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In fight!-3

更新しました!良かったら覗いていって下さい!



 凄まじい衝撃がシュミレートルームを震わせる。

 拳二の振り下ろした拳が、分厚い装甲板を大きくへこませていた。


 しかしその一撃で絶命していた筈のジンの姿は、消えていた。


 「――へえ、まだ力を隠してやがったか」


 拳二はその顔に笑みを浮かべながらゆっくりと振り返る。

 後方には先程手放したブレードを拾い上げるジンの姿。


 その両目の瞳は真紅に染まり、体には赤と黒の色彩入り乱れる『焔』を纏っていた。


 (さっきまでとはまるで違うな……一体何だってんだ)


 拳二の表情から笑みが消えた。

 今のジンから感じるのは正体不明の『力』、そしてさっきまでには無かった『殺気』だった。


 拳二が警戒しようと再び構えをとった瞬間。

 ジンがまるで瞬間移動の如き速度で間合いを詰め、斬り込んでくる。


 「――っとぉ!?」


 さっきの刺突同様、当たれば確実に即死する横薙ぎ一閃。

 間一髪で拳二はスウェーバックし、その斬撃を躱す。


 「……お前、手ェ抜いてたな?」


 「……」


 拳二の問いかけにジンは応じない。

 ただその真紅の瞳でこちらを睨み付けているのみ。


 「……まあいい。なら今度こそ見せてみな、お前の本気ってやつを!」


 拳二はそう吐き捨てるように言い、ジンへ突っ込んだ。


 さっきのジャブとは比べ物にならない強烈な連続攻撃(ラッシュ)

 一打一打が強い風切り音を鳴らす。

 その音でいかに強い打撃力が込められているのかが分かる。


 しかし、今のジンはその攻撃に動揺することは無かった。

 ただ冷静に拳の軌道を見切り、ガードと回避を織り交ぜながら淡々と対処していく。


 拳二の凄まじいラッシュを躱しながら、不意にジンがマクスに話しかける。


 「――マクスさん、本当に()()()で行ってもいいんですね?」


 目線はマクスの方に向けていない。

 あくまで拳二の攻撃に対処しながら尋ねた。


 その余裕ともとれる行動に、拳二の神経は逆撫でされていた。


 (コイツ……!!)


 その苛立ちが拳二の攻撃に現れるように、ラッシュの速度が上がっていく。


 ――が、ジンには当たらない。

 さっきは対処できていなかったフックやボディーも、ことごとく左手やブレードにガードされる。

 ジンはただマクスの返答を待つかのように、防戦に徹している。


 そんな戦況を見守っていたマクスは、笑顔を浮かべながら言った。


 「ああ、今度こそ見せてくれ。結果こちらの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その瞬間。

 ジンのブレードが再び振るわれた。


 ラッシュを一撃で止める横薙ぎ一閃。

 両手の手甲でガード行った拳二は、その体ごと大きく後方へ弾かれた。


 「……そういうことらしいので、死んでも文句は言わないで下さいね?」


 挑発ともとれる、ジンの言葉。

 しかし拳二は怒るのではなく、その言葉に笑顔で答えた。


 「へッ、言うじゃねぇか……クソガキ!!」


 2人は同時に前に飛び出す。

 速度もほぼ互角、ブレードとナックルが互いに連続攻撃をぶつけ合い、凄まじい衝撃音が響き続ける。















 「……やはりこうなったか」


 刀也は依然腕を組んだまま、2人の衝突を見守っていた。

 しかしその表情は先程までの険しさを残していない。


 「刀也、彼の力にはもう一段上があったってこと、知っていたのかい?」


 マクスが刀也の方に目線を向けずに、戦況を見ながら尋ねる。


 「ああ。アールミラーを助ける為に、あいつは俺の刀を一撃で弾き飛ばし、凄まじい速度で移動していた……あの赤黒い『焔』を纏いながらな」


 「そういえば……」


 刀也の言葉でサラはあの時のことを思い出す。

 自分が後ろから喰らう者(イーター)に襲われた時、かばってくれたのはジンだった。

 しかしその時の位置関係は、自分との距離は遠く、しかも間に刀也を挟んでいた。


 「そうか、その時も今の状態……あの焔を纏うことで、更に身体能力を高めていたんですか?」


 刀也は無言で頷いた。

 不意を突かれたとはいえ、刀也にとって得物を弾かれたというのは敗北したに等しい。

 それはジンの力の証明であると同時に、刀也にとっては敗北の苦い記憶でもあったのだ。


 「しかし刀也の刀を一撃で……? ははっ、それはすごいね。ランク5の拳二と互角に打ち合っているのも頷ける」


 マクスのその言葉に、サラはふと疑問を抱いた。


 「マクスさん、その言い方では刀也さんと拳二さんは互角って聞こえますけど……ランク11と5ではそんなに変わらないものなんですか?」


 そのサラの何気ない疑問に答えたのは、刀也だった。


 「無論ランクには差があるが……俺と拳二にはほとんど実力差は無い。ランクと言うのは単純に実力だけで設定されているものではないんだ」


 「ああ、刀也のランクは11だけど、実力だけで言ったら拳二とそう大差はないね。練習用の武器を使用した模擬戦も ほとんど互角だったはずだね」


 マクスの言葉に刀也がピクリと体を震わせた。


 「……20勝21敗だ。悔しくはあるが、まだあいつには及ばない」


 (刀也さん、本気で悔しそうだ……)


 とても不機嫌そうな顔をしながら言った。

 さっきメインルームで話していた時もお互いに悪態をついていたり、それでいて刀也が拳二の実力を高く評価していたのは、2人がライバルのような関係であるからだったのだろう、とサラは納得した。


 「2人のランク差は、今までの実績によるものだね。刀也はまだ数字持ち(ランカー)になったのは15歳の時で、期間的には3年……でも拳二が数字持ち(ランカー)になったのは18歳の時で、およそ7年経ってる。その4年の差にに積み上げて来た実績が、そのままランクの差になってるわけだ」


 「なるほど……それに拳二さんって25歳なんですね」


 マクスの説明にサラはランクの基準を理解しながら、拳二の年齢も同時に知った。


 「……だからこそ驚愕なんだ。拳二は本当に強い。特に接近戦だけで言えば……確実に数字持ち(ランカー)の中で2・3を争う実力があるだろう。そんな奴相手に、ジン君は互角で打ち合っている」


 「ああ……だが、決着は近い。()()()()()()()()()()()


 未来を予言するかのような刀也の言葉。

 その言葉にマクスは静かに頷き、互角に打ち合う2人を見つめている。


 サラにはその意味は分からなかったが、その予見には反感を抱いた。

 ついこの間までは普通の労働者(ワーカー)だった青年が、全てを失い、それでも懸命に立ち上がって今はランク5の実力者相手に必死に食い下がっているのだ。

 そんなジンの姿を見て、応援しないわけにはいかない。


 (頑張って下さい……ジン君!)



 













 激しいラッシュのぶつかり合いは勢いを留めることを知らず、互いに一歩も後退していない。

 2人の表情は対照的で、ジンは集中がビリビリと伝わって来る真剣な表情。

 対する拳二は笑顔を浮かべ、戦いそのものを楽しんでいるかのような感じだ。


 しかしその均衡は、刀也の言う通り……長く続くことは無かった。


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