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Scramble-2

更新しました!良かったら覗いていって下さい!



 「……これは……怖い……」


 ジンは冷や汗をかきながら、窓の外を眺めていた。

 地上は遥か下方に見えており、空輸艇は雲の上を進んでいる。


 「まあ慣れるまでは怖いかもなぁ、この高さは」


 拳二が呑気に雑誌を読みながら言った。

 刀也も慣れているのだろう、腕を組みながら目を閉じている。どうやら寝ているようだ。


 「そ、そうですかね? ところでサラさんは……」


 「大丈……夫……です……うう……」


 サラは真っ青な顔で口元を押さえている……。

 落ち着くまでは話しかけないでおこう、とジンは決意した。


 「乗り物酔いとは代理人(エージェント)として今後が心配だが……ところでジン、壊しちまった俺が言うのもなんだが、お前武器はどうすんだ?」


 拳二が話題を変えた。

 確かに拳二の言う通り、今のジンには武器が無い。


 「そうですね、とりあえず焔で工夫しながら戦うしか……」


 ジンが答えたその時、操縦席から放送でパイロットが話しかけてきた。


 『代表のマクス氏から武器を支給するよう指示されております。そちらにあるコンテナ内の物資はハウンドの皆さんで自由に使用して下さい』


 「コンテナ、これか……ってこれは!?」


 ジンがコンテナを開くと、そこには大量の銃器と弾薬、昨日の拳二との戦いで渡されたものと同じタイプのブレードが数本入っていた。


 「おいおい、すげえなこれは! 流石はマクスさん、手際がいいぜ」


 ジンはコンテナの中からとある弾丸を見つけ、手に取った。


 (これは……緋色合金製の散弾だ。これがあるってことは、もしかして)


 コンテナ内の銃器をかき分け、底の方に黒いトランクを見つける。


 「お……なんだそりゃ?」


 「おそらく緋色合金製の散弾銃(ショットガン)です。緋色合金製の弾丸は同じ緋色合金製の銃器で使用しないと、強度不足で簡単に破損してしまいますから……」


 トランクを開くと、そこにはジンが見たことの無い古めかしいデザインの銃が入っていた。

 ジンは銃を取り出し、じっくりと観察していく。


 「随分変わった形の銃ですね、形状的にも見るのは初めてですが……確かに緋色合金で造られています」


 「ジン……そんな見たこと無い銃を使えんのか?」


 「恐らくは……仕組みが単純ですから。レバーアクション式、12ゲージ。装弾数は5発……1発装填してしまえば最大6発は込められると思います。……しかし何故散弾銃にこの方式を使ったんだろう? ポンプアクション式で作った方が絶対に……ブツブツ」


 ジンがなにやらブツブツと言っている。

 拳二は銃器に関してほとんど知識を持たず、ジンの言っていることはほぼ分からなかった。


 (全然言ってる意味が分からねえ……そういやコイツ、エリア3出身だっけ……ん?)


 拳二は銃に注視する。

 かすれて消えかかっていたが、なにやら文字が刻印してあるようだ。


 「おいジン、その文字なんて書いてある?」


 「文字……? これは……」


 銃身に刻印してある文字は『Model(モデル)1887改』。

 そしてその下には『made by Naismith(ネイスミス)』と書かれているようだ。


 「作ったのはネイスミスって書いてあります。これって確か――」


 刀也の使用する、美しい外見の刀という武器。

 そして拳二の使用する『バルバロイ』という名の格闘武器。

 その両方にネイスミスの名が刻んであったことをジンは思い出す。


 拳二がネイスミスの名を聞いた途端、肩を震わせながら静かに笑い出した。


 「ハハハ……なるほどな」


 「?? どういうことです?」


 ジンは拳二に怪訝な表情で尋ねる。

 拳二は不意に、自らの得物であるバルバロイを荷物から取り出した。


 「まあお前もその身で味わってるとは思うが、このバルバロイ……いわゆる『V-ウェポン』はただの武器じゃない。作ってる奴はネイスミス、っていう1人の職人だ。

 ネイスミスはハウンド所属の武器職人でな、上位の数字持ち(ランカー)はほとんどがネイスミスの作ったV-ウェポンを愛用してるのさ」


 「へえ……ハウンドにはそんな人が」


 単純に会ってみたい、と思った。

 ジン自身が改良した旧型のブレードは刀也に綺麗に体ごと切断され、拳二と戦った際に借りた最新型のバーミリオン社製汎用ブレードは簡単に砕け散った。

 どちらもジンの知識の外側にある、とても強力な武器だ。

 元技術者であるジンが、その武器の作成者に興味を抱くのは必然のことだった。


 「べノムの力を振るうことが出来る……それがV-ウェポンの特性って訳ですよね」


 「ああ、詳しい原理は知らねえが、コイツは各個人に作られてる特注品でな。気合に合わせて色々な異能力を発動できるすげえ武器だ!」


 「気合って……」


 恐らくは使用者の意思によって自在に異能力を使えるのだろう。

 しかし肝心の原理がさっぱり分からない。

 使用者である拳二も分からないのに、拳二はバルバロイを使いこなしていた。


 (原理の分からない武器でも、使用者は自在に異能力が使える……バーミリオン社製の最新型すら比較にならない、信じられないほど強力な武器だ。ネイスミス、一体何者なんだ?)


 ジンの疑問は深まるばかり。

 再び散弾銃に目線を戻し、構造を注意深く観察していく。


 「うーん、構造的には特殊な所が無いな……これはどうやらV-ウェポンじゃないみたいだけど、刀也の刀にも特殊な構造は無いし......うーん」


 「んーその辺は俺には分かんねえけど……ま、武器があって何よりじゃねえか」


 「それもそうですね……よし」


 拳二の言葉にジンは納得し、散弾銃とブレードを自らの装備として選択した。

 散弾銃の携行は背中に背負う長銃用ホルダーを使用。

 剣の携行は腰に位置する専用のホルダー。

 そして緋色合金製の弾丸を携行ポーチに入れ、着々と装備を整える。


 (トランクの中に銃と一緒に入ってた単発(スラッグ)弾……一応これも持って行こう)



 窓から差し込む光は、依然として明るい。

 時刻にして丁度正午。到着までもう少しかかりそうだ。


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