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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-4 Deadly Rose
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Quiet base-2

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 (この静寂……喰らう者(イーター)は潜んでいなさそうだけど……)


 ジンとサラが足を踏み入れたのは、この基地内では最も大きい司令部の建物であった。

 内部はかなり荒らされており、室内でも戦闘があったことが窺える。

 

 散らばった様々な資材や設備と、至る所に残る破壊の爪痕。

 そして人の形を留めていない肉片。

 それらが昼光色の照明に照らされ、2人の目に生々しく、鮮明に焼き付いていく。


 「死体はそう古くない……それに、やはり電気は生きているようですね……奥に進みましょう、ジン君」


 サラは拳銃を手に警戒しながら進んでいく。

 この異様とも言える惨状に、ジンは驚愕を隠せない。


 エリア3で味わった地獄……その光景は、この世界では特に珍しくも無い、ありふれたものだと実感する。

 喰らう者(イーター)と戦うということは、この地獄に抗い続けるということなのだと。


 2人は慎重に通路を進み、階段を上がっていく。

 するとサラがとある部屋の前で立ち止まる。


 閉ざされた扉の上には『情報室』と書かれていた。

 

 「電気が生きているのなら、監視映像や各種記録を閲覧出来るかもしれません……調べてみましょう」


 そう言ってサラは扉に手をかけるが、施錠されており開かない。


 「あ、あれ……仕方ありません、後回しですね」


 「いや……サラさん、ここは俺に任せて下さい」


 そう言ってジンは、左手に持った散弾銃を扉に向ける。


 「――って、ちょっと待ってジン君!! 安全の確保されていないこの状況でそれは危険です! 射撃音が響き過ぎます!」


 サラは慌ててジンを制止した。

 ジンもすぐに銃を下げ、自らの思慮の浅さに反省の色を示した。


 「す、すいません、確かにそれもそうですね……なら……」


 ジンは思いついたように、今度はブレードを取り出す。

 扉の鍵の方式は分からないが、扉自体の作りとしては蝶番で開閉するもののようだ。ならば――


 「はっ!!」


 ジンはブレードを素早く振るい、蝶番を切断した。

 その瞬間、こちら側に倒れる扉を腕で抑えながら、音を極力立てぬようにゆっくりと床に下ろす。


 「こちら側に倒れてくれたお陰で、大きな音を出さずに済みました。ついてますね」


 「あはは……それもちょっと強引だけど、助かりました、ジン君」


 情報室の中は驚くほどに綺麗だった。

 照明は消されており、設置してあるPC端末も起動されていない。


 サラは照明を点灯させ、部屋の中を見渡す。


 「どうやらここは手つかずのようですね……とりあえずPCを立ち上げて」


 ここでサラの歩みをジンが遮る。

 ジンは既に臨戦態勢。ブレードを構え、右瞳は真紅に染まっていた。


 「微かに呼吸の音が聞こえます……何かがいる……!」


 「……!!」


 サラも拳銃を構え、射撃体勢に移行する。

 部屋の中には何の姿も視認できず、沈黙の中緊張感だけがその場に満ちる……その時。


 「――もしかして、援軍……??」


 机の下側からひょっこりと姿を見せたのは、小柄な女性だった。

 思わず呆気にとられてしまった2人は、服装から彼女はバーテクス正規軍の兵士だということを理解する。


 「軍の生存者……!? 我々はハウンドの者です!」


 「本当に……? 良かった、ようやく――」


 サラがすぐに警戒を解いて自らの所属を明かした途端、女性は緊張の糸がプツリと切れたように座り込んだ。

 サラはすぐに女性に駆け寄り、詳しい話を聞くために様々な質問をする。

 女性を気遣いながらの優しい口調で、ゆっくりと聞き出している。


 (あの人から情報を得るのは、サラさんだけでも大丈夫そうだ。それよりも、この感覚は――)


 ジンはサラとは対照的に、微塵も警戒を解いていなかった。

 しかし女性を警戒している訳ではなく、その警戒は情報室の外側に向けられていた。


 (なんとなくだけど……確かに感じる。さっきまでは感じなかった、この違和感は喰らう者(イーター)の気配だ)


 「……ジン君? どうかしましたか?」


 サラはジンの様子がおかしい事に気付き、女性を腕で抱きながら尋ねる。


 「喰らう者(イーター)の気配がします。さっきまでは全く感じなかったことから、恐らくあの3人組が追ってたのかもしれません」


 「ええ!? 気配って……そんなの分かるの!?」


 「ええ……流石に個体の判別や数の特定は出来ませんけど、間違い無いと思います」


 ジンは割れた窓越しに建物の外側を警戒する。

 感覚的に接近してきていることは分かるが、正確な位置までは掴めない。

 詳細に感知をするには、もう少し慣れが必要だと考えながら、一度サラたちの方に視線を戻した。


 「……さ、3人組……まさか、まだ……」


 座り込みサラの腕に抱かれている女性が、震え上がりながら呟いた。

 彼女は正規軍の制服を纏っているものの、小柄な体格と異常な怯え方が相まってまるで少女のように見えた。


 「だ、大丈夫ですか……?」


 サラは女性を気遣って優しく声を掛ける。

 しかし、落ち着くのを待っている時間は無い。


 「……サラさん、刀也と拳二さんに連絡を入れておいて下さい。その女性は情報の為に何としても保護する必要があります。なら、敵はここで討滅または撃退するしかありません」


 「確かにそれしかありません……私たちは極力ここで身を潜めながら待機します。どうか幸運を……!」


 ジンは静かに頷いて、倒れた扉をバリケード代わりに入口に立てかけてから駆け出した。


 サラたちの方へ注意が行かないようにしなければ。

 ジンは自らの居場所を知らせるように、べノムの力を最大限に引き出す。


(俺が感知出来るってことは、お前らも感じ取れるはずだ……こっちに来い!!)


 もう片方の瞳も真紅に染め、身には赤黒い焔を纏う。


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