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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-4 Deadly Rose
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Encounter

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 「エリア5……ここに来るのは久し振りだな」


 目的地に着陸し、空輸艇から最初に降りた刀也が呟いた。

 ジンと拳二も刀也に続く。


 「ここが、エリア5……」


 ジンの目の前に広がるのは、殺風景ともいえる荒野のみ。

 赤茶色の砂や岩、そして大災厄以前に建てられ、既に廃墟と化した建造物。人間の手がほとんど入っていないことは明らかだった。


 「ここから更に5㎞ほど南下すると、目的地の基地があります。どうか気を付けて!」


 パイロットはそう言い残し、空輸艇を発進させこの場を離脱していった。

 

 「……本当なら今の説明、お前の仕事だぞ」


 拳二が後ろに振り向きながら言った。そこには顔色の悪いサラの姿があった。

 しかし真っ直ぐと歩いて来ているので、船酔いほど悪い状態ではないようだ。


 「すいません……移動しながら立て直しますので……とりあえず南方向4㎞ほどの地点に、大災厄以前の集落跡があります。そこで現地の数字持ち(ランカー)と合流し、情報を照らし合せてから奪還作戦を開始する、という手筈になっています」


 「じゃ、とっとと行くぞ。日が落ちる前には合流してぇからな」


 既に日の落ちかかった夕暮れ時。これ以上時間が経てば、じき夜になってしまう。

 視界の悪い状態で土地勘の無いエリア5を移動するのは得策ではない。

 こうして4人は、急ぎ足で荒野を進み始めたのであった。

















 「――いやー、それにしてもコイツ結構強かったなあ、確か数字持ち(ランカー)って言ったっけ?」


 小柄の年若い男が、くるくると何かを指の上で回しながら楽しそうな声で言った。

 回転を止め、少し離れた場所に立っている大男にそれを投げる。


 大男は投げられた物体を難なく片手でキャッチし、まじまじと見つめる。


 ――その物体は、人間の頭部であった。


 「ああ、我ら2人相手によく粘っていた。人間の戦士もなかなかどうしてやるものだ」


 「まぁ、楽しめたのはそいつ1人だけだったけどね~。他の連中は雑魚ばっかであくびが出ちゃったよ」


 2人の周囲にはおびただしい量の死体。

 そのいずれもが鋭利な刃物で切り裂かれたように、バラバラになって転がっていた。


 大男は死体だらけになっている周りを見渡しながら言った。


 「人間共の前線基地を落としたはいいが、こんな廃墟に潜んでいたとはな。手練れも混じっていたし、先手を打てて良かった」


 「またまた~、手練れっていっても1人だったし。こんな連中、不意を突かれたって負けないよ。ボクより強いのになーに弱気なこと言ってんのさ、『アリゲイター』」


 「ふん……」


 大男の口が大きく開く。裂けた、と言った方が正しいかもしれない。

 頬の方まで口は続いており、中には人間のものとは形状の異なる鋭利な牙が並んでいる。


 先程キャッチした人間の頭部に噛みつき、頭蓋骨をものともせずに噛み砕く。

 大量の血を撒き散らしながら頭部はグシャグシャに潰れ、大男にのみ込まれていく。


 「……相変わらず豪快な喰い方。その大食いっぷりじゃ『成体』になるのもすぐなんじゃない?」


 「いや、こう見えてまだ俺は人化してから日が浅い。もちろんお前ほどじゃあないがな。先になるのはロゼだろう」


 「呼んだかしら?」


 2人の会話に入って来たのは、『ロゼ』と呼ばれた妙齢の女性だった。


 「ああロゼ、そちらの食事はもういいのか?」


 大男の名は『アリゲイター』。

 彼は口元に付着した血を拭いながら尋ねた。


 「ええ、十分に。……しかし『レイザー』が数字持ち(ランカー)を倒せるとは思わなかったわ、人化したばかりとは思えないわね」


 そう言ってロゼは首の無い死体に目を付け、死体の近くに落ちていたドッグタグを拾い上げる。

 

 ――ランク9、ジン達の合流を待っていた、現地の数字持ち(ランカー)のものだった。


 「ロゼ、この後はどうするの? ボクとアリゲイターはまだ食べられるよ」


 小柄の若い男……名を『レイザー』。

 レイザーはいつの間にか拾っていた人間の腕を喰らっていた。


 「フフ……それが、ちょっと面白いものを見つけたのよね」


 ロゼはそう言って微笑みながら、数枚の書類を取り出した。


 「どうやらここに隠れてた連中、仲間とここで合流してから私たちを叩く予定だったみたい。合流してくるのは3人だけみたいだけど、全員が数字持ち(ランカー)みたいね」


 「ホント!? てことは……」


 「待っていれば獲物はあちらからやって来る、という訳か。俺達はつくづく運が良いらしい」


 情報を聞き、レイザーとアリゲイターは顔を見合わせ喜んだ。

 そんな2人のやり取りは、ロゼの目にはまるで兄弟のように映った。


 「あなたたち、性格は真逆なのに妙に気が合ってるわね。やっぱり食べ足りなかったのかしら?」


 「あー、別に大したことじゃないよ。ただボクが素早く仕留め過ぎたせいで、生きてるのが残ってなかったんだ」


 「うむ。レイザーの異能力は強力だが、捕食には向いていない」


 「なるほど、要するに()()()()()()()()()()わけね」


 ロゼは2人に対し、呆れたように両手をヒラヒラさせながら言った。

 すると2人は嬉しそうな声色で、同時に答えた。



 『もちろん! 人間を喰うなら()()()()()が一番美味い!』



 「フフ、それには私も同意見だけれど。さて、準備を始めましょうか? 宴の準備をね」


 

 バーテクス正規軍兵士のバラバラに切断された無数の死体と、1人の数字持ち(ランカー)の首無し死体。

 それらは新鮮でないという理由で、彼らに捕食すらされず、その場に放置されていた。

 日も落ちかけた夕暮れの空の下、大きな血溜まりが地面を赤く染め上げていたが、その赤色よりも更に紅い――


 真紅の瞳たちだけが、その場で蠢いていた。

 

レイザー「ところでアリゲイター、人の頭って美味いの?」


アリゲイター「んー……かなり硬いが、脳が最高に美味い」

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