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ツンデレではないと思う!

 え、あのとうとう婚約してしまいました。

 あの恥ずかしい蓮司へのキスは…気の迷いというか、お母さんが不機嫌な子供へのスキンシップだと自分に言い聞かせている。

 が、状況は一気に悪化、結婚へと確実に進んでいる感じがする。

 あの婚約詐欺事件、そういうと蓮司が激怒してくるけど、その後のキス事件を必ず思い出して、何故かデレーーとした顔で、

「大丈夫だ、美代。真田に教えてもらったが、そういうのツンデレって言うらしいぞ。もうお前は恥ずかしがり屋だなー!」

っと言ってくる。


 え、耳噛んだ不意打ちでリングをはめたのあんたじゃない! と言いたいけど、真田さんのこともあってあまり大きく言えなかった。


 しかも、あの特許とか実用新案権とか関係ないなんて……会長は何を考えているのだろうか……。


 あのそら豆リングは申し訳ないが凶器に近いので、大原の金庫に入れてもらうようにした。その方が安心だった。婚約の証拠として蓮司はシンプルな曲線が綺麗なプラチナのリングをくれた。これなら学校にもつけていけそうな感じだった。


「俺も同じのがしたいな……」

と言う蓮司に

「え、そんなことしたら、結婚指輪じゃないですか?」

と突っ込んだが、

「このまま区役所に届けるか?」

などと言われ私を飛び上がらせた。


 あの後、大原家宅で内輪だけの婚約パーティーが開かれた。真田さんやら伊勢崎さん、松田さん、しばらく何故か長期休暇をとってフランスに行っていた丸山女史、山川さんとその手下、七瀬くんも歩美ちゃんも呼ばれていた。正直、でっかいパーティーがあるんではないかと思って憂鬱だったけれど、「まあ、それは後でだな…」っとウィンクされました。


 歩美ちゃんにこの婚約騒動を伝えたら、

 「うーーん、やっぱりかなり前から王手だったから仕方がないよね…」と言われる。


 え、おかしくない? 婚約した友達に仕方がないよなって、どういう祝辞なんだろうか?


 七瀬君は、

 「美代、諦めたくないけど、俺、蓮司さんには完敗だよ…。あの人は本当にすげーーよ。俺が惚れてしまいそうだよ」

 なんて言っている。


 あーーもう、あてにならない、二人共。

 でも、二人共、私が誰と結婚しようが何しようが、一生友達でいるから!なんて臭いこと言って、ちょっと目頭が熱くなる。

 やばい、本当に。

 蓮司の笑みもこの状況も、全てだ。


 そのパーティーの間、何故か雪解けの春か?と思うくらいデレデレなった蓮司さんがビトーーーっとくっついていて、正直うざかったのだけれど、離れようとすると、物凄いフェロモン視線を出しながら、明日にでも電撃入籍しちゃうぞ!と脅かしてくるので仕方がなく、一緒に皆さんの祝福を受ける。


 「もう俺はお前のもんだからな……。わかったか」

と何故か所有物からの上から目線の宣言に慄いてしまう。しまいには、式はどこでやるだの、ドレスを作るメゾンはどこにするとか、最後にはウエディングプランナーまで用意させていて、このまえは発狂寸前、屋敷内だが逃走した。


 もちろん、戸棚の中に隠れようが、庭の奥に隠れようが、容赦無く大魔神様がやって来て、見つかってしまう。


 「美代、みーつけた。大丈夫だよ。幸せにするから、心配するなって…」

 「………」


 その後、ベッドへ直行されてしまう。

 だが、今まで通りというより、いちいち近づくたびに「大丈夫? 嫌じゃないか?」っと聞いてくることが多くなった。


 もちろん、

 「嫌!」

 と頑張って答えても、

 「うーーん、今のはyesだな。noとは言いがたい」

 と蓮司は言いながら、自分のマーキングに勤しまれてしまう。


 でも、あまりに逃げる美代にとうとう蓮司も少し折れて、結局、もう少し落ち着いてからがいいということになり、いまは小休止となっている。

 ど、どうしよう。正直、結婚ならこそーーっと結婚して、こそーーっと離婚できないもんなのかなと考えているのがバレそうだ。


 しかも真田さんが、

 「蓮司様クラスの結婚式となりますと、やはり一年以上のプランニングが必要ですので、早めが大事ですから……」

と何故かやる気マンマンだ。

 くっ悔しい。誰が貴方を救ったのでしょうか?

 一回、それについて言及してみたら、

 「ふふふ、美代様、私はあの時、解雇されていたとしても大丈夫なんですよ。奥の手があるんです」

と言って、懐から一枚に紙切れを出した。それはビニールで丁寧にカバーされていた。


「な、なんですか? その奥の手って?」

「これは蓮司様にも秘密ですよ。多分、覚えていないと思いますので……」


 紙切れを美代に見せる。


 子供の手書きで何か書いてある。


 サーちゃんへ


 なんでも言うことをきく券

 有効期限 えいきゅう

 おおはら れんじ


 な、なんですか? これは!


「もしかしてこれって子供の肩たたき券みたいなやつですか? サーちゃんってもしかして、真田さん?」

「ふふふ、そうですよ。でもここに永久って書いてあるでしょ?」


 最初はなんだよっとそんな子供の騙しと思っていたが、その永久の意味を考えて新たなるアイデアが浮かぶ。


「あ! 真田さん! それを私に譲ってくださいよ! なんでもしますから!」


 これで婚約解消になれるかもと思う


「美代様、前も言いましたが、本当にピンチの時はお助けしますから大丈夫ですよ」


 ニコニコ顔で例の紙切れを胸元に締まっている。


「これは蓮司様が幼少の時に私達と遊んでおりまして、ゲームに負けてですね、頂いたものなんですよ。可愛かったですよ。蓮司様は……」

「もう、結婚がピンチなんですよ。真田さんが味方なんだか敵なんだかわかんない」

「あー、花嫁となる方の典型なパターンですね。お任せください……」


 え、やっぱり助けてくれるの? ちょっと浮足だって真田さんを見つめる。

 

「あー、美代様でもメリッジブルーになるんですね。では今日はスパなどでも予約してスッキリしますか?」

などと言ってくる。


 だからねーー! 合意なき婚約なんだって! 憂鬱にでもなんでもなるだろう!と叫びたいけど、そんなことでも言ったら、きっと蓮司に言いつけられて、あのまた合意確認作業行われてしまうから、最近、口は割と堅いんです。私。


 でも、真田さんに、

 「もうよくわかりません。会長何考えているんですかね。特典全くないですよ…。私みたいのを伴侶にしたって」

と聞いてみた。

 「……特典ですか。美代様が思うような特典なら蓮司様はすでにみんな持っているんですよ。わかりますか?」

 「あ、そうか。そうだよね。みんな、あるよね…」


 彼は何が本当に欲しいのだろうか?

 彼に私があげられるものって?

 持っている物なんて全部あっちが持ってるし……。


 美代が初めて蓮司のことを一人の人間として考えた瞬間だった。

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