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職をいきなり失う

 黒塗りの車がこのぼろアパートから過ぎ去っていったころ、美代は安普請のアパートのドアを開けた瞬間、ひかれたままになっていた布団の中に倒れこんだ。本来なら、バイト先に休みの連絡をしなくてはいけないのに、完全に忘れていた。だけれど、いままでの不規則な生活が祟っていたせいで、そのまま美代は意識がなくなるぐらいに疲労し深い眠りについてしまった。


 水分と冷蔵庫の余り物だけで、三日間、布団からのあたりで、のたうち回った。やっぱりあの介護のオファーを受けておけばよかったかなと邪な考えまで出てきてしまう。

 そして、家の中でうだうだを生き延びていたら、案の上、あの悪魔店長から電話が鳴り響き、痛い肩を無理やりあげて返答する。そうしたら、耳が痛くなるほどのドヤ声で返事をされる。


 「おい!てめぇー、無断欠勤3日とは、贅沢だな!! どういうつもりだよ。 お前はクビだ!!」

と無情に叫んで一方的に切られた。


ーー私、貧血で倒れて車に轢かれそうになって大変だったんですけど!!!っと、抗議をするが、すでに電話は切られていた。


 仕方がないのでもうひとつの清掃会社にも連絡する。そちらの方はやっぱり怒られたが、人材が足りないおかげで今回は大目に見ると言われた。ちょっとホッとする。その代わり、昼間に清掃員に欠員が出たビルがあるので、そちらもお願いできないかと相談される。


 ううう、正直、あまり人目がつくところでは働きたくない。その事情も知っている社長さんだったので、


 「ああ、美代ちゃん。だいじょうぶ。ここね、清掃社員はみんなマスクしているし、あんまり見られないような現場だから・・人目は気になんないと思うよ……」

と言われる。


 でも、午前中はやっぱり大学に行かないといけないので、昼間のお仕事は基本的に無しということになった。そして、その後、大学の休講が重なり単発で昼間と夜間の清掃仕事がダブルで入る。


 でも、まさか……


 配属場所があの大原財閥の傘下の会社、メディファクトとは……


 でも、たしかにうちの社長さんが言った通り、ほとんど視線を感じない。なぜなら、ここは芸能プロダクションだ。この会社は芸能人のマネージメントだけではなく、劇団、そして、多くのミュージシャンの音楽配信販売にも力を入れていた。だから、ここに出入りする人は業界人。だれも、清掃員などに気をとられる人などいないのだ。


 まあ意外に穴場かも……と思って、先輩の清掃員のおばちゃんからレクチャーを受けながら、どんどん仕事をこなしていた。


 だが、そんな平和な日々も長くは続かなかった。


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