In fight!-2
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瞬間的にジンの視界から拳二が消えた。
ジンは見失った拳二の姿を探そうとしたが、周囲を見渡す前に強烈なアッパーカットを受け、またもや後退する。
(この速さは……刀也より!?)
口の中が切れており、血の味がした。
ジンは反撃しようとブレードを振り回すが、やはり回避される。
しかも先程までとは違い、拳二は躱しながら距離を詰めてくる。
「そんなんで俺を斬れると思ってんのか! オラァ!!」
遂にゼロ距離まで間合いを詰められ、拳二の素早く繰り出されるパンチに晒される。
その拳速はほとんど見えず、ジンの顔・胴体に次々とヒットする。
その攻撃は連続攻撃を重きに置いた、言わば軽いジャブ。
一撃の重さはそこまで無いが、武器の硬度も相まって何度も耐えられない。
(これじゃサンドバッグだ……!! 一度距離を開けないと!)
ジンは勢い良く後方へ飛び退き、同時にブレードで斬り払いを繰り出す。
だが拳二はその動きに軽々と追随し、斬り払いも手甲によって簡単に防御される。
「逃がさねえよ。まだ俺の距離だ」
再びジャブがジンの顔を捉えようとしたその時。
「――!!」
ジンが繰り出したのは唐突な刺突。
その一撃は拳二の顔面を正確に狙っており、さっきまでとは違う、当たれば確実に即死する致命的な攻撃だった。
しかし間一髪で拳二は刺突を首の動きだけで躱し、間合いを詰めてくる。
「いいね、そうこなくちゃよ!!」
(躱された……なら、ここはもう!!)
ジンはブレードを手放し、両手を開けて防御の姿勢をとった。
このゼロ距離戦闘では、拳二の前進が阻止できない以上、ブレードは邪魔にしかならない。
ならば素手で勝負するしかない。そう判断したのだ。
拳二の高速ジャブにうまくガードを合わせていく。どうやら身体能力だけでなく、動体視力も大きく強化されているようだ。
(ここで殺される訳にはいかない。さっきのアッパーには不意を突かれたけど、集中すれば拳二さんのパンチは何とか見切れる……!)
「――いい目をしてんな。ならコイツはどうだ?」
拳二がニヤリ、と笑みを浮かべたその瞬間、ジンは顔の側面から打撃を受けた。
その打撃は今までの直線的な軌道ではなく、弧を描くような軌道で無防備だったジンの側頭部を捉えたのだ。
「――くっ!?」
予想外の方向から打撃を受け、ジンがよろける。
視界が歪み、ガードが崩れた。
「今のがフックだ。そしてコイツが――」
拳二はそう言いながら、大きく拳を振りかぶる。
(まずい……とにかくガードだ……!)
ふらつく足で何とか踏み止まりながら、ガードを急いで上げる。
今打撃を顔に貰えば確実に意識が飛ぶ。
しかしジンの必死のガードを嘲笑う様に拳二は呟いた。
「ハハッ……ガードを戻したのは大したもんだが、馬鹿正直すぎるな、それは」
その瞬間、今までとは比較にならない強烈な打撃がジンの腹部を直撃した。
「うっ……アアッ……!!」
ジンはあまりの衝撃に苦悶する。
咄嗟に頭部に集中したガードの裏を突かれた。
完全に構えは崩れ、呼吸は止まっていた。
「……終わりだな、まぁ最後の方はそこそこ良かったぜ」
拳二は目の前で苦悶するジンを見下しながら、どこかつまらなそうな声で言った。
叩き込んだ渾身のボディブロー。
その威力は凄まじく、『力』で耐久力を強化したジンを難なく戦闘不能に陥らせた。
――だが拳二の殺気は止まらない。
再び拳を大きく振りかぶる。
必殺の一撃を叩き付けるために。
「止めましょう刀也さん! これ以上の戦闘は不要です!!」
サラは思わず飛び出そうとする。
――が、刀也がそれを制した。
「な……なんで……」
てっきり刀也は一緒になって拳二を止めてくれるものだとサラは思っていた。
しかしその予想は裏切られた。
このままではジンが本当に殺されてしまう……!
「だめだ。手を出してはならん」
「何を……マクスさんも、何故彼を殺す必要があるんですか!? ジン君の実力がハウンドの目に適わなくても、殺す必要は」
「殺す必要はある。実力が無ければ実験体になってもらう方が彼は有用だ。それこそ死体解剖になっても構わない」
サラの声を遮る、マクスの冷たい声。
普段は陽気な研究者であるマクスだが、この冷酷な判断こそがマクスの本性……そう思えるほどに、その表情は揺るぎないものだった。
「……刀也さんもそう思ってるんですか? 彼に実力が無ければ、死んだ方が有用だって」
サラは刀也に、弱々しい声で問う。
「私たちは……彼の思いを聞いたはずです。拳二さんやマクスさんよりもたくさん、誰よりも」
刀也は目を閉じる。
しかしサラを制止する手は引かない。
「彼は私たちの仲間です……私は仲間を見捨てたくありません……」
サラはそう言って涙を流す。
――確かに全てを失くしたジンにとっては、刀也とサラ、2人だけが知り合いだ。
そんなジンを、俺達が支えずしてどうするのか。
仮にここで飛び込んでジンの殺害を阻み、逃がしたとしよう。
確実にハウンドはジンを殺すまで追撃するだろう。
それは俺達2人だけでは止められない。下手をすれば俺たちも反逆者扱いになってしまう。
既に状況は極致。ならば俺に取れる選択肢は……
ふとあのスラムで、ジンに刀を弾かれたことを思い出す。
――信じてみよう、『仲間』を。
あいつにはまだ、力が残っている……!!
「ジン!! 諦めるのは早い! 見せてみろ、お前の全力を!!」
刀也は叫んだ。
今まで言ったことの無いような、激励の言葉。
刀也の叫びが届いたのか、ジンの目が開く。
燃え上がるような真紅の瞳。
そしてその瞬間、ジンの体にはあの『焔』が纏わりついた。




