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Beyond 【紅焔の反逆者】  作者: おとうふ
ACT-8 I need more……
103/135

Category『S』-4

更新しました!よろしければ覗いていって下さい!



 「グッ……!」


 角を砕き、そのまま跳弾して弾丸はビッグホーンの頭部へ。

 砕け散った破片で当たり方が見えなかったが、派手に血を散らした。


 (ここだ……!)

 (今だ……!)


 ジンと刀也、2人の思考がシンクロし、完全に同時に飛び出す。

 血が見えたことからも弾丸の命中は間違い無く、それも頭部に当たっている。普通だったら確実に殺せている。それでも2人は即座に追撃を決行した。考えるまでもない、相手は『普通の相手』ではないからだ。

 伝説の怪物・ビッグホーンがこんなに簡単に倒せてしまうはずがない。仮にもし倒せていたとしても、死体を刃を突き立てるだけのこと。特にデメリットにはならない行為だ。


 白と黒の刀がビッグホーンに迫る。

 狙いは落下直後の瞬間。体勢を崩したまま落下していくため、仮に生きていても着地の際には必ず隙を晒す。その瞬間を2方向から同時に攻める算段だ。


 

 ――2人の行動は正しかった。

 だが敵はその上を行った。



 「――いいだろう。()()()()()()



 ビッグホーンがそう呟いた瞬間、爆発的なべノムの放出に襲われた。


 「うわっ!?」

 「むっ……!?」


 その力の奔流にジンと刀也は抗うことができず、紙切れのように吹き飛んだ。















 焔を纏うことで大幅に身体能力を向上させる異能力。その力でジンは不足している経験や、戦闘技術を補い戦ってきた。

 しかしその異能力も、この相手を前にしては人間より少し動ける程度のものでしかない。


 それほどまでに圧倒的なオーラを持っていた。

 完全な変異体になったビッグホーンの姿は。
















 「くっ、今のは一体……刀也は……!?」


 かなりの距離を吹き飛ばされたジンは、すぐに身を起こし、辺りを見渡して刀也の姿を探す。

 しかしジンはあるものに視線を奪われる。纏っているはずの焔が、まるで消えてしまったかのような錯覚に陥る。


 「あ……あいつは……あいつ、は……!?」


 完全な変異体になったビッグホーンの姿だった。

 その身体は更にもう一回り大きくなり、もはや老人の名残など微塵たりともそこには無かった。

 人型を留めながらも、濃い茶色の体毛に包まれたその身体。肘から伸びる『角』は更に巨大化し、砕いたはずの片方も再生している。それに伴って剛腕剛脚も肥大化し、頭部には大きな一本角が生えていた。


 吹き飛ばされたが故、その姿は遠くにあった。それでもなお目を離せない。離した瞬間に殺される、そう直感していた。


 「――アァ……久しいな、この姿に戻るのは」


 「ぅ……ぁ……」


 ビッグホーンが言葉を発する。しかしジンには何を言っているのか聞き取れない。

 今感じているものは、恐怖、恐怖、恐怖。まともな思考など出来る状態ではなく、ジンの頭は完全に恐慌状態になっていた。


 しかしそんなジンの強張った肩をポン、と叩く者がいた。刀也だった。


 「――大丈夫だ、ジン」


 「! と、刀也……」


 刀也はあの姿のビッグホーンを前に、微笑んでいた。吹き飛ばされた際どこかぶつけたのだろうか、頭から血を流していた。


 「俺はお前のようにべノムをはっきり感じることはできんが……そんな俺でも分かる。奴は俺が戦ってきたどんな喰らう者(イーター)よりも強い。だがな……負けたくないんだ。師を超えるために、俺はコイツをこの手で倒したい」


 その目に恐怖は無い。迷いも無い。ただ倒すべき敵を見つめる、強い眼差しがあった。


 (そうか……そうだった。刀也にとって、あいつは……)


 そんな刀也の揺るぎなき闘志に、ジンも覚悟を決める。


 「……とはいえ、ここからの戦いは俺の意地だ。お前は逃げ――」


 「――逃げろ、なんて言うなよ? 俺だって戦うさ」


 ジンは刀也を強い眼差しで見返しながら言った。精一杯強がったつもりだったが、声が震えてしまう。


 「……なんだ、ビビッているように見えるが」


 「び、ビビッてないよ!! 敵の姿にちょっと驚いただけだ」


 「フ……そうか。

 ――まあいい、ではいこうか」


 「ああ……!!」


 


 


 










 地を抉り、突風を発生させるほどの踏み込み。

 標的の反応速度を超越する、圧倒的な速度の突進。


 現にまるで反応できなかった。本当に反応できなかった。


 「――!! ジン、離れろッ!!!」


 「え……」


 刀也に突き飛ばされるまで、気付く事すらできなかった。

 突如として自らに迫った、ビッグホーンの突進に。



 「――随分と悠長に話しているな。お前たちの中では、戦いはもう終わったのか?」



 完全な変異体に変貌を遂げた後、初めて繰り出される剛腕。この上なく単純で、この上なく強烈な一撃だった。

 

 「くっ……!!?」


 刀也は何とか神薙の刀身で角を受けるが、受け止めきれない。直撃コースの力の流れを必死に受け流した結果、その場に留まる代わりに、腕が音を立ててへし折れた。


 「仲間を庇ったか。つまらん幕引きだ、剣聖の後継よ」


 そして間髪入れずに繰り出されたのは、轟音を伴う蹴り。既に無防備となっていた刀也の身体に、深々と突き刺さった。


 「ぐっ……アァッ……!!!」


 刀也は確実に死んだ、と思わせるほどの勢いで吹き飛ばされた。


 勝敗は一瞬で決した。

 あれだけの覚悟で戦いに臨もうとしていたのにも関わらず、身体は完全に戦闘不能の重傷。ピクリとも動かないことから、おそらく意識はもう無い。



 ――俺を、庇ったせいだ。


 「刀也……! 俺のせいで……」


 ジンは急いで刀也の下に駆け寄ろうとするが、それは許されない。

 ビッグホーンが重量感のある足音を立てながら、目の前に立ち塞がった。


 「――!」


 「さあ、次はお前だ」


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