矢崎は寿命が縮んだ
3人の怯える子羊(私にはそう見えた)が部屋を出た。
その静かな部屋の中で、蓮司が唸る。
「矢崎・・・ヤれ・・・」
「!!!会長。それは・・・」
「徹底的に潰せ・・・」
大の大人の矢崎秘書が緊張のため、顔を引きつらせた。
ーーえ!!これ、あのプロダクションを全部つぶすって話? 恐喝はまずいけど潰すだなんてって物騒だ。
美代は事の成り行きを案じた。
「あ、あの蓮司会長!!!」
「・・・・・・・なんだ。」
またあの緊張させる低い声が響く。
「あの有紗さんもきっと悪気はないかもしれないですよ。」
有紗のあの瞳の色の影が美代を奮い立てた。でも、自分も間違っていたらそのような目にあっていたのだ。見逃せない。
「・・・つ、土屋さん。いくらなんでもそれはないと思いますよ。あの有紗は結構業界でも有名な裏の顔があるんですよ。」
矢崎がつっこむ。
「えええ? そうなんですか? でも・・・」
「なんだ・・言ってみろ・・」
蓮司が美代を見つめた。その目が獲物を狙う鷹のようで怖い。でも、美代は負けなかった。
「もしかして、有紗さんは・・嫌でも仕方がなくやっているのかもしれません。本当に蓮司会長を騙そうと思ったら、あのハゲ男とちょび髭を連れてくるでしょうか?」
「「・・・・・・」」
二人の男は、美代の鋭い考察力に驚いた。
だが、矢崎はそれが問題ではないんだと思った。この裏将軍と呼ばれるぐらいの大原の鬼を騙し脅そうとしたことが問題なんだと思った。しかも、本当はあんまり証明とまで言えない、あんな下着まで会長に出させただなんて・・・矢崎は寿命が縮んだ気がした。
いままで、この会長を脅迫してそのまま無事でいたものなんていないんだと矢崎は、震えを隠し美代を見る。
この若い会長のあたらしい補佐は、きっとその事を知らないんだと思った。どうやってそれを知らせるべきか・・・会長の前だと、まずいだろう。
「わかった・・・調べさせよう・・」
えええ!!! 今度は矢崎がのけぞった。今度は恐ろしくて蓮司会長を直視することができない。
「か、会長・・・ということは・・・」
「調べろ。矢崎。SPの丸山に連絡して、裏のネットワークにアクセスさせてもいい。もっと証拠を出せ。」
「はい、かしこまりました・・・」
「そして、証拠次第でヤれ・・」
「御意。」
「・・・・・・ただ、あのプロダクションはロクでもない。潰せ。まあ、でも・・・・・商品には手をだすな。経営側だけだ。」
美代は、『ええええ!!!!』と思ったが、その恐ろしき大原の実力をその数週間後知ることになる。
もちろん、矢崎も『ええええ!!』と思う。こんな恩情処置を聞いたことがない。だが、いま聞いたことを聞き返す勇気もなかった。
つまり、商品、有紗にも手をだすなということだろう。
大原財閥なら人気大女優でも赤子の手をひねるよりも容易く潰せるのに、それをしないという事だ。
そんなにあの有紗が魅力的なのか? 会長にとって・・・・えっ。まて、それとも・・・・
矢崎は目の前にいるちょーラフな格好でブーたれている地味な女を見つめた。
え? ま、まさかっ・・・・・・!!!!!!
有紗を庇うのが、よくわからないと指摘を受けましたので少しだけ文章を足しました。詳細はまたのちに分かる予定です。