忘れ物係 同僚の説得に失敗する
大変失礼しました。 一話(前話)が抜けていました。申し訳ないです。
大学で試験がもうすぐ始まる。休み前は試験がいろいろ重なり忙しい。真田さんに前から連絡してしばらくお休みをとることした。学業はおろそかにできない。まあ、1週間程度ですべて終わりそうだ。それが終われば、すぐに冬休みが始まるからまあ頑張るしかない。
うちの忘れものが多い暴君も私が学生であるということで、全く用事を言ってこなかった。有難いと同時になんだか心配になってきた。
でも、この試験のための休みをもらう前に習字の紙に大きく、忘れもの注意!っと書いたものを置いてきた。堂々と本宅の会長の執務室の机の上にだ。
そして、違う紙に黒文字で大きく印刷されたA4用紙も置いてきた。
そこには、
モンブランの万年筆
ポケットティッシュ
財布
書類
携帯電話
などと、いつも忘れるものを箇条書きにし、必ず確認してくださいっと書いてある。
はぁー、なんかできの悪い子供をもった気分だ。
心配だ。
真田さんに一言いう。
正直、この人が朝の出勤前に一言助言すれば、当主の忘れ物なんて一発で直るんじゃないかと思う。
「あの真田さん、一言いってもいいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか? 美代様。」
「蓮司当主の忘れ物の話なんですが、朝、真田さんが一言忘れ物をチェックをすれば忘れ物は無くなるではないでしょうか?」
「ああ、そうですね。わかります。」
ーーえ? いま、わかりますって言ったよね。
「じゃー、それお願いできますか?」
「無理です。」
「・・え、無理ってどういう意味ですか?」
「管轄外です。」
ーーまったく意味がわからないですけど・・・
「美代様・・あのどういう役割でここに雇われましたか?」
「あ、まあ、そう言われると、一応、忘れ物お届け係です。」
「そうですよね。」
「美代様は、もしこの館の専任の松田シェフがお休みをしている間、フルコースの料理を作れと言われたら、お作りしますか?」
「え、そんなこと出来るわけないじゃないですか。プロには歯がたちませんよ!」
「では、もし庭師の福嶋親子がいない間に、庭園の松を切ろうとしますか?」
「まさか、あの福嶋じい様に殺されますよ。俺の松切ったのだれだ!!!っと」
「では、お分かりかと??」
「え、まったくわかりません。理解不能です。」
ーー待て待て・・・自分が忘れ物お届け係だから、それに関わることは一切、真田は関わらないつもりということか? え、でもたかが忘れ物だぞ。一言で済むんだ!!
なんとなく意図がわかったけど、絶対に何かがおかしい。
「あのーーーー、真田さん。」
キリッと自分の目力を集中させる。届け!私の眼光を!
「たかが忘れ物ですよ!!」
と気合を入れて話す。
「いえ、されど忘れ物です。」
このインテリの顔は歪まない。じっと視線を返してくる。
「たかがお届け係です!!」
「されどお届け係です!!!」
はあああっと深いため息をつく。
だめだ。意思の疎通ができない。
忘れ物お届け係・・・同僚の説得に失敗する。




