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初夢から生じるエロ的な好みについて、真田さんは深く考えた。

目の前にカジュアルでありながら、春の装いが似合う美代が立っていた。

とうとう春がやってきた。

あのアパートのリノベーションが始まる。


『美代様。あの正社員の件、もうそろそろ考えていただけないでしょうか? もうこちらには契約書が用意してありますので・・』


『あーーー、それですか? よく私も考えました』

『そうですか。では、こちらが契約書の内容になります』

約1cmくらいは軽くありそうなA4の紙のパンフレットを渡す。

美代はそれをちょっとぎょっとしながら見つめていた。


『あの、真田さん。』

『何でしょう・・・・』

『ありがたい、お話なんですか・・・この正社員のお話はお受けできません・・ごめんなさい・・』

『!!!!!み、美代さま・・ど、どうしてでしょうか? どんなご不満があるのでしょうか? 待遇が悪い点がありましたら、至急、改善案を出しますので、どうぞ再考していただけないでしょうか?』


『いえ、反対です。良すぎなんです。まだ私は大学生でもうすぐ2年生になりますが、その、会長を支えるほど社会経験もありませんし、その、知識も微々たるものです。ですから、もう少し自分に自信を持てる程度まで勉学や経験を積みたいんです』

『!!!!自信を持てるまで・・・』

美代の自信を持ているまでとは、どのぐらい先の話なのか頭の中で想像する。

1年、2年? それとも4、5年先なのか?

そんなに会長が持ちこたえられるのか?


『・・・はい』

『・・・私は、美代様の成長を止める資格は持っていません・・・あなたはまだ若いし、開かれる世界は大きい』

『真田さん・・・』


真田はがっくりと肩を落とした。美代の言っていることは正しい。この少女は、あの大原蓮司という怪物が見惚れてしまったため、今彼女の岐路が大きく変化しているのだ。今なら、その行き先をもとの彼女が本来進むべき道に戻すことができるかもしれない。


『美代様。参考までお聞きしたいのですが、もしかして留学とか考えていられますか?』

『え? 留学ですか? そんなお金がかかって恐ろしいものできるわけないじゃないですか?』

ちょっと彼女の意見を聞いてホッとする。

『では、どんなことに興味があるんですか?』

『せっかく大学でいろんなことを勉強しているんですけど、社会勉強も大事だと思いまして、歩美ちゃんに誘われて銀座のホステスをやることになりました』

『え??いまなんと?』

『ですから、銀座のホステスさんです。この忘れ物係をやったおかげでかなり女の罵倒やら一目が気にならなくなりました。だから、ここで社会経験が豊富なホステスさんに社交術を習いまして、ざくっとお金を稼いで、将来につなげたいと思います』


真田は想像してしまった。この可愛らしい子リスが、そのメガネをとって、かつらでもかぶり、化粧をさせればかなりいい線はいくに違いない。しかも、銀座のホステスだったら、新人の美代には短いスカートかまたは深いスリットが入ったエレガントでありながらも、エロい服を着させるだろう。しかも、この天然!!

俄然、モテるだろう。


『だ!だめです!!!そんなの!!許せません!!』

頭のなかの妄想を打ち消しながら叫んだ。


『エっ。真田さんに言われる筋合い、申し訳ないけどありません!!』

『だめです。だめです。そんなの!!蓮司様も私も許すことができません!!!』

『・・・・・じゃーー、特別に真田さんが来たら、特別なサービスしちゃう!!!』


えええええ!!!

サービス? 特別な?????


上目遣いのちょっとエロチックな視線の美代を見て、真田が驚愕する!!


ありえない。

おかしい!!!


美代がなぜこんなになってしまったのか、まったく真田はわからなかった。ホステス姿の色っぽい大人びた美代が、他の男たちに接客することを考えただけで、あの本来の悪魔、いや大原の鬼と言われる蓮司がどういう反応をするか考えただけで、この世の終わりを感じた。銀座が破壊されるだろう。恐ろしい。


ピピピピピピピピッ


自分の携帯のアラームが鳴った。


ガバッと思いっきり布団か起き上がる。


寝汗がじとーーーっと体にまとわりついていた。


なに? 夢か?


初夢???


携帯のカレンダーを確認する。

1月2日だ。


あああ、そうだ。昨日はあの蓮司様と飲み過ぎてあの醜態。

さっそく、美代の留学希望なのかどうか知りたくなってきた。まあ絶対にホステスなんて興味ないだろう。あの子リスちゃんのことだし・・・


でも、わからない!!!

恐ろしくなってきた真田はまだ手元で製作中の美代用の雇用契約書をまた読み直し始めた。


変態上司に付き合いしすぎて、自分もちょっと変態化している気がして、恐ろしくなった真田だった。



おまけ



1月2日に美代に早朝あった瞬間、真田は美代を真剣に見つめた。


「お、おはようございます。真田さん。体調はいかがですか?」

「み、美代様。おはようございます。あの美代様・・・突然で申し訳ありません。銀座のホステスに興味ありますか?」

「え? ホステス? 何言っているんですか? 真田さん。あれ? もしかして、真田さんって結構そういうの好きなタイプなんですか?」

「えっ。な、なにを!!」

「結構、真面目そうな人に限ってわからないですね・・・」

いつもの仕返しとばかりに、慄いている真田をからかい始めた美代。


「そ、そんな所、きっ、興味があるわけあるないじゃないですか?」

「あれーーーーっ。慌てているところがおかしいですね」


「み、美代様はどうなんですか? 先ほどの質問に答えていないじゃないですか?」


「ええええっ。そんな質問の意味自体よくわかりません。あ、やっぱり男の人ってああいうホステスさんが着ているちょっと長いドレスとか、深いスリットのドレスっていいんですか?」

「ス、スリットですか?」

真田は、昨日の初夢の長いドレスを着た美代が思い出してしまい赤面する。


「あ!真田さん!!顔が赤いですよ。ふふふっ。好きなんですね。あれ、もしかして真田さんは、着物系が好きなのかな?」

「ち、違いますよ」

「大丈夫ですよ。スリット系がやっぱり好きなんですね。そんなに隠さなくても。それぐらい聞いてもびっくりしませんよ。」

はーーーーっと深いため息をしながら、真田はどう説明しようか考えていた。質問自体を否定したかったのに、なぜか着物よりスリット好きにさせられてしまった。ドキ、でもあながち両方捨てがたい・・・


「あ、だったら、この次、さりげなく蓮司会長に言ってあげましょう? 銀座のホステスクラブに真田さんを一緒に連れて行くように・・・・ああいうところってすっごい敷居が高くて、お金がかかるって聞きました。」


??そ、そんなことしたら、蓮司にある意味殺される。美代がまだそこに居れば、話は違うが、そんなホステスのような格好をした美代を他人にみせる大人の余裕が蓮司にあるように思えなかった。蓮司にとって、あの世界は生き地獄。それを提案したなら、オレは殺される。


「美代様!!!後生ですから、それだけは蓮司会長には黙っていてください!!お願い申し上げます!!!」


あまりに真顔でお願いをしてくる真田を見て、美代はびっくりしている。


「・・うん。わかった。真田さんがそこまで言うなら言いません」

「ありがとうございます」


美代は、心のなかで『ええええ~~~どんだけホステス好きなの!!お金かかる趣向って聞いたし、これはちょっと会長に言わないといけないのかな??』と、同僚のホステス狂いを心配する美代でした。


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