しませんか?」


 外で激しい戦闘が起こっているにも関わらず、サラは笑った。

 保護した女性を悪戯に怯えさせてはいけないと判断し、柔らかい物腰で接したのだ。

 

 その判断は功を奏し、女性は恐る恐る話し始めた。


 「わ……私の名前は『ミシェル・マローン』といいます……バーテクス正規軍所属、『通信技術師』です……」


 「通信士……女性では珍しいですね……っと、私はサラ。サラ・アールミラーです。ハウンド所属の代理人(エージェント)です」


 互いに自己紹介をし、監視映像を見守りつつもサラは話を進めていく。


 「ミシェルさん。状況が状況なので、単刀直入に聞きます。この基地で一体何が起きたのか、聞かせて貰えませんか?」


 「も、もちろんです! でもその前に、私からも聞いていいですか……? あなたたちが救援に来てくれたのなら、脱出したこの基地の兵士達と合流した筈です……彼らは……どこに……?」


 ミシェルは薄々感付いているのだろう。

 弱々しく今にも消えてしまいそうな声色が、サラにそう思わせた。


 「彼らは合流地点で襲撃されたようで、私たちが着いた時には、もう……」


 「そう、ですか……そんな……」


 ミシェルの目から涙が溢れる。

 彼らの救援を信じて、ずっとここに隠れていたのだろう。

 その心中は察するに余りある。さぞ孤独だっただろう。


 だがしかし、サラには理由が分からなかった。

 彼女を1人残して脱出した兵士たちの行動の理由が。


 「でも何故、ミシェルさんはここに1人残っていたのですか……?」


 ミシェルは涙を拭い、振り絞るような声で話し始めた。


 「それも含めてお話しします。この基地で起きたことの全てを――」


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