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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-4 Deadly Rose
35/135

Quiet base-3

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 (この気配……ジンか?)


 司令部の方から突然に強い気配を感じ、刀也は立ち止まった。

 それと同時のタイミングで端末が音を鳴らす。サラからの通信だった。



 「――アールミラー、そちらの方に喰らう者(イーター)の気配がある。何が起きてる?」


 刀也は通信に出てすぐに尋ねる。

 すると若干のノイズを纏わせながら、サラが答える。


 『刀也さんも喰らう者(イーター)の気配が分かるんですか!? ってそれは置いといて……実は――』




 一通りの状況を聞き終え、通話を終了する。


 (なるほど、ジンが敵の気配を察知したのか。生存者とアールミラーの存在に気付かせないために、わざと力を放出して注意を引くつもりだな)


 刀也は直ちに調査を打ち切り、建物の外を目指して走る。

 状況的に見ても接近してくる気配の正体は、先程戦闘になった3人組だろう。


 (しかしよく気配を察知出来たものだ……俺のカンよりも遥かに鋭い)

 

 刀也の気配察知の能力は、異能力とは違ってただのカンである。

 幼少期……3年前、数字持ち(ランカー)になるよりも()()()()()()喰らう者(イーター)と戦い続けてきた。

 幼少期に戦っていたからこそ磨かれた、経験則によるカンなのか、或いは先天的なものなのかは本人にも判断できないが……。


 とにかく、そんな鋭いカンを持つ刀也でさえ、現在接近してくる敵の気配は察知出来ない。

 恐らくはジンの放つ強い気配のせいで、感じられずにいるのだろう。


 ふとエリア3の港で、サラが背後から襲われた時のことを思い出す。

 あの時、刀也は完全に不意を突かれて不覚を取ったが、今にして考えてみれば現在の状況とよく似ている。

 目の前に強い喰らう者(イーター)の気配があると、刀也のカンでは他の個体の出す気配に気付くことが出来ない。

 港での戦いにおいては、ジンの気配がそれに当てはまるだろう。


 (所詮はカンということか……ジンの気配察知は特別……む?)


 ここで一つの矛盾点に気付く。


 (ジンの気配察知は俺のカンより優れている……それは確かだ。ならば何故あの時の喰らう者(イーター)ジンは気付かなかった? 単純にべノムの力を手に入れたばかりで、慣れていなかったのか?)


 あの時ジンが動き出したのは、サラの背後に喰らう者(イーター)が姿を見せた時だ。

 自分とジンはほぼ同時にその存在に気が付いた。殺す気で対峙していた刀也にとってそれは確信に近い。


 ――殺す気で対峙していた……。


 (喰らう者(イーター)の気配……。


 近くに強い気配がある場合、他の気配には気付けないの俺のカン……。


 仮にあの時のジンがまだ気配察知の能力に慣れておらず、俺のカンと同程度の精度しか持っていなかったとしたら……



 あの時ジンに向けられていたのは、人間(おれ)の『殺気』や『敵意』……)



 今すぐ立ち止まって深く考察したい所だったが、無意味だと考えを停止する。


 「いや、仮定が多すぎてまるで成り立たんな。今は敵を倒すことだけに集中しよう」


 自らの考察を続けたい感情を諦めさせるように呟き、刀也は屋外へひたすら走った。






 「――刀也、お前も嬢ちゃんから聞いたか」


 刀也が兵舎から出ると、拳二が既にバルバロイを装備して佇んでいた。


 「ああ……生存者を発見できた以上、何としても保護する。その為には敵をここで叩く必要がある……追撃出来ないようになるまでな」


 刀也はそう言って刀を抜き放つ。

 一点の曇りも無い刀身に、拳二は思わず少しだけ視線を奪われる。


 「へっ……なーにが追撃出来ないようになるまでだ? 違げぇだろ、敵は逃がさずこの場で斬り捨てる……お前の『神薙(かんなぎ)』はそう言ってるぜ?」


 拳二は笑いながらそう言った。

 刀也もその言葉に笑顔を覗かせながら応えた。


 「フッ……ところで拳二、この場で立ち止まっているということは……」


 「嬢ちゃんが監視カメラを幾つか起動させててな。どうやら敵さん、正面から堂々入って来るつもりらしい」


 刀也が辺りを見渡すと、確かにここは正面ゲート前の地点であり、サラの監視情報が正しければ侵入してきた敵と真正面から対峙するポジションでもあった。


 基地の照明は屋外の広場に設置してあるものも含め、破損しているもの以外全てが点灯している。

 現在は完全な夜間。戦闘に支障が出ないようサラが遠隔操作で点灯させたのだろう。


 正面ゲートに人影が見えてきた。


 「来やがったな……正面からとは上等だぜ……!」


 「こちらはジンがまだ来ていない……合流するまでは数的不利に――」


 ここで待ち構えていた2人に予想外のことが起こる。

 ゆっくり歩いてきた人影は2人。

 アリゲイターと呼ばれていた大男と、ロゼと名乗った女だけしかいない。


 「……おいおいお前ら、あのレイザーとかいうクソチビはどこ行った。まさかくたばっちまったか?」


 拳二は既に臨戦態勢に入っており、燃え上がるような闘気を滾らせながら尋ねた。

 しかしその闘気には全く動じることなく、半笑いの表情でロゼが答えた。


 「フフ……名前を憶えて貰えて嬉しいわ。レイザーなんだけど、どうやら赤目の彼に夢中になっちゃったみたい」


 ――その刹那、刀也と拳二の背後に位置している司令部の建物から、凄まじい音と共に爆炎が上がった。



 「――さぁ、こちらも宴を始めましょうか?」

 

神薙刀也 18歳 男

ハウンド所属:数字持ち ランク11


使用武装:刀

ネイスミス製の最旧式Vウェポン

刀の名を『神薙』という。


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