3桁なんて初めて見ました。
恐る恐る携帯の電源を入れる。
さっき鍋の為の野菜を切り始める前に、一回電源を切っていた。ダウンロード中サインが止まらないので、一回電源を切ってみようと思い立ったのだ。
すぐにonにする予定だった。
真田からいつも『連絡できるように、いつでも携帯の充電と電源だけは、死守してください!!』と言われていたのだ。こんなニュースに釘付けだったから電話はちらっとみたが、まさか電源をつけるのを忘れていただなんて!!!
なんか嫌な予感がする。
再起動された画面を凝視する。
やばい、いきなりものすごい数の着信数が見える。
3桁の不在着信なんて初めて見た。
いま電話しようと思ってたところ電話がすぐ鳴る。
もう誰かわかりきっている。
「はい、土屋です。すみませんでした。電源が・・・ええ? いまですか? 今日はまだ休みで明日からなはずですが・・・」
「はい、大変申し訳ありません。美代様。ちょっと緊急事態のため、ダメ元でお願いしています。」
「はあ、いまやっと鍋を味わっているところなんですよ。」
「鍋なら、こちらのシェフの松田にあとで用意させますから、なんとかお願いします。」
「・・いやいや、そう言うことでは無くてですね・・・」
「美代様、時間が!!!」
「もう、わかりました。いまそちらにいきます。」
と言った瞬間、テキストが入る。
『下でお待ちしています。伊勢崎』
はい、慣れました。この展開。
ダメっという言葉は通じないようです。
本館につくと、いつものようにビシっとスーツに身を固めたインテリ眼鏡男が待っていた。
「あああ、美代様。よかったです。来てくださって。電話が通じなかったときは、こちらから伺おうかと思っていました。」
いやいや、あんな伺うという言葉がなんか怖い。伊勢崎さん下に待たせておいて、完全に拉致するつもりだったよねっと思うが、それは胸の中で抑えておく。
「いえ、だいじょうぶです。本題おねがいします。ティッシュだったら、正直ぶっ殺したい気分ですが・・・」
「だ、だいじょぶです。ティッシュではありません・・・」
***
「え? もう一度、言ってください?」
なんだかこの仕事を受け持ってから、気分はいつも難聴だ。
「ですから、もう一度申し上げます。これを持って行ってください。」
「真田さん。これって、男性物の下着ですよね。」
「これだけ持っていけばいいんですか?」
「はい、これだけです。」
「か、会長様はその・・・着替えとかはオフィスに用意されていないんですか?」
「あります。用意はされているはずです。でも、これを持ってこいとのことです。」
!!!!試されている? 私?