表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-9 Paradigm shift
120/135

Enemy-2

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 ――さながらそれは、爆発のようだった。

 

 指令室のある最上階の外壁が砕け、瓦礫と共に血塗れの人が落ちてくる。それを遠方からスコープ越しに見ていたマイルズは、思わず目を疑った。


 「拳二……!?」















 「がっは……くそったれが……ッッ!!」


 拳二は痛みに軋む身体を動かす。自由落下の中超人的な身体能力で体勢を立て直し、共に落下する瓦礫を蹴って着地を成功させる。


 ――だが、息をつく間は無い。

 すぐ後ろから強烈な殺気を感じ、拳二はすぐに振り返るが――


 「――っぐあっ!!」


 顔面に拳打の直撃を受ける。ガードが間に合わず、拳二は吹き飛ばされる。


 「へ……なんだ、こんなもんか? 結構期待してたんだけどな、ランク5」


 拳二を吹き飛ばしたこの男。拳二の兄と寸分違わぬ貌をしたこの男は――


 「くそっ……なんだお前は、何者(ナニモン)だ、お前は!!」


 「俺か? 俺の名は『拳王(けんおう)』。そう名乗っている。残念だが、お前の兄貴とは人違いだよ」


 「ハッ……拳の王とはな、随分な名を名乗ってるじゃねぇか」


 「そうでもないさ。ステゴロで俺に勝てる奴がいないってだけのことでよ。だから『王』を名乗るのは、当たり前のことだろう?」


 「……野郎……」


 拳二はただ拳王を睨み付けるのみ。

 かつて兄が言っていた言葉とほぼ同じだ。同じ顔、同じ言葉。違うのは名前と、その瞳の色のみ。外見だけでなく、その戦闘スタイルまで同じだった。自分が憧れ、追い付き追い越したいと願い続けたその拳、それは余計に拳二を惑わせる。


 (くそ……どうなってやがる!? 本当に兄貴じゃないのか……!?)


 しかしそんな拳二の迷いを断ち切るように、地を抉るほどの銃撃が突如拳王に降り注ぐ。


 「っとォ!?」


 拳王は驚いたような声を上げながらも、余裕のある体捌きで銃撃を躱して見せた。一発でも被弾しようものなら喰らう者(イーター)の肉体だろうと大きく削る、緋色合金の弾丸。アームズの放ったものだった。


 「なんだよ、物騒だなぁ。全身ガチガチの機械鎧か、苦手なタイプだ」


 「……」


 低空で滞空しているアームズと拳王が睨み合う。躱したとはいえあの破壊力、拳王の顔つきが変わる。


 拳二はそんな拳王の様子を目にし、慌ててアームズに駆け寄った。

 奴と戦うのは俺だ。奴とは俺が戦う……!


 「待てや機械野郎……奴とは、俺が……!」


 「――いや、それはだめだ」


 「――!? アンタ、いつの間に」


 拳二の背後から不意に声をかけたのは、ランク2・ファングだった。


 「君も分かってるだろう。奴は……()()()()。だが幸いこの場にはランク5、ランク3、そして僕も揃ってる。全員で掛かるよ」


 「な……!? いや、でも……」


 拳二は……頭では分かっていた。兄と瓜二つなこの男の正体も、それに固執する自分の意思も。今はそれどころではない。それどころではないのだ。今この瞬間にも、エリア1の住民たちは喰い物にされている。一刻でも早く、この混乱を終わらせて原因を突き止めなくてはならない。


 「……そう……だな。確かにアンタの言う通りだ」


 「……ああ、それでいい」


 心底悔しそうな拳二の表情を見ながら、ファングは僅かに微笑んだ。


 ――そうだ、それでいい。ランク5・竹内拳二は喧嘩早く、短絡的な男だが……馬鹿ではない。少なくとも今の状況を理解し、私怨を捨てて正しい選択をすることができるほどには。


 「ランク3、そういうことだ。いいかな?」


 「……異論は無い」


 話はまとまり、3人は並んで拳王と相対する。空気を焼くような殺気の衝突が場に満ちる。


 「――ハハ、3対1か? それでもいいぜ。来いよ、ハウンドォ!!」


 


 



 










 「ぐあああああああッッ!!」


 「――なんだ……!?」


 騒がしい病院の中までに響く叫び声。どうやら外からのようだが……。


 「な、なに……?」

 「奴らが来たのか……!?」

 「うわああああん! 怖いよおかあさん!」


 ジンは立ち上がって外へ出る。まだ身体は重かったが、動かずにはいられなかった。このべノムの感じ、覚えがある。


 すると外にいたのは、金属質の表皮に覆われた一体の喰らう者(イーター)だった。ここを守る兵士を刃状に変化させた腕で貫き、蹂躙するその姿。


 「……レイザー」


 「……アァ、ようやく見つけた。ここにいたか、探したよ」


 もはや言葉は要らない。ジンとレイザーは互いに睨み合い、そして駆け出した。




 ――ただ殺す。二人の頭の中には、それしかなかった。


 

久々の更新です。仕事が忙しく中々執筆が出来ませんが、この先も頑張ります。どうか応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ